世界新記録より自己新記録、夢を持って自分というプロダクトを磨いてほしい
今回は、小僧com株式会社を経営されている平松庚三氏をお迎えしました。平松氏は、ソニー株式会社に13年間勤務した後、主に外資系企業の社長を歴任。株式会社ライブドア社長を経て、小僧com株式会社を設立、経営されています。
インタビュアーは、日本ファイナンシャルアカデミー株式会社 代表取締役 泉正人が務めます。
団塊世代をターゲットに立ち上げた『小僧com』は、どんなコミュニティに成長しているのか?人間が生きるためになくてはならないものは夢。小僧を目指す人達への熱いメッセージ。読み応え満載の内容を、ぜひご一読ください!
究極の夢だった自分の会社で団塊世代向けのビジネスを
泉:本日はよろしくお願いします。最初に平松さんご自身の自己紹介も含めて、会社の内容や業務の概要をお願いしたいと思います。
平松:ソニーに13年勤務した後、外資系の社長を務めてきました。その究極の最後の仕上げがライブドアです。あの2年間というのは、素晴らしい出会いだったと思っています。ハントされたわけでもなし、募集していたわけでもなし、私が応募したわけでもないんですが、「出会った」んです。
元来私は、すごい強運だと思うんです。どこに行っても、チームに恵まれてきましたから。そういうチームを作っていくのが社長業であるとも言えますが、ライブドアでも、本当に良いチームに恵まれました。20も30も若い人たちと一緒に仕事して、彼らに支えられて、教えてもらって、60歳で一番育ったと思うんです。私自身、これまでの中で一番成長したと思える期間でしたね。
泉:そうした2年間を経た後、独立されたのにはどのようなきっかけがあったんでしょうか?
平松:私自身のキャリアで言うと、雇われ社長の究極として最後にライブドアが位置しています。ライブドアの社長になる前から、外資系の会社をMBOしたり、自分達で買ったり、建て直したりしてたんですね。
ただその間も、究極、最後の夢というのは、自分の会社を持ちたいとずっと思い続けてきました。人の会社ではなく、自分で投資をして、自分の会社でビジネスをやりたい。ずっとその考え方を暖めていたんですが、私の中では、3つのビジネスモデルがありました。
一つ目は宇宙、二つ目は農業、そして三つ目が、自分が団塊世代なので、団塊世代をターゲットにしたビジネスということです。
宇宙は、億単位じゃなくて何十億円単位で費用がかかってきますから、私がビジネスとしてやるのには無理があるのかなという結論になりました。じゃあ、お客として乗ろうというので、日本人の民間人の第一号として、ヴァージン・ギャラクティックに乗ることにしたわけです。先週もカリフォルニアで、新しい母船のお披露目があって行ってきました。
第2の農業というのにも大変興味を持っています。ものづくりというか、一次産業を大切にしない国は滅びるというのが、私の持論なんですが、今日本では、農業というのが大変な目にあってます。食料の自給率も今40%切っているわけですよね。それがショックというか、農業にはものすごい興味があるので、将来やりたいなと思っています。
泉:次のステップとしてということですね。
平松:そうですね。農業は、基本的には起業家に分類されますよね。だから、日本の農業は、究極のスモールビジネスなんです。スモールビジネス、ホームビジネスね。完全な家内工業です。今全国を回ってですね、新しい農業をやろうとしている人達を見て回って歩いているんですよ。その中で、ある程度の企業として法人化させてあげるっていう考え方も必要だなと感じています。ただ私の中で、これは今すぐにすべきことでもないという結論に至ったんです。
『小僧』という名前にこめられた思い
平松:最後に残されたのが、団塊世代関係のビジネス。僕自身が55歳になったとき、定年後(社長やってたら定年はないですけど)は老後ではなく、人生の後半戦だと思ったんです。野球だってサッカーだって、絶対後半戦の方がエキサイティングで面白い。だから、後半戦のゲームプランをしっかりたてて、ゲームを思い切りエンジョイすること。これが最も大事なことだろうと位置づけました。
それは勝てないことだってありますよね。でもゲームをエンジョイすることっていうのが必要なんじゃないかって思います。そういう想いの元、同じ志というか生き方を志向する人たちを集めようと思ったんです。エンジョイする仲間のようなものですね。
