2019.11.8
今年のノーベル賞は化学賞で日本人が受賞
10月上旬はノーベル賞の受賞者が発表される時期です。前半は「自然科学系3賞」で、2019年は7日に生理学・医学賞、8日に物理学賞、9日に化学賞が発表されました。
7日の生理学・医学賞はアメリカのウィリアム・ケーリン博士、英国のピーター・ラトクリフ博士、アメリカのグレッグ・セメンザ博士の3名で、受賞テーマは低酸素状態における細胞の応答です。
8日の物理学賞はカナダのジャームズ・ピーブルス博士、スイスのミシェル・マイヨール博士、スイスのディディエ・ケロー博士の3名で、受賞テーマはピーブルス博士は宇宙の理論的な研究、マイヨール博士とケロー博士は太陽系の外にある「系外惑星」の研究です。
9日の化学賞はアメリカのジョン・グッドイナッフ博士、アメリカのスタンレー・ウィッテンハム博士、日本の吉野彰博士の3名で、テーマは「リチウムイオン電池」の開発です。
日本人の受賞は2年連続で、自然科学系の日本人ノーベル賞受賞者は吉野彰氏で24人目になりました(受賞時アメリカ国籍の物理学賞の南部陽一郎氏、中村修二氏を含む)。
日本人の受賞は2年連続で、自然科学系の日本人ノーベル賞受賞者は吉野彰氏で24人目になりました(受賞時アメリカ国籍の物理学賞の南部陽一郎氏、中村修二氏を含む)。
現代は科学技術とビジネスが深く結びつく
2019年の物理学賞は宇宙の成り立ちや太陽系外惑星という、ビジネスに直接結びつきにくい分野で受賞しましたが、生理学・医学賞の研究は腎性貧血の治療剤に応用され、アメリカのファイブロジェンとアステラス製薬が共同開発した「エベレンゾ」(ロキサデュスタット)は2019年9月に日本でも医薬品として承認を受けました。化学賞の「リチウムイオン電池」はスマホ、タブレット端末、デジカメ、自動車などで幅広く利用されている充電可能な「二次電池」で、日常生活の中ですっかりおなじみです。
2018年の生理学・医学賞を受賞した本庶佑博士の研究は小野薬品工業のがん免疫療法治療薬「オプジーボ」につながりました。2014年に中村修二博士、赤崎勇博士、天野浩博士が物理学賞を受賞した「青色発光ダイオード」の誕生は、電器店の店頭から白熱電球を駆逐した「LED電球」の登場を促しました。2012年に山中伸弥博士が生理学・医学賞を受賞した「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」は、難病を克服する「再生医療の切り札」として熱い視線を浴び続けています。
ノーベル賞と言っても、一般の人の暮らしに縁遠いテーマばかりではありません。現代はライフサイエンスでもICT(情報通信技術)でも新素材・新建材でも、科学技術とビジネスが深く結びついている時代です。
文系出身者はもちろんのこと、理系出身者でも科学技術の領域は非常に広いので、たとえばコンピュータを専攻した人にとってライフサイエンスの先進技術など、自分の専攻以外の分野はわからないことも多いはずです。それでもビジネスパーソンは「難しくてわからない」と敬遠するだけでは済まされません。
多忙な中、学生のように科学技術をみっちりと勉強する時間はありませんが、「教養」の域にとどまっては最新動向についていけず、ビジネスにつながりません。では、どうすればいいのでしょうか?