2019.5.29
お金持ちの職業で多いのは?やっぱり経営者?
お金持ちの職業が何かを知る最も確実な方法は、かつて存在した「高額納税者公示制度」により、国税庁が毎年発表していた「高額納税者名簿(長者番付)」をチェックすることです。諸々の事情で、この制度は2006年に廃止されてしまいましたが、年間3,000万円以上の所得税を納めているお金持ち(年収でおおよそ1億円以上)の職業分布は、概ね以下のような感じになっていました。現在も、職業分布は大きく変わっていないと考えられます。
1位 企業経営者 32%
2位 医師 15%
3位 役員など企業経営幹部 12%
2位 医師 15%
3位 役員など企業経営幹部 12%
上記3位までがお金持ちの職業と明確に言える範囲でしょう。これ以下は大きく差が開いて、タレント・芸能人とプロアスリートがそれぞれ1%程度、弁護士は何と1%にも満たない水準になっています。高額納税者名簿に載るようなお金持ちの医師は、ほとんどが開業医と推定されますので、職業は広義での経営者とも看做すことが可能ですね。このように考えると、お金持ち(年収1億円以上と推定される高額納税者)の約6割が広義の経営者、もしくは経営者に近い立ち位置の方、と捉えることができます。
一方、市井で一般的にイメージされるお金持ち職業のステレオタイプは、芸能人やプロアスリート、弁護士などですが、これら職業で成功してお金持ちになれる方は、実際には極少数であることが分かります。
メディアでしばしば採り上げられる豪奢な生活を送る芸能人やプロアスリートなどは、飽く迄もその職業で成功し、結果的にお金持ちになれた極一部の方に過ぎない訳ですね。現実問題、本業だけでは生活が立ち行かない方が圧倒的に多数派で、飲食店を開いたり、様々なアルバイトをしたりしているものです。
大手企業よりも中小企業の経営者がお金持ち職業?
お金持ちの職業として多い企業経営者ですが、上場企業など大手企業の経営者ではなく、中小企業の経営者が大半を占めると考えられます。理由としては、大手企業の経営者はいわゆる「サラリーマン社長」が多く、年収5,000万円以下が大半であるためです(年間3,000万円以上の所得税負担はあり得ない)。その他、大手企業の数自体が企業数全体の僅か0.3%ほどしかなく、圧倒的に少数であることも理由として挙げられますね。
他方、中小企業の経営者は自ら起業した「オーナー社長」である場合が多く、かつ非上場企業がほとんどなので、自ら高額報酬を設定できますし、株式の配当収入も業績に比して高めの設定も可能です。蛇足ながら、中小企業経営者は、費用を経費として落とせる余地が極めて大きいことも、収入を補完してくれる意味合いで旨味だと言えます。加えて、最近の傾向として、起業してビジネスモデルを育て、軌道に乗ったところで事業売却して資産を得、一気にお金持ちになる経営者も増加中です。
それでも、大半の中小企業(零細企業含む)の経営者の報酬額は、大手企業経営者のそれよりも遙かに低いケースが多いことには留意が必要です。中小企業の経営者は自分で創業した「オーナー社長」が多い訳ですが、成功してお金持ちになれるのは飽く迄も少数派なのです。
事業が上手くゆかず倒産すれば、自らの個人資産も差し押さえられる場合が多いですから、中小企業の経営者はハイリスク・ハイリターンの職業とも考えられますね。
医師・弁護士は開業すればお金持ちの職業になる?
お金持ちイメージがある職業と言えば、必ず登場してくる医師ですが、企業経営者の場合と同様、お金持ちの職業たり得るのは雇われの身の勤務医ではなく、自らも経営者である開業医ですね。厚生労働省の賃金構造基本統計調査などを参考にすると、勤務医は激務の割に平均年収は1,200万〜1,300万円程度です。年収800万〜1,000万円程度しか得られていないケースも散見されます。しかし、開業医になれば、法人でも個人でも平均年収は2,500万円前後にはなり、年収数千万円であることもザラの職業です。
開業医は、眼科や糖尿病診療科、美容外科など特定の専門診療科が有利で、自由診療分野(アンチエイジング、レーシック、不妊治療など)であれば一層有利です。
私の親族に都心部の高級住宅エリアで眼科を開業した者がいますが、昨今の高齢化社会も追い風になっているのでしょうか、経営状態は安定して良好、相応の利益を得ることができています。これに対し、弁護士の平均年収は700万円程度と考えられます。しかも、法律事務所や一般企業に勤務する弁護士、開業している弁護士など全ての形態を含む、職業としての平均値です。
問題なのは、開業した弁護士の4人に1人は年収100万円にも満たないと見られ、お金持ちの職業どころか、まともに生活できる職業ですらなくなってきていることです。この原因は、2006年から実施されている新司法試験制度によって弁護士資格の取得者が急増し、供給過多の状態に陥っていることにあります。大型案件は、どうしても定評ある大手弁護士事務所へ行ってしまいます。個人経営の零細な弁護士事務所は、中小企業の法務や国選弁護人などを引き受けたりしつつ、辛うじて凌いでいる場合が少なくありません。最近の弁護士は、医師よりもさらにお金持ちとそれ以外との格差が大きい職業なのですね。