女性天皇として知られる持統天皇の有名な歌
(春も過ぎ、夏がやってきたらしい。真っ白な衣が天の香具山に干してあるのを見ると。)
この歌には諸説あるのですが、新緑と青空のなか、白い衣が風になびくその情景はまさに夏の到来を告げる情緒あふれるシーンを思い浮かばせるもの。初夏にぜひ詠んでみたい歌のひとつです。
夏の恋の歌といえばこの一首
(夏の野の草が茂っているなかに咲く姫百合のように、思う人に知られることなく恋焦がれているのは辛いものです。)
彼女は大伴旅人の異母妹であり、万葉集の編者とされている大伴家持の叔母・姑でもあります。恋多き万葉女流歌人として知られています。
柿本人麻呂が妻を思い詠んだ歌
(夏の野を行く牡鹿の角のように、ほんの短い束の間さえも、私は妻のことを忘れることはありません。)
柿本人麻呂は飛鳥時代の歌人として著名ですが、妻への思いを詠んだ歌も数多く残っています。今でいうところの「愛妻家」だったのでしょうか。人麻呂については詳細な資料があまり残っておらず、その出自は不明な部分も多いです。しかし奥様に対する思いは、束の間さえも忘れることのない深いものだったのがよくわかる歌といえるでしょう。
今も昔も夏の季節には「ウナギ」??
(私、石麻呂さんに申し上げます。夏痩せにいいといいますので、鰻をとって召し上がってください。)
しかし、万葉の歌では「夏痩せ」に鰻がいいとされ、当時も夏に鰻を食べていたことがうかがえます。歌のなかの石麻呂さんは、大伴家持の友人、吉田連老(よしだの・むらじ・おゆ)のこと。ユーモアに富んだ歌ですね。
山部赤人が詠んだ望郷の傑作
(波を避けて島々の間をこいでくると、熊野の船が大和のほうへ上っていく。羨ましいことよ。)
望郷の思いがあふれる一首として知られています。
古きよき日本の夏をイメージして詠んでみて
暑い夏も、風情ある心地よい季節に感じられることでしょう。
参照:池澤夏樹,『日本文学全集02』河出書房,2015年より、折口信夫『口訳万葉集』
参照:万葉集 https://ja.wikisource.org/wiki/%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86
参照:万葉集 (鹿持雅澄訓訂) https://ja.wikisource.org/wiki/%E4%B8%87%E8%91%89%E9%9B%86_(%E9%B
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