今年に入りたった約2ヶ月でいくつもテーマが相場を大きく動かし、その度に投資家は何回も心境の変化を感じたのではないでしょうか。そして多くの投資家がこの消耗戦で傷を負った人のではないかと思います。しかし、このように短期間でトレンド変わるときだからこそ身に付くことがあります。それがリスク管理ではないかと思います。
投資本で勉強をしたことがある人はだれもが、「リスク管理が大切だ」「生き残る投資家はリスク管理がうまい」「トレーディングで成功するか否かは、いかに損失をコントローするかによって決まる」のような文を読んだことがあるでのはないかと思います。そう言われていても実際に相場で苦い経験をするまでは、その重要性は理解しつつも、どこか他人事のように感じてしまうものです。また、2013年から長年続く上昇トレンドに慣れ親しんだ投資家は、「損切りしたら結局損した」「ナンピンすればいつも良い結果に結びついた」という思っている人が多く、「リスク管理」は説教じみていると煙たがれがちです。
しかし、今回この2ヶ月間株式市場に参加していた人はとても貴重な経験ができたのではないでしょうか。たとえば、週を越えたポジションは相場が荒れているときはリスクが高いと感じたはずです。今年に入りNY市場は金曜日に大幅な下落をする確率が高くなっています。それは新型肺炎の中心地である週明けのアジア市場の影響を避けるためのポジション調整が原因です。思惑主導の相場では、猫の目のように攻守が入れ替わります。今回、週明けのポジションは大きく損益が出ることを実体験を通じて理解できたのではないかと思います。2つ目は、上げ下げの理由は後付に過ぎず、相場観にこだわりすぎる大きく負けるということ。今回、新型肺炎の拡大が実体経済に大きなマイナスの影響があることは明らかです。しかし、その影響を超える材料が事実でなくても、思惑だけで相場を反転させることがあるということを経験できたのではないかと思います。今回、新型肺炎のマイナス要因で大きく下げた相場を押し返したのは、経済の減速を受けて中国の財政出動・金融緩和、米国の追加金融緩和が行われるのではないかという、ただの「思惑」でした。
週超えのポジションのリスク、思惑で大きく動くことを経験した投資家は、今後、資産を守るためにはポジション管理とリスク管理が銘柄選びや相場見通しを当てることよりもパフォーマンスに大きな影響を与えることを実感できたのではないかと思います。今回、その経験を積めたことは、いずれ必ず訪れる大きな相場転換局面で必ずその経験が活かせ大きなリターンの源泉になるのではないかと思います。今回のような急落後の相場は、その後数カ月間に渡り激しい上下動を継続する傾向が高いため、この経験が活かされると思います。
個人投資家の武器「休むも相場」
個人投資家は、「休むも相場」という素晴らしい武器を持っています。一方で、あえて動きの激しい相場に参加することは、投資家のレベルが上がり将来のリターンへ結びつくこともあります。また、もし経験を積む目的であれば、「金融相場」の期待がある環境で行うほうがより下値のリスクは低いのではないかと思います。ただし、経験を重視するばかりに損失を抱えることは本末転倒です。あくまでも少額から慎重に取引を行い、過去の事例を引き合いに出しながら、相場の転換ポイントを抑えつつトライをすることを忘れないでください。
株式市場が波乱の幕開けでも見誤らないための3つ視点
2020年の株式相場は波乱の幕開けとなりました。日本の株式市場が1月6日からと遅いスタートであることから警戒する投資家も多かった中で、やはりかという感が強い年始となりました。それでも波乱相場では落ち着いて冷静に判断することが一番大事です。今日は相場を見誤らないための3つの視点を見ていきます。
渋谷 豊
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所代表
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所代表 代表シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで取締役を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かした、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/ ファイナンシャルアカデミー https://www.f-academy.jp/