〈佐渡島庸平〉〜信用を可視化する方法〜インタビュー「宇宙とお金」[第3回]

宇宙が好き
佐渡島庸平さんに聞く「宇宙とお金」インタビュー最終回です。
2017.12.7
AIにどんなキャラクターを載せるかということが必要になるだろうと佐渡島さんは推測します。AI時代にむしろエンターテイメント業界は必要とされ、強くなっていくという未来予測です。

■エンジニア採用の一次選考をムッタbotにした結果

STAGE編集部:「宇宙兄弟のムッタ」のキャラクターを持ったAIに相談したら、どう答えてくれるだろう、と考えるのも楽しいですね。

佐渡島さん:実はつい最近、コルクのエンジニア採用をムッタbotを使ってやってみたんです。ムッタbotとエンジニアが話し合って、その第一次面接を全部終えちゃうっていう試みなんですけど。
普通にエンジニア採用してたら、1人うちに来てもらうのにものすごく苦労するのに、一瞬で数十人の応募が集まりました。やっぱり面白いとみんな乗っかってきますよね。ムッタと相性診断したり話ししながら、応募ができるって一瞬で拡散して。

STAGE編集部:こういう採用をしているって、コルクだけで告知したんですか?

佐渡島さん:そうです。採用サイトなどは使っていません。僕がどこかの採用サイトで、「うちはエンジニアを大切にしてます」って言っても、信用していいかどうかがわからないですよね。でも、この方法だと、うちのエンジニア力を示すこともできるし、うちの企画力も示すことができる。信用していいってわかるじゃないですか。そうするとみんなが行動して信用が楽に可視化されていくので、いろんなことの話が早い。

■信用を可視化する方法

STAGE編集部:信用ってどうやって作るものでしょう。

佐渡島さん:それは、ほぼブランドってどうやって作るんですかっていう問いとほぼ同じだと思います。
まずは継続性なんですよ。長く続いていないものって人は信用しないんです。あと安定しているかなんですよね。
若い人は、成功しようとしていろやるんだけど、そのいろいろトライしている様子をみて、上司が「お前に任せるよ」なんて、成功確率の高い大きい仕事とかを振ったりはしないわけですよ。
大成功を掴んでやろうと目論んでいる人間を、人は信頼しないんだよと、そのトライしている人間に対して僕ならアドバイスします。それで大成功しても、信用を積み重ねないんだよと。運が良かったねって言われるだけで、おしまいです。
それよりも、毎朝誰よりも早く来て、他人の机をきれいにして、トイレ掃除してる人間の方が、「なんかこの人に任してもいいかも」って、ちょっと大きい仕事を任されると思います。それが成功すると、もうちょっと大きい仕事が任される。そんな風に階段を1段ずつ登っていこう、階段の1番下を踏み固めるのが1番信用が生まれるんだよっていう話を若手にはしています。わらしべ長者みたいな感じでしか、成功って手に入れられないはずなんです。

STAGE編集部:ちょっとずつ進む方が良いということですか。

佐渡島さん:ちょっとずつ変わっていくんですよ。そこに対してみんな常に魔法を求めているというか。魔法はないと思って地味なことをやっている人が成功してるなって思いますね。

STAGE編集部:佐渡島さんは、他人から見たら地味なことをコツコツやってるタイプに見えないと思うんですよね。魔法を持っているタイプに見えていると思います。

佐渡島さん:地味ですよ。編集って仕事は地味ですから。
でも、違うジャンルになると何か魔法の方法があるんじゃないかって思いがちですよね。僕も会社を立ち上げたばかりの頃はそうでした。経営の「地道の概要」が何かが分からなかったというべきかもしれないですけど。編集なら、その作品を当てるっていうことの地道ってこれだなっていうのがわかっていてできるんだけど、経営の地道って何なんだろうっていうのが。
でも結局、どの道も地道にコツコツしかない。
1年ぐらい前まで経営の地道は、地道に売り上げを立てるだと思ってたんです。でも、最近は地道に社員と交流することじゃないかって思っています。
魔法の言葉を言って社員に働いてもらうんじゃなくて、地道に1on1かをやったり延々と話して、どうやったら社員がやる気になるかな?ってことばかりしています。

STAGE編集部:経営者として6年目、経験を積んで変わったところでしょうか。

佐渡島さん:そうですね。最初の1年間ぐらいは、会社の理念とか行動指針をずっと考えてたんですよ。ずっともんもんとしているという期間が終わってから、理念に沿って社員とコミュニケーション することが最重要になりました。指針がない中で社員とコミュニケーション しても拡散しすぎて、コミュニケーション 量がいくらあっても足りなくなってしまうと思います。結局、社員に働いてもらえる時間は月160時間×社員人数分になるわけじゃないですか。そのほとんどの時間、95%ぐらいの時間に関しては指示を出せないわけです。その状況で、どれだけアウトプット量が高まるのかっていうことを考えた結果、正しい理念と行動指針をもとに、2週間に1回、30分程度コミュニケーションするっていうものしかないんじゃないかなと思ったということですね。

STAGE編集部:最後に佐渡島さんにとってお金とは、をお聞きしてよろしいでしょうか?

佐渡島さん:「お金とは、信用の不安定な可視化」ですね。お金は信用を可視化したものではあるけれども、変換時のロスも大きいので。宇宙に気軽に行けるような未来には、信用をそのまま可視化できる手段ができると思います。

STAGE編集部:ありがとうございました。

佐渡島庸平さんに「宇宙とお金」をテーマに伺ったインタビューでしたが、最終的に「信用」を作る話になりました。未来に進むほど「信用」はクリアに可視化され、「お金」より「信用」そのものが、ますます重要なキーワードになってゆきそうですね。

佐渡島 庸平(さどしま・ようへい)

1979年生まれ。東京大学を卒業、2002年に講談社に入社。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。安野モヨコ、小山宙哉、曽田正人、三田紀房、羽賀翔一、平野啓一郎作品の編集・プロデュースを行う。

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