それで、2004年から2005年にかけて、そうしたものを実際に作っていったんです。その間、『プライムタイム』とか『プレミアエイジ』とか、名前をみんなで考えたんですが、ピンと来るものがありませんでした。
そんなとき、愛媛県の瀬戸内海の沖合いの青島というところで、また一つの「出会い」があったんです。その島は、なんと平均年齢が70以上。男はみんな現役の猟師で、毎日船に乗って自分で漁に出る。おばあちゃん達はみんな現役の農婦で、毎日山に行って、みかん畑にみかんとか取りに行くというなんともパワフルな雰囲気の島でした。
さらにこの島で、30、40歳は「ヨチヨチ歩き」、50、60歳は「ハナタレ小僧」と呼ばれているっていうのを見つけたわけです。それで社名を『小僧』にしようと決めました。私が目指す生き方がここにあったと感動したんです。
良くアメリカでは自分の名前を会社名にしたりしますよね。だから、「お前も自分の名前を付けたの?」なんてよく言われるんですが、「いやいや、そうじゃなくて、小僧と庚三っていうのは、漢字は違うけど、発音が非常に似ていて、小僧っていうのはKidって意味なんだよ。50、60って、シニアシティズンなんて言われていても、全然未熟だから、『Kids.com』そういう名前なんだ、それがうちのシニアの集まりなんだ。」と説明するんです。そうすると海外の方もみんな喜びます。
60歳でもまだまだ「小僧」だと言う生き方は、世界中の人が目指すライフスタイルなんだろうと思います。ただ、たまたま私の名前とおんなじなんです(笑)
「立派な小僧になるために」みんなが『小僧』に集まってくる
平松:そうした「出会い」を経て、SNSを中心としたコミュニティを作りはじめたんです。会社を正式に作ったのが2006年の春なんですが、実際エンジンを作ったりして、実際にサービスを始めたのが2006年暮れからです。
「人生の後半戦は、楽しく健康に。豊かで賢く」こうしたことを1つのテーマにしています。「賢く」っていうのは知的好奇心ですね。若さっていうのは、知的好奇心をいつまで持ち続けられるかどうかにかかっているわけです。「豊かに」っていうのも、金銭的な豊かさだけじゃなくて、心の豊かさ。そして「楽しく」「健康」。人生これがやはり大事ですよね。
そして最後に、「できれば」っていうのが入るですが、地域の役にも立ちたい。そういう人達を集めましょう。それができたらどれだけ楽しいか、ということで始めて、今1年半くらいです。会員はちょうど7千人になりました。
実際始めてみると、いくつかびっくりしたことがありました。50、60歳はハナタレ小僧、30、40歳はヨチヨチ歩きって言っていたのが、ヨチヨチ歩きがマジョリティになっちゃったんです。ちなみに30歳以下もいます。大学生やサラリーマン層です。
それに合わせて、30歳以下はハイハイ。30、40歳はヨチヨチ歩き。50、60歳はハナタレ小僧。70、80歳はワンパク坊主。小僧の後が坊主になるという呼称もつけています(笑)。
泉:面白い呼び方ですね。若い方達も参加されているということなんですが、世代によって入会の動機も変わっているのでしょうか?
面白いなあと思って入会動機を見ると、50、60歳っていうのは小僧っていうところに共感を持つ。「そうです、私達まだ小僧ですよね」っていう感覚ですよね。人生でも、もう30歳なのかまだ30歳なのか、もう40歳ですよっていうのとまだ40歳ですよと考えるのか、それで人生がものすごく違ってくるんですよ。
そういう人達が集まっているので、30代、40代の人達っていうのは、やっぱり10年後の自分、40歳になったときの自分、50歳になったときの自分っていうのをきちんとイメージしている。そして、一言で言うと一番多いのは「立派な小僧になるために」なんですよ(笑)。
それは大変あてが外れたけど、ポジティブな意味でいいあての外れ方でしたね。それから、43%の人が所帯年収1000万以上で、平均が1300万円です。お金持ちを集めてたわけじゃないんですけどね。そういうデモグラフィーというのができたわけです。まだ7千人なんだけど、非常に高品質な属性というか、デモグラフィーが維持されているんですね。
『小僧』によって、ライフスタイルマーケティングが可能になる
泉:こうしたデモグラフィーの分析もこれまでのご経験が活かされているんですね。インターネットもずっと関わって来られたのでしょうか?
