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TALENT   ~ Special Interview ~

いっちょう、皆でやりきろう。~後編~(遠山正道)

2016.4.25

食べるスープの専門店『Soup Stock Tokyo』、卓越した見立てと世界観のあるセレクトリサイクルショップ『PASS THE BATON』、世界一キュートなネクタイ屋さん『giraffe』といった、誰も思いつかなかったけれど多くの人が「これを望んでいた!」という気持ちになる事業を展開する、 株式会社スマイルズ代表の遠山正道さん。

その類まれな感性で時代の流れを読み、それまでになかった価値を生みだすオリジナルのビジネスモデルは、人々に新鮮な驚きを与え、時間をかけながらも着実に受け入れられてきました。時代が欲している「価値」を創り出すビジネスは、どうすれば創り出せるのでしょうか。2016年2月3日に開催された、起業を志す人へ向けた講演の内容をダイジェストでお届けします。

■価値あるものに価値があり、価値ないものに価値がない

先日、『Soup Stock Tokyo』を分社化しました。新社長は「スープ事業だけが切り取られて、普通の「外食産業」になってしまうのではと心配されるかもしれない。本当にそうならないようにしようね。」と話していました(笑)。これからも、スープストックトーキョーは、私たちの企業理念である「世の中の体温を上げる」に向かっていきます。

1999_ヴィーナスフォート立ち上げ時立ち上げたばかりの頃は
自ら店舗にも立った

「20世紀は経済の時代、21世紀は文化の時代」だと思います。需要と供給のバランスを考えると、20世紀は需要が十分に多い、ビジネス的には平和な時代でした。椅子とりゲームに例えるならば、椅子はたっぷりあり選び放題で、ゲームにもなりません。しかし今は、需要がすっかり落ちたのに供給はたくさんある状況です。椅子取りゲームならば、非常に多いプレーヤーで少ない椅子を争うというゲームを、落ち着く間もなく頻繁に繰り返しているようなイメージでしょう。
しかし、本当に価値を提供できていたならば、椅子取りゲームに参加しないでもよいのです。

「価値あるものに価値があり、価値ないものに価値がない」は、当たりすぎる日本語です。しかし、実際はどうでしょう。20世紀に、椅子が大量にある中でゲームをやってきた我々が、その当時に作ったもので、未だに当時のルールや感覚で、今のゲームをやっているのではないでしょうか。それではやはり無理がありますよね。

スマイルズ青山のオフィス創業当時のスマイルズのオフィス。すべてはここから始まった

本当の価値というものを見るべきです。隣で牛丼が300円、コンビニでスープが100円で売られている中、『Soup Stock Tokyo』ではスープ一杯が630円もします。

安くしようとしたら、できることもあるでしょう。しかし、コストを下げて、価値は生まれるのでしょうか?価値も下がってしまっていないでしょうか?

ただ利益だけみて価値を下げてしまうことは、リスクでしかありません。価値を同等に、あるいは上げていかないと、気がついた時には、お客さまは居なくなるでしょう。価値という意識がないと、そうなってしまいます。

また、何が価値なのか、という価値観も様々あるでしょう。世の中にある一般的なリサイクルショップは、なるべく新品に近いものを「価値が高い」と評価するでしょう。しかし、『PASS THE BATON』は違います。3年前ではまだ新しすぎます。20年くらい経たないと、と。また、単純な年月ではなく、「いつ、どうやって使われたものなのか」が大事なのです。

■ビジネスの根っこは「やりたいこと」

後編・講演風景1

私の事業はいずれも、利益が安定するまで8年くらいかかっています。「経営は下手」と話す所以です(笑)一般的なビジネスならば、3年くらいで撤退となるのでしょうが、そこで「いやいやいや!だって、まだ、あの景色を見てないから!」となだめすかしてきました。

事業の目的が「儲かるから」という理由であれば、儲からないと、事業を続けることができません。しかし、ビジネスは、儲からないこと、うまくいかないこと、失敗することがないということはありません。そのような時、もともとやりたいことでないと踏ん張りが利かないでしょう。また、たとえ失敗したとしても、自分で決めたことであれば、腹は立たないものです。

