早起きで人生が変わる、朝活から生まれた働き方改革の極意とは〈池田千恵〉

インタビュー

夜型人間で失敗ばかりを重ねていた人生を早起きで逆転させた女性がいます。企業や自治体に朝イチの仕事改善を指導し、朝活の第一人者といわれる池田千恵さんです。朝活で池田さんの人生がどう変わったのか、私たちが朝時間をどう活用すればいいのか、話をうかがいました。

大学入試と仕事開眼で2度の成功体験

STAGE編集部:朝活で人生が変わったそうですが、朝時間の魅力を知ったきっかけから教えてください。

高校時代までずっと夜型人間でした。大学受験に失敗して浪人し、福島県から東京へ出てきて予備校の寮に入りました。テレビもない部屋で夜中まで勉強したのですが、志望校に合格せず、滑り止めの大学に行ったのです。でも、その大学が肌に合わず、半年ほどしたころに一念発起して志望校に再挑戦することにしました。

その際、今までの延長では未来がないと感じ、夜型を朝方に変えて毎朝5時半起きで勉強しました。その結果、半年間の努力が実り、志望校に合格しました。それが最初の成功体験です。

STAGE編集部:2度目の成功体験もあったのですよね。

学生時代は別に早起きする必要がないので、普通に昼過ぎまで寝ていました。趣味がなく、勉強ができるわけでもありません。くすぶった4年間を過ごしていました。それで就職活動に失敗し、どうにか入れた会社でも仕事ができず、またくすぶっていたのです。そんなとき、早起きの成功体験を思い出し、もう一度やってみようと思いました。

6時に起きて出社前に近くのファストフード店に寄り、コーヒーを飲みながら仕事の手順や注意されたことを振り返るようにしました。そうすると、いつの間にか社内の評価が上がり始めました。この2度目の成功体験が朝時間の魅力を知るきっかけになったわけです。

前向きな思考に転換、朝活がもたらす最大のメリット

STAGE編集部:朝時間の魅力とはどんなところにあったのでしょうか。

最大の魅力はやはり、前向きになれることです。夜型だった時代は寝る前に考えても仕方がないことでくよくよしていました。これで私の人生は終わりだとか何もかも悪い方向に考えを向けていたように記憶しています。でも、そういう考えをやめてさっさと寝てしまうと、次の朝には大したことではないと思えるのです。

もう1つは夜に仕事の段取りを考えると、時間があるせいかどうしてもダラダラとしてしまいます。ところが、朝にやると7時半の出社時間から逆算し、時間を有効に使わなければなりません。それが段取りよくする力をつけてくれたように感じています。

STAGE編集部:早起きするためのコツはありますか。

いつも遅くに寝ている人が無理して早く寝ようとしても眠れません。だから、最初は眠くても無理に早起きして早寝ができるようにするといいでしょう。生活時間を朝にシフトするだけなので、外国へ行ったつもりで早起きするのも1つの方法です。

それとしなければならないことを朝に持っていくと、辛さの二重奏になって起きられません。そこで、英語を勉強するとしたら外国人の彼女を作りたいといったように、まずは下心からでも良いので心からワクワクすることを想定して始めるのが効果的です。

STAGE編集部:池田さんは朝一でどんなことをしていますか。

子どもが生まれるまでは4時から9時まで丸々自分の時間で、本を読むなど好きなことをしていました。今は子どもが起きてくることもあるので、主に原稿の見直しや映画の視聴など子どもが起きて作業が中断されてもいいことをしています。それと自分が今後どういう道を進みたいのか、何をやりたいのかなどを再確認する時間にしています。忙しいとつい、忘れてしまいますからね。

朝の時間は緊急ではないけれど重要なことや、自分が心から楽しいと思えることをやるべきだと思います。忙しさにかまけて後回しにすると結局、できなくなってしまいます。

朝活手帳とモーニングページで働き方改革を

STAGE編集部:朝活手帳とモーニングページというミニノートを使っているそうですね。

モーニングページは朝起きて思いついたことを毎日3ページぐらい書き込んでいます。3カ月に1度くらい見直すと、よいアイデアが書き込まれているのを見つけることがあります。例えば、すごくイライラしたことを書き込むと、原因は嫉妬だとかなぜそう感じたのかが分かり、自分を客観的に分析できたりします。だから、これはおすすめです。

モーニングページと並行して朝活手帳をつけています。今日は何をするか、今週、来週はどうするかという計画を立てるわけです。月曜日には今週、連絡したい人や進めたいプロジェクト、将来の目標などをテーマとして書き込みます。朝活手帳に書き込んだことを1日かけて消化していく感じになります。

STAGE編集部:働き方改革で業務時間が減ると、朝や夜の時間の使い方が重要になると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

実質の作業時間は減るでしょうが、考える時間は増やさないといけません。単純事務作業がAIなどの先端技術で賄えるようになっても、創造性を持つ仕事をこなし、イノベーションを考えるのはやはり人間の役割です。

それと今後、副業がどんどん広がっていくでしょう。でも、副業で自分の時間を切り売りすると、ブラック企業同然になってしまいます。そうならないように、空いた時間を活用して自分の専門とする能力を提供する方法を考えていかないといけないでしょう。

池田さんにとってお金とは

STAGE編集部:最後に池田さんにとってお金とは何でしょうか。

人生の選択肢を広げるツールです。盲目的にお金さえあればと考えてしまいますが、お金に振り回されたのではいけません。今は子どもの選択肢を広げることにお金をかけたいと考えています。どんな教育を与えるのか、大人になるまでにどんな経験をするかの選択肢も、お金があるかないかで変わってくるでしょう。

子どもができてから時間やお金に関する考え方が変わりました。特によく考えるようになったのが投資対効果についてです。以前はがむしゃらに仕事をするだけだったのですが、限られた時間の中で仕事を選び、どうすれば最大限の効果を発揮するかについて頭を使うようになりました。それも自分の選択肢を広げることにつながっています。

池田千恵

株式会社朝6時(https://asa6.co.jp)代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や自治体の朝イチ仕事改善、生産性向上の仕組みを構築するほか、個人に向けて教えるプロ(講師・コンサルタント・専門家)として起業したい人が、商品作りを学べるコミュニティ「教えるプロのための自分商品化実践会」(https://ikedachie.com/ipro-asa/)を主宰。『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)9年連続プロデュースの『朝活手帳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

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