米朝首脳会談の評価を語る前に投資家であればすべきこと

世紀の会談とされた米朝首脳会談が2018年6月12日に終了しました。マスコミ、テレビ、新聞は専門家のコメントを載せて「成功」、「失敗」、「アメリカの負け」、「金書記長の粘りがち」などと評価していますが、実際のところはどうなのでしょうか。私は、これからの実務者ベースの話し合いでその推移を見守らないとなんとも評価できないのではないかと思っています。それよりも投資家であればすべきことがあるように思います。

2018.6.25

5月24日以降を参考にすべき

米国のトランプ大統領は5月24日に6月12日にシンガポールで開催される予定だった米朝首脳会談を中止すると北朝鮮の金正恩委員長に通告しました。しかも、トランプ大統領は書簡をメディアに公開してその事実を世界に広めました。この中止は、駆け引きのためであったのかそれとも本気だったのかは、会談終了した現在でも未だ不明ですが、我々投資家が注目すべきところは別にあります。それは、5月24日以降のマーケットの反応をきちんと分析しそれを活かすことです。
マーケットの反応を一次情報で確認する
・米国10年債は買われリスクオフムード。3.05%近くから2.95%近くまで利回りが低下後、2.97%近辺まで戻す
・対ドルに対して1円以上も円高が進み108.95円
・24日のダウ平均は大幅に下落して一時280ドル安、その後下げ幅を縮小させ引けは75ドル安。
・ナスダックも同様で下げ幅は1ポイント安程度
マーケットの反応を三次情報で確認する
・米ドルは08.95円まで下落したがこの会談中止の影響というより一連のドル安の流れを受けたもの
・会談中止は、リスクが台頭したのでマイナス。だが米国による自動車関税の問題を含む通商問題の方が重要
・通商問題が長引けば、企業の設備投資計画に影響を及ぼす。経済指標にはまだ表れていないが、今後影響が表面化する恐れもある
・10月までは米国の「政策ラッシュ」が見込まれそう。米大統領が打ち出すポピュリズム的な政策が株価の重しに
このように会談が中止になっても市場の反応はかなり落ち着いており、それよりも、通商問題の深刻化、設備投資の減速の本質的な問題に目を向けるべきという論調でした。そのことから、我々は「米朝首脳会談が成功するか、しないのか」を市場動向のメインのテーマにすべきでないということはこの時点でわかっていたはずでした。

首脳会談後の反応はだれでも予想ができた

前述の通り、私たちは、首脳会談の見送りが決まった後の市場反応を冷静に見ていれば、首脳会談後の市場動向は、首脳会談の内容が最重要ではないと準備ができたはずなのですが、しかし、連日連夜続くマスコミや評論家の以下のようなコメントを受けて、
・日本株は米朝首脳会談内容により急上昇か?
・米朝首脳会談次第で今年が見通せる
個人投資家の感情は大きく揺れました。
1)まさかの米朝首脳会談開催が決定→喜ぶ
2)しかし、首脳会談中止になり→悲観する
3)ところが、首脳会談やはり開催となり→大喜び
その結果、多くの個人投資家はその世間のムードに支配されて、株式の買い控え、利益の確定などを行った人が多くいたと聞いています。
しかし、開催前から、通商問題>首脳会談の結果、金融政策>首脳会談の結果であることは、一度中止になった時のマーケットの反応で判断できたはずです。
今回の教訓としては、このような世界的なイベントは歴史を振り返ってもマーケットを動かすため、やはり注目すべきですが、今回のような開催決定→中止→開催確定とその変化の中にヒントがある場合もあります。特に、「市場の声を聞け」という格言があるように、市場自らヒントを教えてくれることがあります。
みなさんも今回のビッグイベントでなにか一つでも今後に使えるスキルを身につけることができれば、今後の人生において大成功だといえると思います。
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