2020年3月9日 更新

今、株式市場に参加することで得られるもの

2020年は1月の中東情勢から始まり2月からは想定以上の広がりをみせた新型肺炎の影響で株式市場は大きく変動していています。このような荒れ相場は高みの見物を決め込むべきだという意見は正しいと思いますが、一方で、今、相場に参加することで投資家として大切なものを学ぶことがもできるのではないかと思います。

2020.2.14
この記事は、2020年3月2日に加筆しました。

日経平均急落! 経済ニュースコメンテーターの動揺

1月下旬のある日、日経平均が大幅に下落しました。後場の最中に経済ニュースをみていると、いつも舌鋒鋭い株式コメンテーターが少し悩んだ雰囲気で番組に登場しました。実際は悩んでいたかは分かりませんが、相場がこれだけ動いていましたから少なくともそのように私には見えました。さて、番組が進みMCから今後の見通しと株価の下値について話を振られたこのコメンテーターは不思議なコメントをはじめました。
まとめると以下の通りです。
1つ目が、SARSのときの終息宣言と今回の事象を比較していました。2003年はSARS拡大から終息宣言まで約4ヶ月かかりました。だから今回の新型肺炎も4ヶ月を目処にすればいいのではないでしょうかとコメント。
2つ目は、日経平均の下値目処について。下値目処は3つあり、2019年11月の安値22,720円、2つ目が一目均衡表より22,560円、最後は200日移動平均線の22,100円。投資家は今後この3つを底値の目安に考えて粛々と買い進めると良いでしょう。
3つ目は、原油価格の動向。原油価格動向は景気の先行指標になります。現在、年初より下落トレンドが続いています。そのため今後原油価格の下落が止まることが大事です。動向を注視しつつ判断していきましょう。
このようなコメントでした。これを聞いて、そうなんだなぁと思う人もいるかもしれませんが、やはり私は聞き逃すことができません。一体、我々このアドバイスで何を判断し行動すればいいのでしょうか。何も行動に起こせないと思います。仮にこのアドバイスが過去の事例で時間軸を説明するのであれば、終息宣言の背景や、守られたサポートラインはどうだったのか、下げ幅はどの程度だったかなどの説明は最低限必要でしょう。また、原油価格の下落トレンドの話をするのであれば、何をきっかけに反転するのかなど説明が必要です。さらに、それに取って付けたような3つのサポートラインです。しかも、どこでサポートされるかは全くコメントをしていません。このように、いつも明快なコメンテーターですら方向感を見いだせていないと、いま拾える材料でブレブレの適当な分析をせざるを得なくなるということです。後日談ですが、その翌週に日経平均は短期筋の買い戻して大幅上昇しました。その時、そのコメンテーターは案の定、さらにブレた内容の話をしていました。

動揺してブレない力を身につける

さて、私たちも同じよういなっている可能性がとても高いのではないでしょうか。例えば、いつもテクニカル分析のみで語る人が、突然、「新型肺炎はGDPや企業業績に対してマイナスの影響が大きいからサポートラインなどは通用しない」とか、「1−3月期の企業業績には新型肺炎の影響が織り込まれていないから業績見通しはコンセンサスに対して下振れする」など急にファンダメンタルズで語りだしたりします。逆に、いつもはファンダメンタルズのみで分析している人が、「200日移動平均を割ると明確なサポートラインがないので底が見えない」など急にテクニカル分析に助けを求めたりします。このように、自分自身が動揺するとなにかにすがりたくなり、自分に都合の良い情報だけを拾い投資スタンスがブレ傾向が出てきます。
ところで、このように分析をミックスするような事自体が悪いわけではありません。戦略的にミックスした分析を行うことは投資の常套手段です。しかし問題なのは、急変した外部環境により分析手法が後付になることです。戦略を変更する場合は自らの意志で変更することが大切です。この違いがとても大切なのですが、経験豊富な投資家ですら相場が急変した場合は戦略がブレることがあります。その結果、狼狽売り、安易なナンピン買い、水準感だけで売り仕掛けなどに繋がります。このような「ブレる投資家」は、今回のような短期間で上下動を繰り返す消耗戦では必ず離脱します。ブレないことがとても大切です。
現在、ポジションを持っている投資家はノーポジションの投資家よりも色々な情報を必死で収集しているかと思います。そして、プロですらブレたコメントをしているのを見る機会が多いのではないかと思います。その際に、「プロでもブレる。今こそ冷静に我が振り直せ」と自分に言い聞かせて自分を振り返ることが大切だと思います。ここに気づくことができることが、今の難しい相場に参加しているからこその収穫といえます。ITバブル崩壊やリーマンショックを経験した投資はやはりリスク感度が高いと思います。ところで、意味持たない投資には必ず負けが付いてきます。現在のような暴落相場でブレた投資にも必ず負けが付いてくるでしょう。冷静に現状を分析し数字の根拠を持って意味のあるぶれていない投資を心がけましょう。

今こそリスク管理の大切さが本当に分かる瞬間

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渋谷 豊 渋谷 豊
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