2017年11月16日 更新

「お金持ちが本当に恐れるリスクはお金が増えないリスクなんだよ 」第6章[第12話]

小説『富者の遺言』──元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人がSTAGE(ステージ)読者に贈る、お金と人間の再生の物語。

2017.9.15
 僕は、なんと答えていいかわからなかったから、そのまま話を続けた。
「その頃、僕は、沢山の本を読んでいました。成功した実業家が書いたビジネス書や自己啓発書といわれる類いのものです。IT業界で成功した実業家の本から、屋台のラーメン屋から一代で成り上がったような人の本まで。でも、それは特に、ためにはなりませんでした。どの書籍も書いてあることは結局同じだったのです。“とにかく、早くやることだ”と」
「成功した実業家が書いてあることに間違いはない」
「はい、それともうひとつ、成功する秘訣として書かれていたことは、仕事は好きなことをやるべきだ、ということでした。でも、僕には、時間を忘れて没頭できるほど好きなことが何もありませんでした。だから、僕は就職してから中堅と言われるような年齢になるまで、独立して成功することは夢ではあるけれど、何もできずに日々に不満を抱えつつ過ごしていました。普通のサラリーマンと同じでした」
「好きなことをやれ、というのは、事業を始めると、生活がそれ一色になってしまうからだよ。とても、好きじゃなければやってられない。でも、君は好きなことをすでに仕事にしてただろう?」
「何がですか?」
「お金だよ。お金が好きだから、銀行に勤めていたんだろう?」
「……はは、たしかにそうかもしれませんね。さっきは話しませんでしたが、僕の父は普通のサラリーマンでしたが、僕が高校生の頃にリストラに遭いました。
 その後、再就職はできましたが、収入は減ったため、家計はとても苦しくなりました。僕の本当の希望は、都会の大学に入学して、ひとり暮らしをすることでしたが、でも結局、地元の国立大学に入ることにしました。家から二時間かけて、この街まで通っていましたよ。
 だから、お金には人よりも執着していたかもしれませんね。できることなら、人よりも多くお金を稼ぎたいと大学の頃から思っていました」
 老人はそこまで聞き終わると、僕に問いかけた。
「私の人生においても、お金は重要な意味を持っていた。私の人生の大半は、お金の性質を知るために費やされたといっても過言じゃない。
 さっき言いかけた話だが、物事にはふたつの面があるということを覚えておいて欲しい。それは、何事もだ。もちろん、お金も例外じゃない。裏と表。エースとジョーカー。私たちが見るのは常に一面だけだが、その裏面には、その逆の意味がある。

お金が持つ裏と表の意味を正確に読み解けたら、 君は必ず復活するだろう。

 君のお父さんは不幸にも、定職を失った。そのせいで、君はお金のことを真剣に考えるようになったんだ。お金のことを考えることは決して悪いことじゃない。
 お金持ちになる人間が考える本当のリスクってなんだと思う?」
「なんでしょう。お金を失ってしまうことですか?」
「いや、実はまったくその逆なんだよ。

お金持ちが恐れるのはお金が増えないリスクなんだよ」

 成功者が言うことはいつも同じだ。「とにかく、やれ」「好きなことを、やれ」、これはひとつの真実だ。しかし、物事の一面しか言っていない。一代で財をなしたお金持ちというのは、ある共通した思考を持っている。
 人生は有限だ。そして、人生における幸運は数えるほどしかない。限られたチャンスをモノにするには、沢山バットを振らなければいけない。ときには大きく空振りをすることがある。
 多くの人はこの空振りが怖くて何もしない。だが、成功する人間はたくさんバットを振らなければ、当てることは難しいということを本能的に知っている。
 バットを振ることが経験になり、やがてはホームランを打つような技巧を身につけ、幸運とともにホームランを飛ばす。それが共通の考え方だよ。
 たとえば、二五〇個のうちの一個が、一億円の当たりの福引きがあるとする。その福引きを引くためには、一回一〇〇万円を払わなければいけない。普通の人間はどう考える?

 当たる確率は二五〇分の一だから、そんな割の悪いことはやりたくない…。

 しかし、お金を得るためなら、こう考えるべきだ。
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泉正人 | ファイナンシャルアカデミー 泉正人 | ファイナンシャルアカデミー
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