平松:そうですね。私は92年に初めてインターネットに出会って、15年くらいインターネットをやっています。インターネットは、今や電気か水道と同じような我々の生活やビジネスになくてはならないユーティリティですよね。
ところが、電気でも感電すると死んじゃうし、ガスでも使い方間違うと死んじゃうように、インターネットも凶器になることがありますよね。インターネットのいいところも素晴らしいところもあるけれども、害もたくさんある。
同じようにSNSっていうのは、どちらかというとニックネーム、つまり仮面をかぶって、素顔を隠してお互いに話をするというところが、良いところでもあり、悪いところでもあるんですよ。
良いところでもあるっていうのは、みんなが思い切ったことを言える。悪いところは、素顔を隠しているから無責任なことも言える。他人を傷つけたりすることができるところですね。諸刃の剣と言えます。
ところが面白いことに、『小僧』の場合は、男性の30%以上、女性の20%以上が本名なんです。それで、『小僧』主催のオフ会とか、自分達のオフ会というのが度々開かれて、『小僧』専用ニックネーム、それから住所も電話番号もプライベートのメールアドレスも交換し合うわけですよ。だから顔が見えるSNSというきわめてユニークなSNSになりましたね。
それと、その7千人のデモグラフィーっていうのが、非常にはっきりしているんです。僕はずっとマーケティングっていうのをやってきたんですけど、マーケティングっていうのはサイエンスであるとずっと言ってきました。日本ではどうしてもマーケティングって、クリエイティブっていう無から有を生むのがマーケティングだと考えられています。
だけど、そこにいたるまでのプロセスとかロジックが非常に大切なんですよね。だから私は、マーケティングって言うのはサイエンスだと一貫して言ってきました。
日本でのマーケティングって言うのは、F1層(20~34歳の女性)とかR30(30代)、R40(40代)などジェネレーションだけで人を見たり、市場を分析したりっていう、そういう傾向が強いですよね。
でもジェネレーションだけで切り分けできるんだったら、小学1年生とか、中学1年生はみんな同じ嗜好で同じはずなんだけど、実際には、その中にライフスタイルや価値観の相違がジェネレーションに関係なく存在しているわけですよね。そういうのも我々はプロットしているんです。
会員数6000人のときの資料で、『mixi』と比べるとよくわかるんですけど、『mixi』の方が女性がずっと多いんです。さらには、約9割が10代~20代なんですよね。
ところが、『小僧』の場合には、30代、40代で65%です。40代、50代、60代がコアなんですね。私は、その上の年代はこれから増えてくると思っていますが、ITリテラシーの問題もあるのかなと思います。
私はソニーにいたとき、20代、30代はずっと海外だったから、タイプライターとか、昔はテレックスなんてのもあったので、インターネットにすぐ馴染めたんです。でも、日本の会社にいたら、普通の50代、60代って、なかなかそうはいかないですよね。
泉:興味深い分布の差が現れていますね。世代が高いと言うことは、収入や資産規模も他のSNSに比べて高いと言うことでしょうか?
平松:『小僧』のメンバーは、圧倒的に首都圏で、自分の持ち家率というのが65%くらいで、43%が所帯年収が1000万以上。都市型で高所得者が多いんです。
ジェネレーション別に見ていくと、30代だと女性が33%で、女性も多くなってますよ。平均年収っていうのも1040万円だから全国平均の倍くらいです。40代になると、平均年収が1150万円。男性が76%と、だんだん女性が少なくなってきます。50代だと、女性は20%になってしまう。平均年収が1270万円。60代だと、女性は16%で、平均年収は1300万円代です。
泉:そうしますと『小僧』に属してる人は、いわゆる団塊世代とも少し違うということになるのでしょうか?
