価値観が多様化と金融世界の変化
本書は、分析の対象を次世代金融産業に移し、同産業における戦いの構図を分析し、主要各社の戦略を読み解き、関連するテクノロジーを開設し、日本の活路について考察しました。
10ページより引用
立教大学ビジネススクール教授であり、株式会社マージングポイント代表取締役社長を務めている著者。シカゴ大学経営大学院MBAを経て、三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役等など、さまざまな場で要職を歴任してきました。
本著では、世界の3大金融ディスラプター(既存の業界秩序をくつがえす「破壊者」の意)企業として、アマゾン、アリババ、テンセントを、日本の金融ディスラプター企業として、楽天、LINE、ヤフー・ソフトバンク連合、SBIを。進化が進む米国金融機関として、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、日本のメガバンク3行、シンガポールのDBS銀行などを取り上げ、その競争戦略について分析しています。
いくつものキャリアをこなす人が増え、会社の名前や肩書きよりも、自分のあり方やライフスタイルが重要になってきています。その流れは、これからさらに加速することでしょう。
社会の中で、人が一人で生きていくために最も大事なことは信頼であり、お金はそれを円滑にするための手段であると著者はいいます。
個人のライフ&ワークスタイルや信頼という価値が評価される、新たな金融システムの構築は最重要課題であるといえるでしょう。
キャッシュレス化には3つの潮流がある
キャッシュレス化には3つの重要な潮流があります。それは、キャッシュレス化、無人化・自動化。シェアリング化・サービス化です。
26ページより引用
次世代金融産業に対する理解とは、ただ目新しい機能やサービスを追いかけることではないと著者はいいます。それによって与えられる価値観が大事なのであり、キャッシュレス化は大きな意味があるといえそうです。
3つの重要な潮流として、キャッシュレス化、無人化・自動化、シェアリング化・サービス化があるのだとか。
少子高齢化が進み、今後ますます人手不足が進むうえで、自動化による無人化は必須でしょう。また、大切なものはシェアリングして、シンプルにミニマムに過ごすという考え方も、価値観に通じます。そして、自動化・無人化、シェアリングは、すべてキャッシュレス化ありきのサービスであるといえるでしょう。
これから、すべてのサービスはこの3つのキーワードを軸に変化していくということを、私たちは知っておかなくてはなりません。
新たな金融システムとしての「金融4.0」
著者は、新たな金融システムとして「金融4.0」という概念を提唱しています。
「金融4.0」とは、「新たな社会における、新たな価値や価値観を表彰する、新たな金融システム」であるのだとか。対面型であった「金融1.0」、インターネットが使われるようになった「金融2.0」、スマホ中心でアリババなどの中国勢がリードし進化している「金融3.0」。そして、ブロックチェーンがフル活用され、新たな評価経済のインフラとなるものを「金融4.0」ととらえるのだといいます。
「金融4.0」では、資産やリスクの定義、金融や金融商品の定義が変わってきます。金融の対象となる資産は広がり、金融商品も一人ひとりのニーズに合致したものが提供されるようになるでしょう。
日本が「金融4.0」で進めていくべきことは、今まで信用と認められてこなかったもの……その人ならではの強みや信頼を新たな信用としていくということ。勤務先や年収だけではなく、その人が本当に持っている信頼が重視され、評価される社会。新たな金融テクノロジーは、人が本来大切にしてきた価値観や価値で生きることを支援するために使われるべきであるといいます。
多様性や個性を活かすことができる、新たな分散型金融システムが日本から生まれるのも遠くないのかもしれません。
タイトル:アマゾン銀行が誕生する日
著者:田中道昭
発行:日経BP社
定価:1,800円(税抜)