2020年2月13日 更新

経済状況は悪くないのに、日本の消費者意識が楽観的にならない理由

消費者信頼感指数(日本は消費者態度指数)の数値は、日本は主要各国と比べて悲観的です。雇用や物価や企業業績への不安感は薄くても「可処分所得」の伸びがマイナスになった影響が大でした。「結果の数字」も大事ですが、「空気感」もおろそかにはできません。

可処分所得の伸びのマイナスが大きかった

総務省の「家計調査」では二人以上世帯の「可処分所得」を発表しています。その四半期(3カ月月)ごとの前年同期比の平均増減率をたどってみると、2018年7-9月は2.5%、10-12月は3.1%、2019年1-3月は2.6%で比較的安定して伸びていましたが、時代が「平成」から「令和」に変わり大型連休もあった2019年4-6月に6.8%と伸びた後、7-9月期は一転、0.5%のマイナスになりました。
サラリーマンなら給与、賞与から天引きされるような直接税(所得税、住民税など)や社会保険料(雇用保険料、健康保険料、介護保険料、厚生年金など)を「非消費支出」と言い、収入からそれを引いた「可処分所得」は、サラリーマンなら「手取り」に相当します。2019年7-9月期は、税金、社会保険料の負担の増加に収入の伸びが追いつかず、可処分所得(手取り)が減少してしまいました。原因には夏のボーナスの減額、「働き方改革」による残業代の減少が挙げられます。
消費者態度指数の悪化または横ばいが22ヵ月も続いた主な原因はこの「可処分所得の減少」でした。それに消費増税前の生活防衛意識の高まりや大型台風の上陸が相次いだことも加わって、消費者の心理は将来への不安にかられ明るくなれませんでした。「消費者態度指数はGDPの先行指標」と言われるだけに、景気悪化の前兆ではないか気になるところです。
消費者信頼感指数(消費者態度指数)のような人間の心理、気持ちを数値化するセンチメント指標については「人の心はコロッと変わるからあてにならない」などと過小評価する人がいますが、雇用や物価や小売業の売上や企業業績のような「結果の数字」だけではわからない「空気感」がつかめるという意味では、決しておろそかにはできません。
企業の経営でも「結果の数字」がどんなに良くても、社員の心の中で会社への〃信頼感〃が陰って不安な空気が流れていたら、決して好ましいとは言えません。人がやることは何事も、結果の数字だけで物を言わず、空気(心理)を読むことも必要なようです。

寺尾淳(Jun Terao)

本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。
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