2019年12月14日 更新

企業と個人の新しい関係と「ギグエコノミー」

優秀な人材が応募してこないのは、求人広告で嘘をついているからかもしれません。個人が情報を得やすくなった今、広告の嘘はクチコミでバレてしまいます。会社員になることを望まず「ギグエコノミー」で働く人々も増加中。企業と個人の関係が変わりつつある現状をお伝えします。

2019.12.13

もう求人広告の嘘は通用しない

優秀な人材を採用しようと力を入れた求人広告。しかし、その広告が応募者を減らしているかもしれません。

ワンキャリアの最高戦略責任者・北野唯我氏によれば、近年の学生は広告の内容よりもクチコミを重視しているとのこと。求人広告に聞こえのいいことを書いても、クチコミで実態がバレてしまう時代になっているといいます。

さらに雇用の継続も難化し、トヨタ自動車でさえ「終身雇用を守っていくのは難しい」(豊田章男会長)状況。北野氏も「従業員の市場価値を高めてくれる会社のほうが優秀な人材から選ばれやすい」と指摘しました。

時代の変化に合わせた新規事業の立ち上げのため他業種から中途採用するなど、人材の流動化が進んでいることも無視できません。

新しい採用戦略はミスマッチ回避と適材適所の実現

リクルートキャリアは、従業員にとっては「働く喜び」の3Cが重要だとしています。Clear(持ち味の自覚・自分軸の自覚)、Choice(持ち味を活かせる仕事)、Communication(上司・同僚との密なコミュニケーションの期待)です。

働く喜びの3Cを得るには、ミスマッチの回避や適材適所の実現が要になります。大手人事クラウドのWorkdayは、ブロックチェーン技術を応用したWorkday Credentialsを提供。個人の身元・学歴・資格・職歴を証明する書類をデジタル化することで、応募者は応募先企業にアピールしたい証明書を提示し、企業は応募者の知識やスキルを簡単に確認できるようになっています。

人事にAI技術を導入して従業員のスキルや研修受講歴、性格や価値観などを把握し、データに基づいた適材適所の実現を目指す企業も増えてきました。

ギグエコノミーとは? 会社に依存しないポートフォリオ型キャリア

ただ、企業の社員として働くことを望まず「ギグエコノミー」で働く人々もいます。

ギグエコノミーとは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する就労形態。発祥は米国とされています。

代表例は、ライドシェアの「ウーバー」に登録するドライバー。映像制作に携わる人々をプロジェクト単位で集める「ストーリーハンター」に登録する「映像ギグ」もいます。カリフォルニア州ではギグワーカーを保護する法案が検討され、ニューヨーク市ではフリーランスの最低賃金を定める法律も施行されました。こうした法整備は、ギグエコノミーがひとつの就労形態として定着してきたことを示しています。

ギグワーカーのキャリアは「ポートフォリオ型キャリア」になる傾向があります。収入源を複数組み合わせた働き方で、たとえば、フルタイムやパートタイムで働きながらフリーランスで仕事をしたり、職種の異なる仕事をフリーランスで同時にこなしたりするものです。

ギグエコノミーやポートフォリオ型キャリアのメリットには、
・特定の企業に縛られず自分の好きな仕事に取り組みやすい
・日々の働き方の柔軟性と多様性が上がる
・自分のキャリアパスを自分でコントロールできる
・複数の収入源があることで失業のリスクを分散できる

などがあります。

日本にもギグエコノミーが成長中

日本でもギグエコノミーやポートフォリオ型キャリアが増えています。

たとえば、クラウドワークス。企業や個人が登録し、互いに匿名で受発注を行うシステムを提供しています(案件によっては実際の企業名や個人名で仕事をする場合も)。業務内容は、データ収集や書類作成から記事や動画、イラストの制作、アプリ開発、海外企業への連絡などさまざま。需要の大きいIT人材分野には「クラウドテック」という専用プラットフォームがあり、月30万円以上の報酬で開発、改修、制作案件などでの人材募集が多く見られます。

また、「縁つなぎ」を提供するSpreadyでは、「スプレッダー」(紹介者)から企業へ必要な人材を紹介するサービスを提供。創業者の1人である佐古雅亮氏は「もっと自由に組織と人が交わるべき」「“人と組織のあたらしいつながり”を促進することで、社会を前に進められる」と語っています。
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