2017年12月20日 更新

〈井上英明〉形あるものはなくなる、自分が身につけた“こと”だけが資産 〜成功より成長にこだわる、井上英明の飽くなき探究心

「花や緑に囲まれた心ゆたかな生活を」を基本理念として、花や緑に囲まれた心ゆたかなライフスタイルを提案するフラワーショップ「Aoyama Flower Market」を経営している井上英明さん。経営と人生の軸に「Elevation (エレベーション)=自己の成長」を掲げ、ストイックなまでにご自身の成長を追求する井上さんのこだわりのライフスタイルと人生への投資についてお話をお聞きしました。

2015.3.28

仕事の意味について考えた末に出会ったキーワード「Elevation」

神原
井上さんは、いたるところで「Elevation=自己の成長」ということをおっしゃっています。そしてもちろん実践なさっていると思うのですが、この考え方にいたった背景について、お話をおきかせいただけますか?

井上
僕はニューヨークの監査法人で働いた後帰国して会社を設立しました。
設立直後から、頭の中ではいつも仕事の意味について考えていましたが、なかなか答えは出てこない。仕事の意味を考えるとなると、人生のベクトルの向きについても、自分なりに整理しておかないといけないと思い、半年位籠って、安岡正篤さんや中村天風さんなど、いろんな本を読みました。
そんな中で、宇野千代さんが書いた「天風先生座談」という本がありました。そこにまさしく天風さんが、「何のために生きるのか」という投げかけをしていて、その答は、エレベーション、すなわち「人生の意味は、自己研鑽にある」ということが書かれていたんです。それでピン!ときました。人生の軸を、「自分をどれだけ高い境地にもって行けるのか」というところに置く、ということを見つけたのです。

神原
それが、「Elevation」との最初の出会いになるのですね。その井上さんの考え方をどのようにしてスタッフの方々に伝えているのですか?

井上
当社の新人研修とか3ヶ月研修とかマネージャー研修といったときには、「何のために生きているのか?」というところをしっかり押さえておく、当社はこう考えている、という話をしています。

仕事は砥石、会社は道場。どこまで自分を高められるか

神原
井上さんの事業の成長を支えているのはスタッフの方々だと思います。そのスタッフの方々への教育にもずいぶん熱心に取り組んでいらっしゃいます。どのようなお話をされるのですか?

井上
経営者仲間と行った伊勢神宮で、宿泊先の館長さんに「人生って何」ということについて話をしてもらいました。一人ひとり、ろうそくを渡されて、火を灯して「これが人生にとって何に相当するか、分かりますか? 生まれた瞬間です。あとは見れば分かるとおり、短くなるしかありません」と教わったのです。
今まで生きてきた人生、過去には戻れないというわけです。過去には戻れませんから、人生で一番価値があるのは、「今」ということになると僕は思っています。なぜなら、人生80年として今日が僕の人生で一番価値がある。僕の残りの人生で一番若いのは、「今」だからです。だから僕はよく、「モチベーション下がりませんね」といわれるけれども、下がろうとなんだろうと、ろうそくは短くなる。だから、モチベーション下がった人生はもったいないと思うのですね。
この話を聞いて以来、研修の最初に1本のロウソクに火を灯して、この話からはじめることもあります。

井上
僕は、仕事というのは自分を磨くための「砥石」、会社というのは学びのための「道場」であると思っています。道場で砥石を使って、プロセスのちょっとしたところをどれだけ楽しむか、それが「Elevation=自己の成長」につながると考えます。

神原
もちろん誰もが成長したいと思っていると思いますが、それができる人と、できない人がいます。その違いとなるのはどんなことだとお考えですか?

井上
プロセスの小さなところを一つひとつ見ていくと、小さな成長が一杯隠れています。そのプロセスを楽しむ、ということがとても重要だと思っています。やって、失敗して、何で失敗したのかな、これじゃだめだな、どうしたらいいかな・・・という、経験の連続からの学びが大事なのです。
だから僕はスタッフにも、「急ぐな!」と言っています。「小さなブーケを1個、1時間でも2時間でもかけていいから、そこでちょっとしたラインの使い方をマスターするとかの目標をもちなさい。そのような小さいプロセスの中に、成長が隠れているんだから」という話をしています。

神原
成功よりも、失敗して、そのプロセスを見直すことの方が、自分の成長につながるということなんですね。

井上
最近、考える人ばかりで「感じる人」が少ないと思います。「感じてから考える」という流れが、あるべき姿じゃないかな。
先日、新しいカフェを立ち上げました。そのとき、当社の幹部やデザインセンスのある、感じる力のあるメンバーを集めたのですが、図面の上で考えてしまっている。自分で現場に行って、実際に板を置いて座って、それで自分がどう感じるのか、そこに答えがあるはずなんです。彼らには「自分の感性を信じて、感じたことをやれ」と伝えました。

経営者としての“インプット”の時間にこだわる

神原
私から見ると井上さんは経営者の大先輩になります。いつも教えてあげる方の立場になることが多いのではないかと思いますが、井上さんご自身の学びの方法について教えてください。

井上
僕は毎年、9月の1ヶ月間を「雲隠れ月間」と呼んで会社に来ません。
この期間は、先ほど言った中村天風を読み直したり、ビジョナリー・カンパニーを読んだりしています。
読書も、「ここは、いいことが書いてある」「ここはまだ、出来ていない」「これを取り入れるには、何をどう変えて、どういった仕組みをつくっていけばいいんだ」といったことを考えながら1ページ読むのに1日かけたりすることもあります。
このような時間をまとめてとらないと経営はできないのではないかと、私は考えます。経営者が止まると、そこで会社は止まる訳ですから。
呼吸を、吐き放しにはできないのと一緒で、頭もインプットがあってアウトプットがある。インプットする時間と、アウトプットする時間が必要だと思っています。
もうひとつこだわっているのが、自分を末席に置く、ということです。
僕は花の業界だけでなく、高い境地にいる人から勉強させていただくために、いろいろな勉強会などに所属しています。すると、如何に自分がまだ未熟者か、ということがよく分かります。どんな勉強会でも、一生懸命勉強していて数年経つと、気がつくとそこで一番の古株になっていたりして、いつのまにかお山の大将になってしまう。だから、いつも自分が末席になるような先輩経営者の集まっている会合に参加するようにしています。
これが僕は凄く大事なことだと思っています。会費があったり、旅費がかかったりとお金はかかりますけど、それは、価値ある授業料、自分への投資だと思っています。

曲がった花を無理してまっすぐにしたらダメ

神原
井上さんには3人のお子さんがいらっしゃいます。最近では、ご長男は井上さんと一緒にトライアスロンにも挑戦しているそうですね。井上さんのお子さんへの接し方、教育の考え方について教えてください。

井上
曲がった花はそれが綺麗なのであって、それを無理にまっすぐにしたら美しくありません。人にも向き、不向きがあると思うので、無理して曲げたら良くない、と思っています。「ここに行きなさい!」というようにはめ込むのではなく、子供たちが、何に向いているのか、それを見たいな、と思っています。自由に色々な所に行かせて、色々なことをさせたら、その中で、目がきらきら、と輝くのは何か。それを見せてあげて、そちらに誘導してあげたいな、と思っています。
向いているフィールドにいれば、後は勝手に育っていく。そういった意味で、いろんな経験をさせてあげたい。いろんな所へ連れて行ってあげたい。どこから芽が出てくるか分からないですが、それが、僕が親としてやれる「投資」かな、と思っています。

身につけたものすべてが資産

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