2018年11月29日 更新

ブロックチェーンが変える⾦融の世界

ブロックチェーンについて、どのくらいあなたは知っていますか? これからの人生、いや人間のあ り方を変えてしまうかもしれないといわれる技術、ブロックチェーン。 著書「ブロックチェーン革命」 にて、ブロックチェーンによって変わる世界を先駆けて示唆した野口悠紀雄氏の基調講演をお届 けします。(FLOC ブロックチェーン大学校イベント基調講演より)

2018.11.21

「信頼が必要ない」トラストレス社会の実現

お互いに信頼できない⼈が集まって、信頼が必要な事業をできるのか? この問題はコンピュータサイエンスの難問でした。そしてつい最近まで答えが無いと思われていたんです。
しかし、ブロックチェーンがそれに対して解を提供しました。

これは、⾮常に偉⼤な進歩なんです。信頼しない⼈達が集まって、信頼が必要な事業ができるようになったということです。

ブロックチェーンのマイナー達はどこの誰かわからないのです。悪⼈がいるかもしれない。
どこの誰かわからない⼈達が集まって、通貨という⾮常に信頼が必要な事業が運営できたのです。ブロックチェーンは10 年くらい前に作られ、ビットコインがその技術によって運営されるようになりました。それ以来⼀度も事故を起こしたことはありません。マウントゴックス事件とか、コインチェック事件、あれはブロックチェーンの事故ではありません。ブロックチェーンの外にある取引所が起こした事故であり、ブロックチェーンそのものは事故を起こしていません。

ビットコインの成功によってブロックチェーンは実際に機能するということが証明されました。信頼できない⼈達が集まって社会を形成できる。これは我々の今までの常識を打ち破るものです。これをトラストレスな社会といいます。変な⾔葉ですが、トラストレスというのは信頼が必要ない社会ということです。相⼿を信頼しなくても形成できる社会です。

これによって、まず明らかになったことは、巨⼤組織の優位性が無くなったということです。

なぜ、これまで巨⼤組織が重要だったか、いろいろな理由があるのですが、そのうち⼀番⼤きなことは信頼できることです。悪いことをしないですよ、と。例えばいままでの通貨は、中央銀⾏や銀⾏が運営していました。銀⾏も中央銀⾏も、⼤きな組織で⽴派な建物を持っています。いわば王様です。王様だから悪いことをしない、だから通貨は信頼できるとみんな思っていたわけです。運営している組織が巨⼤だから信頼したんです。だから巨⼤な組織が優位でした。

そういう社会が今⼤きく変わろうとしています。ブロクチェーンが社会の基本的な構造を変える可能性があります。

以上がブロックチェーンの原理的なことです。これからそれらがどのように使われているのかということをお話しします。

仮想通貨により銀⾏もプライベートもなくなる?

ブロックチェーンがまず最初に使われたのはビットコインのような仮想通貨でした。図の左側の緑⾊の枠に書いてあるのがそれです。その後、ビットコインと同じような仮想通貨が沢⼭作られて、現在では1000種類以上の仮想通貨ができました。仮想通貨はそれだけではありません。

図の右側に、「メガバンクの仮想通貨」とあります。これは⽇本のメガバンクがブロックチェーンを⽤いて仮想通貨を作ろうという計画を持っているということです。まだ実現していませんが、数年後に、実際に我々が使えるものとして登場する可能性があります。

それだけではありません。「中央銀⾏の仮想通貨」の計画があります。これもまだ計画されているだけで、実現はしていませんが、スウェーデンの中央銀⾏リスクバンク、イギリスの中央銀⾏イングランド銀⾏、中国の中央銀⾏が独⾃の仮想通貨を発⾏するということを考えています。

中央銀⾏が仮想通貨を発⾏すると社会の仕組みは⾮常に⼤きく変わると予想されています。
⾮常に⼤きく変わるどころか、社会ひっくり返る可能性があるんです。

まず、銀⾏の預⾦が無くなる可能性があります。中央銀⾏が仮想通貨を発⾏すると、全ての決済と送⾦はそれが⽤いられます。我々が今銀⾏に預⾦を持っている⼤きな理由は預⾦の⼝座振替、つまり送⾦するということが⽬的ですが、それが必要なくなります。ですから、銀⾏の預⾦が消滅する可能性があるのです。ということは銀⾏が消滅する可能性があるということです。これはとんでもなく⼤きな変化です。