山登りするなら、どうせ苦労するのだから、前人未到であるとかそこに行かないと見られない美しい景色がある、といった、登りがいのある山がいいですよね。みんなで登っていると、辛いこともあるでしょうし、挫ける人も出てくるでしょう。そういう時に、「頑張って向こうの景色を一緒に見ようよ!決めたじゃない」と言えることが大事です。

登りがいのある山を見つけて、行こうよ、という。いわばそれが、「やりたいこと」です。
美意識であったり、譲れないものであったり、それは個人的なものであったり、熱病のようだったり。そういう言葉が当てはまるのではないかと思います。

■誰にでも、いつだって、価値はありうる

前編・後編・講演風景2

だから、自分が、何かやりたくて、やるべきことが見つかりさえすれば、あとは「やればいい」のです。

先が見えない未来のことをやるのは、誰もが怖いものです。先が見えないと恐れずに、頭から突っ込まないとできません。みんなそんな怖いことはできないから、行動を起こした人には、周りの人がリスペクトしてくれ、応援してくれます。また、アンテナを立てれば今までスルーしていた情報が引っかかってくるようになります。みんなのサポートと相まって、「次」につながるものです。私の場合も、20年前に個展を行ったことが、今に続いています。

また、合理的な説明ができない方がよいです。なぜなら、合理的な説明ができるものは、合理的な説明で打ち返されるものだから。その人が足で稼いできた話とか、誰かへの恩返しなんだ、といった、他の人にはない個人的な話であることが大事です。

「儲かりそう」や「格好よさそう」からスタートしていたら、今はないと思います。「儲かりそう」でスタートしていたら、儲からなくなった時に続けられなかったでしょう。「格好よさそう」で始めていたら、誰かの二番煎じのようになって、今の『Soup Stock Tokyo』は生まれなかったでしょう。

「誰かが言った」、「何とからしい」ではない、「自分がやりたいこと」。自分が誰かと出会ってしまった、何かを何かと繋げたいと思った、など、「だから、自分(たち)でやらないと」という必然性。そして周りを巻き込んでいくために必要な社会的な意義。これを加えることによって、これまでなかったという「価値」が生まれます。そういう事業ならば「自分たちの手で作った」というプライドも生まれるんです。

最後に、5年前に雑誌『Pen』に掲載された、社員に向けて書いた手紙を読み上げます。

万年筆画像はイメージです


おつかれさまです。
皆さん、元気ですか?
私は元気ですよ。

さて、私は焦っています。
リーマンショック以降、不景気なうちに、
早く、何か、次を仕込まなくては、と。

われわれみたいな小さな会社は、
とにかく不景気な時こそがチャンスです。
コストは抑えられ、人は集まる。

Soup Stock Tokyoも社内ベンチャーもPASS THE BATONも、
不景気だったから仕込むことができました。
景気がよければ、本業を粛々とやっていればいいのだから。

売るのは大変だけれども、売るのは景気が良くたって、
いつだって大変です。
むしろ不景気のほうが、消費が丁寧になって、
ちゃんと耳を傾けてくれる。

世の中、困っていることがあって、
その問題解決ができれば、それが価値です。
今、世の中困っていることだらけ。
悩みが価値に転換するキラめく瞬間が沢山眠っています。

復興とかじゃなくても、自分の周辺のことや興味あることで良い。
意義があって、だってそれが実現したら自分も世の中も嬉しいじゃないですか!
っていうもの。

自分も皆も不安なとき、そこで一歩踏み出す勇気が、
それが価値っていうんだと思います。

未来のことは神さまにしか分からない。
だから、誰でも新しいことをやるのは不安です。
だから、やった人に情報も人も信頼も集まってくるんです。

何か、やりたくてやるべきことが見つかるといいですね。
見つかれさえすれば、後はやればいいのだから。

ちゃんと良いと思った行動は、いつでも大変だけど、
あとで神さまがオマケをつけてくれることを、私は知っていますよ。

あ、これって、人ごとじゃなくて、誰かがやらなきゃ始まらない。
早く、誰か、不景気なうちに。
早く、誰か、皆が不安なうちに。
早く、誰か、はらを決めておくれ。

いっちょう、皆でやりきろう。

          スマイルズ 遠山 正道

  皆さん、へ。

 

 

前編はこちら

お金とは、払うためにあるもの、と思いたいw(遠山正道)
株式会社スマイルズ代表
遠山正道さん

1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。
2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイブランド「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」を展開。
「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

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