たとえば第4のルールの「『一文50文字以内』にする」は、誰でも感覚でわかるでしょう。区切りもメリハリもなく、接続詞でつないでダラダラと続くのは、書き言葉でも話し言葉でもその印象は良くありません。
第5のルールの「『4つの抑揚』で強調する」は、「漢字ではなくカタカナのイメージでゆっくりと」話しながら、強調したい言葉は「声を大きく強くしながら身を乗り出して」「言葉をサンドイッチするように間を取って」「声の音程の高さを上げて」話せばいいということです。芝居じみていると思うかもしれませんが、昔から演説がうまい政治家はそうやって国民の心をつかんできました。独裁者のヒトラーも、ムッソリーニも、ケネディ大統領も、田中角栄元首相もそうでした。スピーチがうまくなりたければ、たとえヒトラーの演説でもお手本にしていいのです。
最後の第7のルールの「独り言から入る」は少々わかりにくいのですが、落語で言えば「まくら」、漫才で言えば「つかみ」にあたるスピーチの立ち上がりのひと言は、話す者が五感を駆使して吐き出す「独り言」がいいということです。聞く人の「この人はいったい何を言うのだろう?」という期待感が最大レベルまで上がっている時ですから、それに応えられるパンチのある言葉を繰り出せば、インパクトは大です。それに続いて第3のルールの「結論は『最初の15秒』で言う」を実践すれば、自分が本当に言いたいことを聞く人に強く印象づけることができます。
スピーチのうまい下手は天性の才能ではありません。誰でも、ちょっとした工夫と努力次第で聞く人の印象はがらりと変わり、話の中身の良い部分がいっそう引き立つようなスピーチができます。それはビジネスパーソンの「市場価値」を高め、「言葉の力」で人望を集め、組織を率いるリーダーへと導いてくれることでしょう。
人前で話す「恐怖」克服法 スピーチは「武技」のように会得できる

人を惹きつけるスピーチができる人は、案外少ないものです。フランスの弁護士で言葉のスペシャリストでもあるバートランド・ペリエ氏は、言葉を「武技」と同様に、手足のごとく駆使する技術を磨くべき、と語ります。