もう1つの問題は、中央銀⾏が仮想通貨を発⾏することになると、中央銀⾏はありとあらゆる経済取引を細⼤漏らさず把握でてしまうことです。誰が何を買った、何を取引したということを細⼤漏らさず把握できるようになります。プライバシーがゼロになるような恐ろしい社会です。ただ中国では実現してしまう可能性もあります。

【ICO】ブロックチェーンによる新しい資⾦調達の形

ブロックチェーンはどのように利⽤されているかの話をしましょう。まず⾦融に限ってみてみます。「通貨」の次にブロックチェーンの利⽤が進んでいるのが「資⾦調達」です。

ある事業主体がブロックチェーンを⽤いた事業を将来やるという計画をもっていたとします。
その事業の提供するサービスを利⽤するためにそのサービスの中だけで利⽤できる仮想通貨が使われます。その通貨を「トークン」というのですが、将来サービスが提供されるようになれば、その料⾦を⽀払うためにトークンが必要になります。そのトークンを、事業開始前から売り出そうというものです。それをICO、イニシャルコインオファリング(Initialcoin offering)といいます。

その事業は開始されていないので、今そのトークンは無価値ですが、将来は価値が出るだろうとみんなが信頼すれば今のうちに買います。それによってその事業主体は資⾦を調達することができるのです。これがICOの仕組みです。

これまで特にIT関係のスタートアップ企業が資⾦調達をするときに使われていた⽅法は、最初にベンチャーキャピタルが出資し、事業がある程度の段階になればIPOということを⾏っていました。IPOとはイニシャルパブリックオファリング(initial public offering)。
つまり未公開の株式を売り出す、それによって資⾦を調達するという⽅法です。

いまあるIT企業はほとんどその⽅式で資⾦調達をしてきました。グーグルもフェイスブックもです。これに代わる⽅法としてICOが登場したということです。これは数年前から実際に⾏われ、短期間で資⾦を調達できるということで、新しい資⾦調達の⽅法として⼤変関⼼を呼びました。

ところが、2017 年夏頃、怪しげなプロジェクトがICO に参⼊しはじめました。本当に成功するかどうかわからないような事業が、コインだけ売り出すのです。2017 年の夏ごろは仮想通貨が⼀般的にバブル的な状況でしたから、コインを出せば値上がりするという状況でした。怪しげなプロジェクトによるICOが⾮常に多数登場したために、各国の政府は問題視をして、中国ではこれを禁⽌しました。⽇本ではまだ禁⽌されていません。

ICOは新しい資⾦調達の⽅法です。今の仕組みでは詐欺的なプロジェクトが迷い込んでくる可能性が⾮常に強いのですが、今後これをどのように育てていくかというのが重要な課題です。
つまり、ブロックチェーンは資⾦調達の⽅法として使えるということです。

⾦融の世界はいま激変期を迎えている

もう1つは「保険」です。
P2P保険とか、パラメトリック保険とかいう新しいタイプの保険が提案されています。P2P保険とは、友達が集まって、友達で保険をやろうということです。それをブロックチェ ーンで運営します。保険会社無しで保険を提供するのです。パラメトリック保険とは、事故が起きたらすぐに保険⾦を払うものです。ブロックチェーンで運営することによってそう いう保険が成⽴する。すでに実際のサービスが提供されています。

次に「証券」です。現在、株式や国際取引は、決済と精算に⻑い時間がかかっています。3⽇かかります。それが、精算と決算にブロックチェーンを⽤いることによって時間を短縮化 できると考えられています。すでにアメリカのナスダックや、⽇本で実験が⾏われて成功しています。将来、証券の世界にブロックチェーンが⼊り込んでくると考えられます。

⾦融の世界では、数字を使っていろいろな処理をするので、ブロックチェーンとは元々相性が良いのです。ですから、ブロックチェーンがまず変えるのは⾦融の世界というわけです。


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〈次の更新は11月28日(水)の予定です〉







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