そうなんです。こうして見ていくと『小僧』ってなんだろうっていうことがよく見えてきます。数値を見ても、厚生労働省の日本の平均年収と比べ『小僧』参加者の平均年収は、完全にそこから離れています。
そこで立てられる仮説というのは、『小僧』というのは、情報の感度が高くて、知的好奇心に富んでいて、ネットワーキングに意欲が高いアクティブな人達で、消費意欲が高い、ゆとりのある人達であるということです。
さらにもう少し分析した資料で述べますと、先ほど申し上げたR30とかF1層とかっていうだけの分類じゃなくて、その中でも30代で年収2000万円以上の人、40代で年収2000万円以上の人とか、横浜に住んでる人、東京23区に住んでいる人とか、旅行が好きな人、旅行でもヨーロッパが好きな人、アジアが好きな人、車が好きな人、その中でも国産車の人、外車に乗っている人、これ全部プロットできるようになっているんですよ。
泉:これはすごいですね。これまでのマーケティングとは一線を画すような手法だと思います。
平松:今、問い合わせが結構あるんです。さっきマーケティングはサイエンスって申し上げましたけど、やっぱりこれからのマーケティングっていうのは、当然のことながら50代、60代という、団塊というか、中高年の富裕層っていうのが、どこの業界でも非常に大切になってくるわけです。
今20代は、飲料水もあまりのまず、車も買わず、海外旅行にも行かないと関係者から聞く機会が多いですが、そうなると、当然50代、60代を狙うことになるわけですよ。団塊世代、富裕層です。
今までどうしても、R30とかR40とか、女性だったらF1層とかって言ってきたんですが、実際にはその中にもライフスタイルの志向性というものがあって、例グルメとか、車とか、トラベルとか、ミュージックとか、ムービーだとそういう切り口で見たら、ジェネレーションは関係ない、と言えるわけです。そうすると、これから必要なのは。ライフスタイルマーケティングに他ならない、というのが私の持論であり、『小僧』のデータが示すものです。
泉:そうした次世代のマーケティングを『小僧』が可能にするんですね。
平松:それが我々のビジネスモデルです。来年ぐらいからこうしたマーケティングを本格的に始めたいと思ってます。ただ『小僧』としては、富裕層を対象としているというわけではなくて、お金持ちもいるし、そうでない人もいる。大前提は、楽しくエキサイティングなライフを送ろうということです。『小僧』っていうのは、そういうコミュニティなんですよ。
世界新記録より自己新記録、人生の後半戦はもっと楽しく
泉:こうした発想は平松さんご自身の内面から出てきているような印象を受けるのですが、ご自身がこれまで意識されてきたことや座右の銘などはありますか?
平松:僕が作った座右の銘って言うのがあるんです。これまで座右の銘って呼べるものがなかったので、2年前くらいに自分で作ったんです。それは、『世界新記録より自己新記録』です
泉:なるほど。素晴らしいですね。
平松:世界新記録っていうのは、数値から言えば64億人の中の一人。大変な確率です。でも自己新記録は、頑張れば64億人全員ができる。その中でも、豊かに、楽しく、健康に、知的好奇心を旺盛に生きていく。これが素晴らしいですよね。
「豊かに」っていうのは、心の豊かさもそうだし、金融商品もそうだし、物質的な豊かさっていうのも、やっぱり大事です。金銭っていうのは最も大切なものではないけれども、非常に大切なものであるわけですよね。
泉:ご自身の今までの経験の中で、お金は汚いとか、そういう風に考えたことはありますか?
平松:全くそうは思ってないですね。ただ、私は自分に投資してきた。私は、自分自身をプロダクトだと思っているんです。だからこれまでプロダクトのバリューを高めようと考えてきました。
冒頭申し上げたライブドアのときの2年間は、素晴らしい経験でした。給料をもらいながら、若い社員に支えられて、教えてもらって、私自身が伸びて成長して、プロダクトの価値が、バリューが高まったわけです。これは素晴らしい経験でしたね。
泉:お金をもらいながら、かつバリューも高まったということですよね。
平松:だから、今まで自分に、そしてみんなに言ってきたんですけど、「飲み屋じゃなくって(笑)自分に投資しなさい」ということです。自分に投資するっていうことは、泉さんがやられているようなアカデミーで勉強することがひとつ。
でも、それだけじゃなくて、人生の価値っていうのはいい友達の数で決まるんですよ。持っている名刺の数じゃなく、価値観を共有できる友達の数なんです。
『小僧』にみんな惹かれてやってくるっていうのは、価値観を共有したいっていうことだと思うんです。『小僧』の場合は、他のSNSに比べて、価値観を共有する人を探すんだというので、そこでバリューを持ってくださってるわけですよね。そこなんですね。だから私自身、これからが本当に楽しみなんです。
