2018.2.23
「お金が君を映す鏡だと伝えたね」
「お金がある時は、強気に勝負に出て、そしてお金がなくなると見る影もなく憔悴して、周りの人間に迷惑をかけ、大切な人間を裏切り……… 。どちらも僕です。弱い人間なんです」
「お金がある時は、強気に勝負に出て、そしてお金がなくなると見る影もなく憔悴して、周りの人間に迷惑をかけ、大切な人間を裏切り……… 。どちらも僕です。弱い人間なんです」
「人間は誰しも弱い所がある。しかし、お金がなくても笑って過ごせる人間もいる。周りの人を大切にできる人もいる。私が伝えたいのは、お金は人生を決める一要素に過ぎないということだ。ただひとつ、取り扱いに注意しなければ、お金は君の人生をめちゃめちゃにしてしまう」
「ご老人、あなたは一体、誰なんですか?もういい加減教えてくれてもいいでしょう」
「それじゃあ、最後に聞かせて欲しい。君は、さっき自分と別れることが妻や娘のためになる、と言った。それは本心かい?」
「それじゃあ、最後に聞かせて欲しい。君は、さっき自分と別れることが妻や娘のためになる、と言った。それは本心かい?」
……そんなわけあるかっ !
僕の声は、周辺に響き渡った。人影がないこの広場で、僕の声はあてどなく彷徨って、そして消えていった。
どうして、僕はあんなにバカだったんだろう。そう後悔しない日はない。
離婚届に判を押したのは、彼女たちに迷惑をかけたくなかったからだ。借金をした事実は消えない、愛子の治療のために貯めていたお金を、自分が自己破産するためになくしてしまうことだけは絶対に避けなければいけない。幸い、妻はまだ若いから、新しい夫を迎えることだってできるだろう。愛子にとっては新しい父親だ。
商売の何もかもが順調だったとき、僕は自分が素晴らしい存在に思えた。自分には才能があると思い込んでいた。周りの全員が愚かに見えた。でも、本当にバカだったのは、僕の方だ。
「あなたも僕の話を聞いて、本当にバカだと思っているでしょう」
「君が、お金に振り回されて、何もかもを失おうとしている様を見ているとバカに見えるね」
「何が言いたいんですか?」
「たかが、金だ」
「君が、お金に振り回されて、何もかもを失おうとしている様を見ているとバカに見えるね」
「何が言いたいんですか?」
「たかが、金だ」
「僕には借金がある。これは紛れも無い事実だ。これを返そうと思ったら、何年かかる?」
「君は何もわかってない」
「じゃあ、あなたは何がわかるっていうんですか? 僕の失敗談を聞いて、悦に入りたいだけじゃないですか? 趣味が悪い!ジョーカーと名乗って、何をしたいんだ! 僕のバカさ加減を笑いたいだけじゃないのか」
「君は何もわかってない」
「じゃあ、あなたは何がわかるっていうんですか? 僕の失敗談を聞いて、悦に入りたいだけじゃないですか? 趣味が悪い!ジョーカーと名乗って、何をしたいんだ! 僕のバカさ加減を笑いたいだけじゃないのか」
「君は別にバカじゃないよ。お金に振り回されすぎただけさ。それは誰もが逃れられない罠のようなものだ。ある程度のお金で満足するというのは難しいんだよ。お金は持てばもっと欲しくなる。君はお金の扱い方においてミスは沢山冒したが、実際、経営上のミスはひとつしかない。
“クリームおにぎりの人気が未来永劫続く”と考えた。それだけだ。
もしも、クリームおにぎりがそれまで通りの売り上げを続けていたとしたら、どうだろう?何もかもうまくいっていたんじゃないのかい?」
“クリームおにぎりの人気が未来永劫続く”と考えた。それだけだ。
もしも、クリームおにぎりがそれまで通りの売り上げを続けていたとしたら、どうだろう?何もかもうまくいっていたんじゃないのかい?」