2020年4月17日 更新

「新型コロナ不況」が来ても、かつてのような就職氷河期は再来しない理由

新型コロナ不況で企業の採用が激減し、就職氷河期が再来するのでしょうか? 少子化で新卒者の人口は減る一方で、採用を絞ると後が怖いのです。また、就職氷河期と比べると企業内の人口構成が変化し、不況が来ても新卒採用を維持できる余裕も生まれています。

新型コロナ不況で就職氷河期の再来があるかどうか探るには、「就職氷河期は、なぜあんなに就職が厳しかったのか?」を再検証する必要もあります。
就職氷河期は1993年卒から2005年卒までの期間とされています。22歳で新卒とすると2015年国勢調査時点で32~44歳になります。各年齢別人口に当てはめると147万人(2005年卒)~200万人(1995年卒)で、2020年卒の121万人の1.2~1.7倍ありました。
彼らのすぐ先輩の「バブル期採用組(1988~1992年卒)」の人口は5年間で936万人で、企業内で一つのボリュームゾーンを形成していました。ボリュームゾーンはもう一つあり、それは「団塊の世代(1969~1971年卒)」です。各年200万人オーバーでわずか3年間で637万人という人のかたまり。就職氷河期には団塊の世代は44~58歳で、定年延長もあってみな現役のサラリーマンでした。
つまり、就職氷河期は企業内に「バブル期採用組」と「団塊の世代」という2つの「人間の山」ができていて、その両方の給料やボーナス、退職金準備の負担で企業は大変だったのです。そのため「新卒の採用を厳選して人件費負担を少しでも軽くしたい」というのが企業の本音でした。
時は流れて現在、団塊の世代は70~73歳でそのほとんどは定年退職して企業に残っていません。大きな山が消えました。バブル期採用組は49~54歳でまだ現役ですが、団塊の世代ほど山は高くなく、後に続くのは就職氷河期世代の「盆地」ですから、企業の人件費の負担は20~25年前と比べてかなり軽減されました。金銭の面でも今後、一定の採用数を維持できるようになっているのです。
企業内に上の世代の塊が2つもだぶついた就職氷河期と、人余りがかなり解消し少子化で新卒者の数が減る一方の現在を、同一に論じるのは無理があります。また、企業経営上、採用数が上下に変動して社員の年齢別構成に凸凹ができるのは好ましくありません。新型コロナ不況で多少の採用減はあっても氷河期並みまで落ち込むと考えにくい理由が、そこにあります。もちろん当事者である就活生はくれぐれも油断しないように……。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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