世の中のクリエイターが 好きなことをして生きていく世界を作りたい
STAGE編集部:前田さんはいま熱中されている仮想ライブ空間「SHOWROOM」の仕事を通じて、どんな世界を作りたいのでしょうか?
アイドルやアーティスト、クリエイターなど、あらゆるジャンルで夢と熱量を持った人たちが、正しく報酬的にも報われ、より夢を輝かせられるような世界を作っていけたら本望です。SHOWROOMにはファンが演者に“ギフティング”で応援できるシステムがあるので、ライブ配信を頑張って多くのファンの心をつかめるようになれば、夢で食べていける可能性も広がり、好きなことをして生きていける人が増えるわけです。
既存の業界やメディアの世界などでは価値を持たなかった人たちが価値を持つようになる。それこそが資本経済的価値観とは一線を画す「信用経済、価値経済的価値観」だと思っています。
例えば、30人しかいない村の中に、毎日すごく一生懸命紙芝居を作ってるおじいちゃんがいたとして。そのおじいちゃんは、毎日子供たちに紙芝居を読み聞かせているから、すごく皆から好かれてるけど、別にお金を子供たちからとってるわけじゃないので従来の資本主義経済の文脈から語ると、おじいちゃんが手にするお金は0なんですよね。ただ、これが一転し、価値経済・信用経済的価値観の文脈になると、子供たち皆がおじいちゃんに深く共感してる。これをベースに、彼にお金が集まってくると思うんですよ。
STAGE編集部:おじいちゃんがSHOWROOMやクラウドファンディングをするとお金が集まるということでしょうか?
そうです。お金を稼ぐのが得意な人とか、なんらかの運が重なってお金を持っている人とか、あるいは元々親がお金持ちとか。そんな資本主義の中での振る舞い方が上手な人たちがこの世の中にはたくさんいると思うのですが、そうではない、資本主義的な振る舞いは下手だけど、皆から共感されて好かれていたり、内在的価値がある人の元にお金が集まってくる仕組みを作っていきたいですね。そうすることで、世の中の幸せの絶対量が増えていくはずだと、信じて疑いません。
次に目指すはモバイル版「ジャパネットたかた」の世界観
STAGE編集部:そんなSHOWROOMを今後、どのようにスケールしていきたいですか?
海外と国内の両方を意識しています。まず国内の話をすると今、SHOWROOMってアイドルとか声優とかいわゆるサブカル分野の方々の配信がメインなのですが、今後は芸人さんやアーティスト、モデルさんの卵など幅広いジャンルの人たちにも配信していただき更にコンテンツを拡充していけたらと考えています。もう一つは、マネタイズの多様化。演者へのギフティング以外にも、リアルタイムで演者が商品を紹介して生配信中にファンに買ってもらうライブコマースをもうひとつの軸に育てていきたいです。イメージは「ジャパネットたかた」が近いですね。
海外に関しては、いま日本で僕らが立ち上げている、バーチャルキャラクターが番組を生配信する事業が海外ウケするだろうという確信があります。ここをフックにアジアを攻めるのが目先の目標です。
STAGE編集部:実現するといいですね!ちなみに外資系投資銀行時代は、入社以来、早朝4時半〜5時頃に自転車で出社し、誰よりも遅くまで働くという圧倒的な努力をされていたそうですが、今でもそうなのですか?
もう自転車通勤はしていませんが、そうですねぇ、ライフスタイルは当時からあまり変わってないかもです。自分では強く「圧倒的努力」と認識しているわけではないです。それこそ「SHOWROOM」の仕事は熱中と夢中の真っ只中なので、あまり自分では圧倒的努力とは思ってないんですけどね。
子供の頃のドキドキが、共感を呼ぶ
STAGE編集部:仕事にどっぷり浸かっておられる前田さんですが、会社を育てること以外に個人的にやりたいことってないんですか?
無限にありますね!その一つを挙げるなら……スナックを日本中に1000個作りたい!キングコング西野さんと一緒にやっているのですが、既に30個はあるんじゃないかな(笑)。僕たちの考え方に共感した人が、全国津々浦々でママをやり始めてくれていて。僕、地方出張に行くと必ず現地のスナックを訪れるくらいスナックが大好きなんです。どう見ても流行ってなさそうな町外れの小さなスナックがなかなか潰れないのは、決して完璧ではないママを「自分たちが支えねば」と使命感すら覚える常連客たちの献身とコミュニティの賜物なわけで。すべてのファンビジネスの根幹はスナックにあると考えるくらい、スナックには惹かれてしまいます。
あとは、堀江(貴文)さんと西野(亮廣)さんと3人で始めている、DJのガイドが案内する「はとバス2.0」も実現させたいかな。あとは、移動式ミュージカル。ステージの上じゃなく、普通の商店街でミュージカルの劇団がフラッシュモブみたいな感じで移動してくるんです。そうそう、それこそ移動式スナックがあったら面白そう。
STAGE編集部:是非見てみたいです! もしかして前田さんの中では「移動」がキーワードだったりするんですか?
そうかもしれません。子供の頃って好きじゃないですか、電車とかバスとか移動する乗り物が。小さい時にワクワクしたことって大人になってもワクワクするよなって。そういうことですよね、自分が熱中できて、周囲から共感を得やすい事柄って。
STAGE編集部:それを仕事にしたいとは思わないんですか?
仕事、ではないかな。結局そこでお金を欲しいとは思ってないし。ただ、「わー、すごい、はとバス2.0共感できるわ〜」とか、「スナックいいよね」とか、共感する人が増えるほどお金が集まってくる、不思議な世界なんですよね、この世の中って。
STAGE編集部:なるほど! 最後に、前田さんにとって「お金」を一言で表すと?
そうですね、「共感の対価」にします。
お金は信用とも言えるんですが、「信用」という言葉よりも、共感の方がより「好き」というニュアンスが含まれている気がするので。
「お金とは共感の対価。(前田裕二)」