20代、30代で早期リタイアする「FIRE」族
日本人は「現役バリバリの年齢でやめるなんてもったいない」「子どもがまだ小さいのにこれからどうするのだ」と思いそうですが、彼ら「FIRE族」は、将来の生活設計もしたたかに計算した上で、リタイアしています。
FIRE族はIT起業家の株式上場や遺産相続で大金が転がり込んだわけではありません。親がかりでも、独り身でもありません。リタイアする前は共稼ぎの妻と子どもがいるような、ごくふつうの会社員でした。
FIREの生活設計の根底にある「4%ルール」
貯蓄がないと、早期リタイアはできません。アメリカでは、早期リタイアには年間支出の25倍(25年分)の貯金が必要と言われています。早期リタイアした年から貯金を毎年4%ずつ引き出しても、25年後、100%に達して底をつくわけではありません。その間に得られる金融収入(預金や債券の利子、株式の配当、投資信託の分配金などのインカムゲイン)で補われて、95%以上の人は生涯を終えるまでに貯金が底をつくことはないという理論があります。それを「4%ルール(Safe Withdrawal Rate)」と言い、1998年にテキサス州にあるトリニティ大学の先生方が編み出した、レッキとした金融理論です。
4%分の年間支出が6万ドル(654万円)なら150万ドル(1億6,350万円)の貯金が必要になりますが、2.4万ドルなら60万ドル(6,540万円)の貯金があればいいことになります(※1米ドル=109円で計算)。
さて、一家が年間2.4万ドル(262万円)で暮らせるのでしょうか? 家賃も物価も安くて暮らしやすい場所を選んで住み、節約に努めれば、それで暮らせるのがアメリカです。そう紹介すると「そんなカツカツの暮らしはイヤだ」と思う人もいるでしょうが、それはその人の価値観の問題です。FIRE族は口を揃えて「欲しいのは、カネのために働かなくてもいい自由。ぜいたくをするつもりなど全くない」と言います。
もちろん生活の「断捨離」をやり尽くすのはつらい、クルマは持ちたいなどそれぞれの事情に合わせて、準備する貯蓄額を増やす、リタイア後の収入の道を探るなどの軌道修正を加えています。みんながみんなメディアで紹介されるモデルケース通りではありません。
高収入で、早期リタイアに十分な貯金はできても、激しい競争社会でいつリストラされるかわからないウォール街出身のFIRE族は少なくないようで、ニューヨークから離れた田舎に転居し住居費を下げることを「アービトラージ(arbitrage)」と言ったりします。これは金融市場でデリバティブ商品の価格差によって利益を出す「さや取り」を指す金融用語で、ちょっとした遊び心が感じられます。
西部開拓時代の「大草原の小さな家」の精神
◆ 豊かな人生を送るために必要な「お金の知識」を身につけたい方はこちら
(参考URL)
https://www.gizmodo.jp/2018/11/fire-movement.html
https://fireinjapan.com/2019/04/09/what-is-fire-movement/
https://courrier.jp/news/archives/148096/