2018.7.13
人生の第二幕。女優としての人生がスタート。
STAGE編集部:まず立ちはだかった壁とは?
草刈:専門的な話になりますけど、バレリーナの身体って声を出すための身体じゃないんです。腹筋もガチッと固まっていて、そこまで筋肉があると逆に声が響かない。
首も病院の先生に診てもらったら、「こんな首筋は見たことがありません。剣の達人の首みたいだ。」と言われてしまい…逆に自律神経を崩してしまうのではないかと心配されました。
そこで根本から見直して、声を出す身体にシフトしていく必要があったのですが、35年もかけて作りあげたものだからそうそう壊れないんですね。レッスン、トレーニング、メンテナンス、治療と、いろいろ試行錯誤をしながら、10年ぐらいかかってやっと変わってきました。だから今でも一番お金を使っているのはそういったメンテナンスや発声などのレッスン費だと思います。
STAGE編集部:それはまるで、自分の人生を賭ける投資家のよう
草刈:そうかもしれませんね。でも、自分としては「投資」というよりも「実験」に近い感覚なんです。というのも、実際にレッスンを受けてみないと何が得られるか分からないことも多くて。結果的に新しい発想が得られることもあるんですが、最初からそこを見込んでやっているわけではないんです。投資というのは、お金を増やすことを目的としたものなのだと思いますが、レッスンは具体的に自分を磨いていく時間ですからね。
稽古というのは発想を得る場でもあります。表現する人にとっては一番大事な場です。新たな人のレッスンを受けるような場合、その時間が有効になるのかどうかもわからないところがありますが、良いと思ったら何でもやってみることにしています。何が得られるかわからないから。自分の直感にお金をかけられるかどうかも、大事なことだと思いますね。でも、例えハズレがあっても、文句は言いません(笑)
STAGE編集部:35年間かけて作り上げたものを壊す。それだけでも勇気がいる事、しかしさらに試行錯誤を常に繰り返す。
草刈:試行錯誤の結果得られるものは、ある意味「到達」なんですね。どんなに小さな事でも到達すれば、じゃあ次は別の場所に到達したい。新たな場所を知った時点で「次へ!」という循環。その繰り返しです。
STAGE編集部:そんな草刈さんについて、映画『Shall Weダンス?』の監督でもあり夫の周防行正氏はどのように見ているのか。