2019.11.29
南米勢の躍進、地球温暖化で世界のワイン地図は大きく変わる予感あり
11月21日は「ボジョレー・ヌーボー」の解禁日です。フランス・ブルゴーニュ地方にあるボジョレー(Beaujolais)村でその年に収穫したブドウからつくるワインの新酒です。2019年は、日本とEU(欧州連合)がお互いワインの関税を即時撤廃するEPA(経済連携協定)が2月に発効したので、2018年より安く飲めるはずです。
そのフランスはかつて世界最大のワイン生産国でしたが、2015年以後はイタリアが第1位です。国際ぶどう・ぶどう酒国際機構(OIV)が調査した2018年の国別ワイン生産量ランキング上位10ヵ国をご紹介します。( )内は前年比の増減率です。
1位 イタリア (14%増)
2位 フランス (27%増)
3位 スペイン (26%増)
4位 アメリカ (2%増)
5位 アルゼンチン (23%増)
6位 中国 (不明)
7位 チリ (36%増)
8位 オーストラリア (9%減)
9位 ドイツ (31%増)
10位 南アフリカ (12%減)
2位 フランス (27%増)
3位 スペイン (26%増)
4位 アメリカ (2%増)
5位 アルゼンチン (23%増)
6位 中国 (不明)
7位 チリ (36%増)
8位 オーストラリア (9%減)
9位 ドイツ (31%増)
10位 南アフリカ (12%減)
11位以下はポルトガル、ルーマニア、ロシア、ハンガリー、ブラジルの順です。
1年間にイタリアは48.5億リットル、フランスは46.4億リットル、スペインは40.9億リットルを生産し、4位以下を引き離しますが、10位以内にヨーロッパはドイツを含め4ヵ国で、6ヵ国はそれ以外の「新興国」です。アメリカ、オーストラリアは停滞していますが、アルゼンチンは前年比23%増、チリは前年比36%増でした。南米産「新世界ワイン」の躍進で、21世紀の世界のワイン生産地図は大きく変わりそうな予感がします。
地球温暖化の好影響と悪影響が交錯「眠れる獅子」中国は目覚めるか?
前年比増減率では、旧ソ連のジョージア57%増、スイス39%増、ハンガリー32%増、ドイツ31%増が目を引きます。地球温暖化の影響で、昔は寒すぎて栽培に適さなかった地方でもブドウが収穫され、ワインが生産されるようになったと言われています。逆に温暖化の悪影響を被ったのが12%減の南アフリカで、アフリカのワイン大国として存在感を示してきましたが、ケープタウン周辺のブドウ産地が気温の上昇、乾燥化の進行に脅かされています。2018年夏には大干ばつに見舞われて減産を余儀なくされました。
ワイン地図が塗り替わる要素は南米勢の躍進や気候変動だけではありません。世界第6位のワイン生産国、中国の動向も目が離せません。「中国のワイン?」と意外に思うかもしれませんが、ブドウの栽培もワインの製法もシルクロードから伝わり、唐代にはよく飲まれました。その後は紹興酒などにおされ衰退しましたが、19世紀末から山東省の煙台市周辺でブドウ栽培とワイン醸造が本格的に始まり「張裕(チャンユー)」ブランドが確立。2002年にフランスのワイン生産大手、カステルと提携しています。ブドウ栽培面積はスペインに次ぐ世界第2位で、ワイン産地は今や中国北部一帯にひろがっています。
とはいえ、中国は世界第5位のワイン消費国でもあり、フランスやアメリカやオーストラリアから輸入して国内市場の供給不足を補っています。そのため賞を取って国際的に評価された高級ワインもありながら、中国産ワインはあまり輸出に回らず、世界的な知名度はなかなか上がりませんでした。日本でもあまり見かけず、まぼろしの中国産ワインはまさに「眠れる獅子」と言えます。
しかし、対米、対EUの貿易摩擦が解決に向かい、中国政府が高級ワインの輸出拡大に本腰を入れ始めたら状況は一変し、隠れた名品が海外で脚光を浴び、「目覚めた獅子」が世界市場を席巻する可能性があります。
税制、貿易政策に後押しされ、「日本ワイン」の生産量は1年で約3倍
さて、日本のワイン生産はどうなのでしょうか? 国税庁の「国内製造ワインの概況」(2019年2月)によると、平成29年度(2017年度)の生産量は87,325キロリットル(0.87億リットル)でした。首位イタリアの56分の1にすぎません。しかし前年度比の増減率は21.1%もあり、伸びています。
その中には輸入したブドウ原液からワインをつくったり、輸入ワインをブレンドしたものも含まれますが、そうではなく、国産ブドウを100%使って国内で醸造したワインを「日本ワイン」と呼びます。基準を定義したのは国税庁で2018年10月30日に施行されました。目的は優れた国産ワインを輸出して世界市場で実績をあげることです。日本ワインの2018年度生産量は17,663キロリットルで、前年度比2.92倍と約3倍に急成長しました。
その中には輸入したブドウ原液からワインをつくったり、輸入ワインをブレンドしたものも含まれますが、そうではなく、国産ブドウを100%使って国内で醸造したワインを「日本ワイン」と呼びます。基準を定義したのは国税庁で2018年10月30日に施行されました。目的は優れた国産ワインを輸出して世界市場で実績をあげることです。日本ワインの2018年度生産量は17,663キロリットルで、前年度比2.92倍と約3倍に急成長しました。
2019年2月、EUとのEPA協定が発効し、EUの日本産ワインに対する関税は0%になりました。本場に日本ワインの実力を認めさせ、輸出を増やす絶好のチャンス到来で、ヨーロッパで評価されたら世界で売れます。そのように日本の税制も貿易政策も、日本ワインの世界進出を後押ししています。
「いま、日本ワインは海外でとても人気があり、国内では欲しくても在庫がなくて手に入らないほどです」(楽天ECコンサルティング部ジャンル戦略課データインテリジェンスグループ/トレンドハンター・清水淳氏)
日本は経済ではG7先進国でも、ワインでは新興国。日本ワインは、伝統のヨーロッパ勢、お手頃価格の南米・アフリカ勢、地球温暖化で加わった新興産地や「眠れる獅子」中国に対抗して、ワインの世界市場でどこまで勝負できるでしょうか?
「いま、日本ワインは海外でとても人気があり、国内では欲しくても在庫がなくて手に入らないほどです」(楽天ECコンサルティング部ジャンル戦略課データインテリジェンスグループ/トレンドハンター・清水淳氏)
日本は経済ではG7先進国でも、ワインでは新興国。日本ワインは、伝統のヨーロッパ勢、お手頃価格の南米・アフリカ勢、地球温暖化で加わった新興産地や「眠れる獅子」中国に対抗して、ワインの世界市場でどこまで勝負できるでしょうか?
参考URL:
https://www.nadaya.co.jp/archives/2083
https://forbesjapan.com/articles/detail/17594
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2019/eaa14055d257c2bb.html
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/kajitsu/pdf/h29/29wine_all.pdf