2016.3.29
2016年3月14日のホワイトデーの朝、久しぶりに気になる新聞記事に出会いました。その記事は、ホワイトデーとは全く関係のない内容なのですが、記事の読み方次第で捉え方が違うだろうなぁということで気になりました。
その記事によると、大手の銀行が、日銀がマイナス金利政策を導入後、キャンペーン金利を設定して積極的に『外貨預金』(海外の通貨で預金すること)を獲得しているというものでした。具体的には、米ドル定期預金の金利が当初1ヶ月は年率10%(ただし最初の1ヶ月のみ)という大変インパクトがあるもの。この低金利時代で金利0.01%などに目が慣れた私たちは、つい目が止まってしまうのではないかと思います。また、円を外貨に両替する「為替手数料」が大幅に値下げされたため、外貨預金の残高も増えているそう。外貨預金の魅力にあふれた記事でした。
その記事によると、大手の銀行が、日銀がマイナス金利政策を導入後、キャンペーン金利を設定して積極的に『外貨預金』(海外の通貨で預金すること)を獲得しているというものでした。具体的には、米ドル定期預金の金利が当初1ヶ月は年率10%(ただし最初の1ヶ月のみ)という大変インパクトがあるもの。この低金利時代で金利0.01%などに目が慣れた私たちは、つい目が止まってしまうのではないかと思います。また、円を外貨に両替する「為替手数料」が大幅に値下げされたため、外貨預金の残高も増えているそう。外貨預金の魅力にあふれた記事でした。
さて、この記事をそのまま読むと外貨預金へ一直線となってしまいそうですが、読者の皆さんには、今回、「両面思考」という思考法でこの記事を読んでいただきたいと思います。ちなみに両面思考とは、「相手の立場に立って物事を考え判断すること」。ビジネスの成功者や資産を築いた多くの人が必ず持ち合わせた思考法のことで、物事の判断をする時に使われます。
では早速ですが、両面思考で最初に考えるべきことは、なんでしょうか。答えは、「相手の一番の目的は何か」を考えることです。今回、記事を読むと、銀行の一番の目的は、「円」を預金として預かることをどうにかして避けたいということが分かりました。その背景には、日銀がマイナス金利という異例の取り組みを行ったことにより、銀行は預金者から円を預かると収益がマイナスになるという構造になっていることがあります。今の日本経済を考えると、今後もこの状況は続きそうで、銀行としては、どうにかしたいだろうなぁということが分かります。
次に、「相手が目的を達成するための手段・戦略」を考える必要があります。今回、銀行は、円預金の預金が増えても困るのですが、一方で預金が流失していくのも困るという、少し矛盾した状況にあります。そこで、預金の流出を防止しながら、その預金を「外貨預金へ移す」ことで、この難局を乗り切る戦略を立てたということが見えてきました。また、その手段として、ただ単に外貨預金の魅力を伝えるだけでは預金者の心に響かないので、10%という、誰もが「おっ!」と思うキャンペーン金利で人の心をつかむ手段を選んだことが分かりました。
最後に、「相手が戦略や手段を実現するために、どのような仕組みを作っているか」まで知っておくと両面思考の完成です。今回、「おっ!」と人目をひく作戦は、銀行にとっては一見不利な条件に思えます。ただし、営利企業である以上、実際には不利なキャンペーンを展開するはずはありませんね。なぜかというと、今回は苦しい状況を乗り切るための作戦を立てた訳ですから、自ら首を絞めるわけがありません。だからこそ、相手はちゃんとした勝算があり、10%のキャンペーン金利を払っても大丈夫な仕組みがそこには存在すると考えるべきです。
では早速ですが、両面思考で最初に考えるべきことは、なんでしょうか。答えは、「相手の一番の目的は何か」を考えることです。今回、記事を読むと、銀行の一番の目的は、「円」を預金として預かることをどうにかして避けたいということが分かりました。その背景には、日銀がマイナス金利という異例の取り組みを行ったことにより、銀行は預金者から円を預かると収益がマイナスになるという構造になっていることがあります。今の日本経済を考えると、今後もこの状況は続きそうで、銀行としては、どうにかしたいだろうなぁということが分かります。
次に、「相手が目的を達成するための手段・戦略」を考える必要があります。今回、銀行は、円預金の預金が増えても困るのですが、一方で預金が流失していくのも困るという、少し矛盾した状況にあります。そこで、預金の流出を防止しながら、その預金を「外貨預金へ移す」ことで、この難局を乗り切る戦略を立てたということが見えてきました。また、その手段として、ただ単に外貨預金の魅力を伝えるだけでは預金者の心に響かないので、10%という、誰もが「おっ!」と思うキャンペーン金利で人の心をつかむ手段を選んだことが分かりました。
最後に、「相手が戦略や手段を実現するために、どのような仕組みを作っているか」まで知っておくと両面思考の完成です。今回、「おっ!」と人目をひく作戦は、銀行にとっては一見不利な条件に思えます。ただし、営利企業である以上、実際には不利なキャンペーンを展開するはずはありませんね。なぜかというと、今回は苦しい状況を乗り切るための作戦を立てた訳ですから、自ら首を絞めるわけがありません。だからこそ、相手はちゃんとした勝算があり、10%のキャンペーン金利を払っても大丈夫な仕組みがそこには存在すると考えるべきです。
