ありがとうの基準
小さな子供がバスを降りる時に、運転手さんに「ありがとう」という光景を見たことは何度もあります。 偉いなとは思うけれど続く大人が「ありがとう」と言って降りて行くのは見たことがないし、私も言わない。
他にも乗客がいるのでお世話をかけているのは私だけではないってこともあるのだろうけれど、目的地に到着するのが当然であるからかもしれません。「ありがとう」を意識したことはありませんでした。
一方、自分や家族が病気になった時には、治療してくれた医師や看護師さんには「ありがとうございます」と必ず言います。
それはお世話になったという気持ちがあるから、「ありがとう」は感謝の気持ちの表れだったのです。
ありがとうは挨拶がわり
その考えが変われたのは、うちの息子。と出かけると行く先々で「ありがとう」を口にするのです。「そんな事くらいでお礼言うの?」と思わず聞いてしまったのです。
すると「そうやで。コンビニのレジでも毎回ありがとう!というで」「ありがとう!と言われて気分悪くなる奴おらんやろう」と言われ、なるほどと感心したのです。
それから私は息子を真似て「ありがとう!」を心がけ、いつの間にか習慣になったのです。
スーパーのレジや、タクシーの運転手さん、銀行窓口。 あらゆる業種の店員さん、出あう人と最後の言葉は笑顔で「ありがとう」です。もはや、挨拶。
嫌な気持ちもリセットできる
随分前のこと、書類のトラブルで仕事中に役所に行かねばならなくなりました。係りの人に「あほか!」とキレたくなる気持ちを何とか落ち着かせ、書類にサインをし終えました。
先方が謝りながらの別れ際、私の口から出た言葉も、やはり「ありがとう。宜しくお願いします。」でした。
そこには感謝の気持ちはありませんが、お互い嫌な気持ちをリセットするには「ありがとう」は効果を発揮し、心の流れをよくしました。
言葉の不一致を気にしない
以前勤めていた会社では、ほんのちょっとした事でも「ありがとうございます」を使う雰囲気がありました。当時、少しの違和感を感じつつ新米の私は郷に入れば郷に従えで取り組んでいました。
ある時、若い同僚が責任者の女性に「ありがとうございます」と言うと「今のは、ありがとうとは適切じゃないわ」「なんでも言うたらいいってもんちゃうで」と注意をされたのです。
たしかに場合によっては別の言葉が適していることもあるでしょう。しかし、誰しも気分が良くなる言葉に使い方に一致性が必要かしらと思ったのです。
「ありがとう」で心が丸くなればいいなぁと思いました。
笑顔と言葉の効果
ある日のこと。デパ地下を通りぬけしようとそそくさと通路を通ると、その脇にレジ袋を下げた若い娘さんが立っており、前を通り過ぎようとしました。やわら、袋を差し出され
「〇〇〇ビールです。どうぞ」と渡されました。中を見ると小さな缶ビールの試供品
「〇〇〇!キャーありがとう」喜ぶと、ニコニコしながら「良かったらもう1本どうぞ」と2本入れてくれました。
おまけのサービスには驚きましたが、街角で配られているティッシュを受取るように愛想がなければ、おまけのビールはなかったはず。
小さな事ですが「ありがとう」の効果は大きいです。若い娘さんと私は笑顔でお別れしました。
言っても言われても気持ちのいい「ありがとう」には、もうひとつ心がけていることがあります。誰かに何かをしてもらったり、助けてもらったりしたら、その場で「ありがとう」と言いますが、次の日、お礼を述べたり具体的な感想を伝えたりします。
会えない相手にはラインや電話をかけるように。相手はそんなことを期待はしていないだろうけれど、それが人との更に良い関係を作ることかなって思っています。