EDUCATION   ~ Opinion & Research ~

現金が使われなくなり、海外の通貨で給料を得る時代に(岸 泰裕)

2017.1.5

金融リテラシーで変わる社会(第2回)

現金を使う機会がいま減少しつつある。電車に乗るときに切符を購入することは減り、SuicaやICOCAといった電子マネーを使うのが既に一般的だ。残金が一定の金額以下となれば自動的に課金されるオートチャージ機能も付与できるため、駅内のキオスク、自動販売機や、駅外のコンビニでも利用している人も多いだろう。同様の電子マネーはセブンイレブン等で利用できるnanacoやイオングループなどで利用できるWAON等、様々な企業から発行されている。クレジットカードによる非現金購入の仕組みはできあがっていたが、これら電子マネーが利用できる店舗の増加により、現金を使用せずに購入できる場所はより増加している。

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従来これらの電子マネーはカード型となっており、多くの場合消費者は常に携帯している財布の中に入れていた。かつて「常に携帯するもの」であった財布の中に、現金に追加して電子マネーが入っていたが、近年では「常に携帯するもの」は携帯電話、スマホへと変化した。そのため、Android携帯には「おサイフケータイ」としてモバイルSuicaが導入され、iPhoneでも7より対応がなされた。Apple Watchでも時計端末に同機能が掲載された。もはや携帯電話やスマートウォッチさえ持っていれば電車に乗って通勤ができ、自動販売機やコンビニで飲食物も購入ができる。1日1度も現金を利用せずに十二分に生活ができる時代となってきているのだ。現在、現金を利用する機会は週末などでのスーパーでの買い物のみという20代、30代も多くなっているであろう。

決済時だけではない。現在Amazonがテスト営業を行っており来年にもオープンをするというレジ不要のスーパー「Amazon Go」はさらに衝撃的だ。入り口でスマホをゲートにタッチして入場し、欲しいものを手に取りそのまま店を出ていくだけで自動的に購入がなされる仕組みだ。人件費が削減でき、またレジで並ぶことも必要なくなる。当然に現金を利用して決済することはない。この仕組みが広まり、小売店の世界標準となれば更に現金を利用することはなくなってくる。

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現金を利用することが減ることで、私たちの生活や社会はどうなっていくのだろうか。「貨幣」の機能には「価値の尺度」「価値の保存」「交換手段」の3つがあると経済学上は言われている。従来、日本において買い物を行う際には、価値の尺度と交換手段として日本国内で最も普及していたのは日本円であったため、日本円で買い物がなされていた。米ドルや中国元での買い物も空港や一部の観光地などでは利用可能ではあったが、日本居住者が海外通貨で日常の買い物を行うことはまずなかった。しかし、非現金化が進むことで、その決済に利用する通貨(決済する口座の通貨)については問われることはなくなってきた。海外旅行等で海外へ渡航した際に、日本円が入っている口座に紐づくクレジットカードを利用して買い物をした経験がある人も多いであろう。

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非現金化がさらに進めば、日本人が日本円を保有する必要性がなくなってくる。給料をどの国の通貨、果ては仮想通貨で受け取ろうとも買い物は何ら不自由がなくなる世界となり始めている。近い将来、私たちの給与も米ドルや中国元、仮想通貨などから選択できる時代になるかもしれない。

岸 泰裕
金融工学MBA、大学非常勤講師

大学卒業後、Citiグループの日本における持株会社に勤務。在籍中に金融工学MBAを取得する。その後スタンダードチャータード銀行の東京支店に転職。現在は金融機関を退職し、明治大学、名古屋商科大学、龍谷大学や企業研修・セミナーなどで金融論等について各種講義を行っている。

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