では、どのように仕組みが存在するのか考えてみましょう。
一つ目。銀行は為替を両替する際に十分な為替手数料をもらうことで高い金利を払うリスクを相殺する仕組みを作っています。銀行は、キャンペーン金利で外貨預金を受け入れる時に、円を外貨に(また、いずれは外貨を円に戻します)することで、その都度手数料を手に入れます。これで、高い金利を払っても銀行としては大きく損をしない仕組みのベースを作り上げます。
二つ目に、キャンペーン金利の適用を1ヶ月のみの限定とすることで、高い金利の支払いリスクを排除しています。銀行は、2ヶ月以降の金利をグッと低く設定すれば、支払い金利を減らすことができます。また、銀行としては、2ヶ月以降の金利を市場金利より低い金利で設定することで、円預金では得られなかった利ざや(銀行が払う金利より受け取る金利が高いこと)が得られるなど、外貨預金は円預金よりも収益的にも好都合です。また、1ヶ月のキャンペーン金利ですぐに解約する人も少なく、外貨預金を継続する人が多いことも銀行は把握しています。
三つ目に、外貨預金の最大のリスクである為替の変動リスクは、銀行が背負わないようになっています。為替リスクは預金者が背負っています。ちなみに、米ドルと円は、最近はあまり変動していないように感じる人も多いかと思いますが、実は1年間で平均20円(約16%)ほど上下する変動率の高い通貨ペアです(過去10年間の平均)。銀行としては、この変動リスクを背負うことなく、預金流失も阻止でき一石二鳥です。
一つ目。銀行は為替を両替する際に十分な為替手数料をもらうことで高い金利を払うリスクを相殺する仕組みを作っています。銀行は、キャンペーン金利で外貨預金を受け入れる時に、円を外貨に(また、いずれは外貨を円に戻します)することで、その都度手数料を手に入れます。これで、高い金利を払っても銀行としては大きく損をしない仕組みのベースを作り上げます。
二つ目に、キャンペーン金利の適用を1ヶ月のみの限定とすることで、高い金利の支払いリスクを排除しています。銀行は、2ヶ月以降の金利をグッと低く設定すれば、支払い金利を減らすことができます。また、銀行としては、2ヶ月以降の金利を市場金利より低い金利で設定することで、円預金では得られなかった利ざや(銀行が払う金利より受け取る金利が高いこと)が得られるなど、外貨預金は円預金よりも収益的にも好都合です。また、1ヶ月のキャンペーン金利ですぐに解約する人も少なく、外貨預金を継続する人が多いことも銀行は把握しています。
三つ目に、外貨預金の最大のリスクである為替の変動リスクは、銀行が背負わないようになっています。為替リスクは預金者が背負っています。ちなみに、米ドルと円は、最近はあまり変動していないように感じる人も多いかと思いますが、実は1年間で平均20円(約16%)ほど上下する変動率の高い通貨ペアです(過去10年間の平均)。銀行としては、この変動リスクを背負うことなく、預金流失も阻止でき一石二鳥です。
これで今回のキャンペーンの背景が見えたかと思います。10%というキャンペーン金利は、「ドル高・円安」を見越した相場的なものではなく、「低金利で困っている預金者」に配慮したものでもないことも同時に理解できました。
さて、ここからが「両面思考」で一番大事なところです。それは、両面思考を持った賢明な人は、このように相手の立場で物事を理解した上で、そこに自分のニーズが合致するかどうかを踏まえて判断しているということです。つまり、自分の立場だけで判断しない。また、相手の言うままに鵜呑みしないこということが最も大切なのです。
両面思考は、投資に限らず、買い物、誘いなど物事の判断に活かすことができます。ぜひ、今後色々な局面でお役立ください。その時は、「甘さの裏には苦さがある」ということを忘れないように。
さて、ここからが「両面思考」で一番大事なところです。それは、両面思考を持った賢明な人は、このように相手の立場で物事を理解した上で、そこに自分のニーズが合致するかどうかを踏まえて判断しているということです。つまり、自分の立場だけで判断しない。また、相手の言うままに鵜呑みしないこということが最も大切なのです。
両面思考は、投資に限らず、買い物、誘いなど物事の判断に活かすことができます。ぜひ、今後色々な局面でお役立ください。その時は、「甘さの裏には苦さがある」ということを忘れないように。
渋谷 豊 ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表
シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで執行役員を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かし、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所 http://fagri.jp/
ファイナンシャルアカデミー http://www.f-academy.jp/
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