2020年12月8日 更新

〈前田裕二〉SHOWROOM起業から今に至るまで、自分にとってお金は熱中の対価でしかない

仮想ライブ空間の中で誰もが無料でライブ配信&視聴ができるサービス「SHOWROOM」を運営するSHOWROOM株式会社の代表・前田裕二さん。夢を追う人の努力が正当に報われるエンタメの仕組みを、人生をかけて世に問う生き様が話題を集めています。時代を切り拓く若手起業家にとって、「お金」とは?

前田さんの人生は起伏に彩られています。
8歳で最愛の母を亡くしてからギターの弾き語りで生活費を稼いだ小学生時代、転勤先のニューヨーク本社でも日本と同じくトップ営業マンとなった外資系投資銀行時代、DeNAファウンダー南場智子氏の元での事業立ち上げ時代、そして経営者として歩む現在……。

大切な人の死をきっかけに 信用経済的な価値観にシフト

STAGE編集部:前田さんは、人生においてお金について考える機会がかなり多かったのではないでしょうか? それぞれのステージでお金との向き合い方には、どんな変化がありましたか?

幼少期から社会人数年目までは「お金が欲しい」と強烈に渇望していました、それこそ資本経済的価値観で。駅前で弾き語りをして、道行く人たちからギターケースにお金を入れてもらっていた小学生の頃は、お金をもらうことこそが目的で、生き延びるための死活問題で。
新卒で入社した外資系投資銀行では給与額を上げるために昇進したい、昇進するためにはこの目標をクリアしなきゃと次々に山を登るような感覚が楽しく、実際給料は上がりましたが……それに伴って幸福度も同じだけ上がったかというと、そうではなかった。

STAGE編集部:たくさんお金を稼げるようになったのに、なぜでしょう?

給料が増えて何らかものを買うわけですが、その時に追加的に得られる満足感、つまり限界効用が減っていったという感覚です。そして25歳の時に、最初にギターをくれた親戚の兄が亡くなり命の有限を強く意識したことで「代替不可能な価値を自分は社会に残せているのか」と立ち止まったのです。僕自身がこれまでの「資本経済的、貨幣経済的な価値観」から、個人の信用に価値を見い出す「信用経済、価値経済的な価値観」にシフトした瞬間だったと思います

STAGE編集部:そこでキャリアを見つめ直し、順調だった外資系投資銀行を辞められた?

はい。代替不可能な価値を新しく0から作り出すために起業する決意をしました。
そこから一度、DeNAのファウンダーの南場(智子さん)に事業立ち上げの相談をしたことをきっかけに同社に入社し、「SHOWROOM」を立ち上げ。同社からスピンアウトして会社を作り今に至るまで、お金って僕にとっては本当に「熱中の対価」でしかなくて。熱狂して取り組んでいたら勝手にお金が増えていくみたいな感覚ですね。お金が「目的」から「手段」に変わったイメージです。


経営者だからこそ感じるお金のプレッシャー

STAGE編集部:前田さんは南場智子さんが“5年かけてDeNAに口説き落とした男”としても知られていますよね。ちなみに経営者となったことで、外資系投資銀行時代と比べると、お金に対する苦労は増えましたか?

会社のお金と、個人的なお金とでは当然ですが全然意味合いが違っていて。会社のお金って、とにかくROI(投資したコストに対する効果)を見るんですね。個人的に10万円のコートを買うときに10万円のROIとか計算しないじゃないですか。もし自分が100%株を持っている会社なら会社のお金も個人のお金のように感じることもあるのかもしれませんが、実際に「SHOWROOM」にはたくさんのステークホルダーがいる中で、皆さんに配当をより多く出すために、事業で儲かったお金は再投資して更に大きな事業を展開し社会的な影響力を広げていかなくてはならない。利益を最大化する方法は、利益を一定額、一定比率で新しい事業に投資することだと思っていますから。もし、投資事業に失敗したらステークホルダーへの配当が減ってしまいますから、経営者としてお金の使い道に対する説明責任が生まれるのは当然で、これは外資系投資銀行時代にはなかったプレッシャーですね。

STAGE編集部:前田さんが、いま“熱中”されている「SHOWROOM」のエンターテイメントの世界と、以前身を置かれていた金融の世界は、どんな違いがありますか? どちらが楽しいですか?

僕としては、両方本当に楽しいので本質的には選べないですが、今はエンタメが楽しいです。弾き語りもそうだし、大学時代は亡くなった親戚の兄たちと一緒にバンドを組んで音楽にどっぷり浸かっていたこともあり、エンタメには相当強い思い入れがあります。ただ、エンタメも金融も、全く違う世界に見えて僕の中では共通していることが一点あるんです。
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