2018.7.25
同僚から言われた言葉は「働き過ぎないで」
私が勤めていた日系企業ではどの部署にも日本人の駐在員が1人か2人派遣されていて3~4年で次の人と交代する仕組みになっていました。職場は工場付きのオフィスで、1日中人の出入りが多く家庭的で笑いが絶えませんでしたが、悪く言えば真剣さに欠ける所でした。私は入社当時、そんなのんびりムードがいやで、わき目もふらず仕事ばかりしていました。ところがその頃同僚からよく言われた言葉があります。それは「働き過ぎないで(Don’t work too hard)」という言葉でした。しかも戒めるような顔をして言われるので、なにか自分は悪いことでもしているような気持ちになったものです。
有給休暇を取ることは働く人の当然の権利
ではなぜオーストラリア人は真剣な顔をして「働き過ぎるな」と言うのでしょうか。
エクスペディア・ジャパンが世界の主要国を対象に行った2017年の休暇に関する調査では、有給休暇の消化率に置いて、ブラジル、フランス、スペインが30日をフルに使い切り1位、アジア勢では香港とシンガポールが14日で健闘。これに対し、日本は20日ある有給をわずか10日だけしか使わず「2年連続世界最下位」という結果になっています。
このグラフにはオーストラリアのデータがないのですが、エクスペディア・ジャパンに問い合わせたところ、有給20日の内、15日を消化しているとのことでした。消化率では75%ですが、年休を取り切れなかった場合はすべて繰り越しされるため、なくなることはありません。さらに、10年以上勤務すると長期勤務休暇が13週間取れます。オーストラリアでは、休みを取ることは働く人の当然の権利だと考えられているのです。
このグラフにはオーストラリアのデータがないのですが、エクスペディア・ジャパンに問い合わせたところ、有給20日の内、15日を消化しているとのことでした。消化率では75%ですが、年休を取り切れなかった場合はすべて繰り越しされるため、なくなることはありません。さらに、10年以上勤務すると長期勤務休暇が13週間取れます。オーストラリアでは、休みを取ることは働く人の当然の権利だと考えられているのです。
休暇に対する考え方の違い
これに対し、務めていた会社の日本人駐在員は10日どころか年休をまったく取らない人がほとんどでした。仕事に専念することを誇りに思っているのか、休みを取ることに罪悪感を感じているのか、それとも上部からの圧力があるのか、とにかく休むことがありませんでした。ですからそんな駐在員にとっては、年休をフルにとって人生をエンジョイしているオーストラリア人は「けしからぬ人達」であり、年休を取る段になるとこのことがいつも論争になりました。その時に現地の人が言ったのが「私たちには人生を楽しむことが一番大切で、そのためのお金を得るために働いているのだ」という内容でした。そして日本人のことを「あなたたちにとっては働くことが人生の目的で、そのために生きているように見える」とも言いました。
オーストラリア人の休暇の過ごし方① バカンス
では、オーストラリア人はどのように人生を楽しんでいるのでしょうか。まず一番人気のあるのがバカンスです。2~3週間まとめて取るのが一般的で、国内ならゴールドコーストなどの亜熱帯地方が人気です。海の近くのホテルやキャラバンに泊まり、のんびりとマリンスポーツなどを楽しみます。海外旅行も人気のある休暇の過ごし方です。移民の多いオーストラリアでは年休を利用して自分の故国に帰る人も大勢います。
オーストラリア人の休暇の過ごし方② 家のリフォーム
年休の過ごし方で次に多いのが家の修理やリフォームです。オーストラリア人にとって一番大切なのは自分の家族であり、その家族が住む家を直したりリフォームしたりすることは大事なアクティビティの一つになっているのです。家族を大切にするオーストラリア人は、仕事の後に同僚と飲みに行くことは、何かのイベントの時以外、ほとんどしません。まっすぐ家に帰り、子供の面倒をみたり、家の仕事をしたりします。子供のいない人はスポーツに参加したり趣味を楽しんだりします。
余った時間を使ってボランティア活動
と、これだけだと、オーストラリア人はなんて利己的な人達なんだろうと思うかもしれませんね。ところが、OECDが2015年に世界の各国を対象にボランティアの参加率を調査した結果では、過去12か月間にボランティアの活動をした人の割合は日本では26%なのに対し、オーストラリアでは40%と高くなっているのです。ちなみに一番高かったのがニュージーランドの45%、次がアメリカとカナダで44%、そしてその次がオーストラリアの順になっています。このデータを見る限り、オーストラリア人は決して利己主義者ではなく、時間を上手に使い、余った時間を使ってボランティア活動を行い社会に貢献していることがわかります。
まとめ
今日本では、長時間労働に対する対策として「働き方改革」が進行中ですね。世界一勤勉と言われる日本人は、その勤勉さのおかげでたくさんの素晴らしいものを生み出してきました。でも、その一方で挨拶好き、会議好き、報告好き、と形式的な事に時間を掛け過ぎているようにも見えます。そうしたものを最低限に抑え、休暇を取ることへの罪悪感をなくすことができれば、ワーク・ライフ・バランスを実現することもそれほど難しくはないのではないでしょうか。オーストラリア人は日本人の勤勉さから仕事の大切さを学ぶべきですが、同時にオーストラリア人の働き方は日本で見失っているものを教えてくれているように思います。