5年後10年後の具体的な目標を設定することが大切
泉:対して、先ほどのお話にもありましたが、今の若い人は欲がないとよく言われますよね。車にも乗りたくないし、旅行も行きたくない。
平松:欲っていうよりも、目標が無いという感覚ですよね。
泉:目標ですね、なるほど。
平松:だから、例えば貯金でもいいと思うんです。毎月5万10万貯金して、それが起業するためにだったら、素晴らしいと思いますよね。私もちょうど大学のときに、早稲田騒動っていうのが起きて、1年近く大学がなかったんですよ。それで10ヶ月近く東南アジアに旅行に行ったんだけど、そのために380ドル貯めたんです。
そのときは、二つかけもちでバイトしていたから、1日に14-15時間働きました。ライブドアのときは、もっと働きましたが(笑)。1年間で500ドルは絶対貯めるという目標を立て、バイトでもいいから頑張る。実際には、380ドルくらいだったんですが、目標を持つということ自体に非常に価値があると思うんです。結果、この旅行で多くのことを学べましたし。
だから私はみんなに言うんですが、「目標と言っても難しいことではない」んです。自分をプロダクトと思うと、目標というのは自然に出てきますよね。
どんなビジネスやプロジェクトでも事業計画を立てますよね。まず、5年後の目標、10年後の目標を定める。そこで、目標に行くための戦略を構築する。いくつか案が出てくる中でしてプライオリティを考えて、どっちの戦略でいくかを決める。その戦略に基づいて、今度は実行案を作る。そしたら今度は実行に移すわけです。
もう一歩言えば、日本の会社ではなかなかやりませんが、実行した後の評価も大切です。上手くいっているどうかによって、戦略に戻ったり、実行案に戻ったりします。『Objective(目標)』『Strategy(戦略)』『Action Plan(実行案)』『Execution(実行)』『Assessment(評価)』、これでビジネスって動いているんですよ。どの経営の本にも、1ページ目にこれが書いていますよね。
自分がプロダクトだとすると、全く同じですよね。2010年の私、2015年の私、年収は3000万。ウォーターフロントにマンション。分の会社、自分のレストランを持っている。など何でもいいわけです。とにかく設定しなければ実現しませんから、具体的に目標を設定することが大切です。
泉:なるほど。こうした目標や夢を考え、実現に向けて行動されているから平松さんは生き生きとされているんですね。
平松:色んなところで講演させていただきますが、私がこういう話をすると、「すみません、平松さんは還暦過ぎてどこにそういうパワーがあるんですか。」と聞かれます。申し訳ないけど質問の意味が全く理解できないです(笑。「ちょっと待ってくださいよ、還暦でもなんでもいいけど、だって僕『まだ』62の小僧ですよ」というのが自然な感覚なんです。
夢を持って、自分というプロダクトを磨き上げてほしい
泉:平松さんの自分に限界を作らず、夢を追う姿勢はどういったところから来ているとご自身でお考えですか?
平松:すごく良かったなあって思うのは、最初に行ったのがソニーだったっていうことですね。ソニーで盛田さん、井深さんのもとで直接働くことができたっていうのが最初の成功ですね。ただ同時に、最初の失敗っていうのもソニーに13年もいたってことですね。5、6年経ったときに起業していればよかったんですが、インターネットも知らなかったし、アントレプレナー(起業家)なんて言葉も知らなかったんですね。
泉:ある意味感性のひとつだと思うんですけど、そういう所で学んできたことを、身に付けられてきたということですね。
平松:同じ所に行ってても、そういうのがわかる人とわからない人がいるじゃないですか。オポチュニティっていうのは、誰にでも同じ数だけ来るんですよ。それを掴むか、それとも知らずに逃すか、掴み損ねるかで結果は大きく変わってきてしまいますよね。
同様に、リスクも誰にでも同じように来るんだけど、それをコントロールできると思ってそれにはまってしまうか、リスクを回避するための方法をきちんと作ってあるかどうかっていうことですよね。
泉:最後に、平松さんのような小僧を目指している方に向けてメッセージをお願いします。
平松:人間が生きるためには空気と水と夢。生きられないよね、夢無しではということです。ゴール、目標でもいいですよね。だから貯金するのもいいですよ。大切なのは、何をしたいかということ。。
それからやっぱり、世界新記録より自己新記録を目指してほしい。毎日記録更新できるからね。そして自分というプロダクトというのを磨き上げてほしいですね。
泉:本日はありがとうございました。
(本記事は、2008年09月10日にファイナンシャルマガジンに掲載されたものを再掲載しています)