ライフログサービス「LIFEmee」で独立起業
決済サービス企業「Omise(オミセ)」を創業し、その代表を務める長谷川潤氏は1981年生まれの37歳。神奈川県川崎市の出身です。高校生卒業後、1999年にアメリカに留学。そのままフリーランスのデザイナー、システム開発者としてアメリカで仕事をしました。
日本に帰国すると広告代理店に勤務し、大手通信会社のシステム開発や広告デザインなどを手がけた後、「ライフログサービス」の開発に着手します。ライフログは、個人の日常の生活や行動、体験を映像や音声などデジタルデータとして記録(ログ)していくものです。長谷川氏は2008年に独立して「LIFEmee Inc.」を東京で創業しました。
人生をゆりかごから墓場までオンラインで記録する「LIFEmee」は、フェイスブックより早い時期に「タイムライン」機能を搭載。アメリカのITニュースサイトTechcrunch主催のイベント「Techcrunch50 2009」でファイナリストに残るほど高い評価を得ています。
ライフログサービスに続き日本でクーポンサービスの開発を手がけましたが、これは起業することなく大手カフェチェーンに売却するという「エグジット」を選択しています。
日本でなくタイで「Omise」を起業した理由
そんな長谷川氏ですが、2013年にタイの首都バンコクを拠点に「Omise Co.,Ltd.」を創業しました。なぜ日本ではなく東南アジアのタイでスタートアップしたのでしょうか。それについて長谷川氏はこう言っています。
「理由は簡単で、東南アジアはこれからますます伸びていくと感じたからです」
とはいえ、親しい人には「自分に日本での起業は向いてない」ともらしていたようです。
長谷川氏はタイとは不思議に縁がありました。Omiseの共同創業者Ezra Don Harinsut(Donne)氏とはアメリカ留学時代に知りあいましたが、彼はタイ出身で、タイとニュージーランドのハーフです。また、独立・起業前からタイとはビジネス上で関わりがあり、その経験や知識、個人的なコネクションがありました。そのため、「これから東南アジアの時代がくる!」と日本と全く異なる環境でビジネスを始めても、それほど不安ではなかったといいます。
Omiseは決済サービスを提供する、今で言う「フィンテック」企業で、タイ、シンガポール、インドネシア、日本でオンライン決済プラットフォーム「Omise Payment」を展開しています。2017年に「デジタル・スタートアップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞してタイ政府から表彰され、今やタイで最も有名なスタートアップ企業です。
時代を先取りし、タイやインドネシアの財閥から出資を受け資金調達も順調ですが、そうなるまで何度も苦しい思いをしたそうで、病院に6回も担ぎ込まれたと長谷川氏は話しています。異国での起業には、やはりそれなりの苦労があったようです。
2017年に仮想通貨「OmiseGO」を発行
Omiseのビジネスは2017年7月、決済サービスのための仮想通貨「OmiseGO」をICO(新規発行)して約2,500万ドルを調達したことで、新たなステージに入りました。OmiseGOは、銀行より安い手数料で瞬時に送金決済ができるのが売り物です。
長谷川氏は仮想通貨の基本技術「ブロックチェーン」「スマートコントラクト」の将来性に惚れ込み、自ら仮想通貨の発行を目指します。そして「ビットコイン」に次ぐ流通量世界第2位で、仮想通貨の事実上の世界標準規格「ERC20」を装備する「イーサリアム」を弱冠19歳で開発し、共同創業者に名を連ねる天才技術者Vitalik Buterin氏を口説き落とし、OmiseGOのアドバイザーに迎えました。これでOmiseGOと長谷川潤氏の世界的な知名度が高まりました。
2015年にイーサリアム財団に参加した長谷川氏はブロックチェーン、イーサリアムの技術を「自分の全てを賭けられるもの」だと言っています。2018年12月7日にはブロックチェーン関連の新会社「BUIDL(ビルド)」を東京で設立しています。
18歳で日本を飛び出してアメリカで学び、タイでも起業して世界に飛躍した長谷川氏ですが、母国日本への恩返しも忘れてはいません。OmiseGOはコワーキングスペース「ニュートリノ」を全世界で展開していますが、東京の渋谷にも拠点があり、日本発のスタートアップを支援しています。
参考URL:
https://forbesjapan.com/articles/detail/18638
https://earthkey.co.jp/interviews/7
https://omisego.love/omise-hasegawa-career/
https://newspicks.com/news/2975451/
https://thebridge.jp/2018/12/buidl