『生き方』にこだわる経営の神様。稲盛和夫氏の名言を人生に役立てよう!

カルチャー
京セラの創業者で現在名誉会長を務める稲盛和夫氏による代表的な著書『生き方』。稲盛氏と言えば京セラ、KDDIを創業。会社更生法を申請するまでの経営不振に陥ったJALをドン底からわずか2年で営業利益2,000億円まで回復させた経営手腕はもはや伝説となっています。
2018.11.16
そんな稲盛氏が信条とする言葉や考え方をまとめたのが本書。2018年現在、日本で120万部を突破しただけでなく海外13か国で翻訳され、なんと中国では日本よりも多い150万部の大ヒットを記録しています。初版が世に送り出されてからおよそ10年ですが、数多くの著名人や経営者が愛読書に推薦しており、これからも読み継がれるロング・ベストセラーになるでしょう。
「人間として一番大切なこと」というシンプルな人生のテーマを掲げることで迷いを捨て、数々の危機を乗り越えてきた稲盛氏の哲学とは?今回は特に印象的だった言葉をピックアップしてみました。

「単純な原理原則が揺るぎない指針となる。」

世間には高い能力を持ちながら、心が伴わないために道を誤る人が多く、経営の世界でも自己中心的な考えから不祥事を起こす人さえいます。才能があっても、それを正しく活用する「指針=哲学」を持たなければいけないというわけです。
稲盛氏は27歳で京セラを立ち上げましたが、当時は知識も経験も無かったという事情もあり、自分が守るべきことを「嘘をついてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない…自分のことばかり考えてはいけない」など、シンプルなものに決めました。しかし、シンプルゆえに筋の通った原理に沿って経営することができ事業を成功へと導くことができたのだと言います。
稲盛氏が自身の成功に理由を求めるとするならば、その力強い指針に従った事。それに尽きるのかもしれないと振り返っています。

「現実になる姿を“カラーで”見えているか」

科学的ではないと認めつつ、思いを実現させるための母体は「強烈な願望である」と言い切る稲盛氏。ああなったらいい、という結末が「見えてくる」までそのプロセスをイメージし、将棋の差し手を何万通りも考えるように何度もシミュレーションを繰り返すことが必要であると言います。
しかし、それが白黒で見えているうちは不十分。より現実に近く“カラーで見えてくる”その瞬間までイメージを濃縮することが重要なのだとか。
仕事において、とかく求められる水準や性能などの必要条件をクリアすることを目標にしてしまいがちですが、それでは人々の心を打つには不十分。最初に考え抜いて「見えた」理想とする水準に達することで成功により近づけるのです。自分は相手の要求に応えているのになぜか評価されないと感じている人は、一度「自分の理想とするイメージの仕事ができているか?」たち返って考えてみるのもいいかもしれません。

「人を惑わせる三毒をいかに断ち切るか?」

仏教では「欲望」「愚痴」「怒り」を三毒と呼び、お釈迦さま曰く、これこそが「人生をダメにする」要素なのだそうです。しかもこの毒素は、人間の心に絡みついて離れない、逃れようとしても逃れることができない厄介なもの。簡単に「断ち切れば人生がうまくいきます」とはいきません。
ですが、この「三毒」の存在を認め、完全に消すことは出来なくてもコントロールして抑制しようと努めることには大きな意味があります。何かを判断する際にも、最初の判断をいったん保留して「その思いには、おのれの欲が働いていないか、私心が混じっていないか」を自問するプロセスを設けることで理性に基づく判断が可能になるのです。
急に仏教の話が出てきましたが、実は稲盛氏は65歳で京セラの会長職を退任して出家をされています。例えば経営不振に陥ったJALの当時の雰囲気は、まさに「欲望」「愚痴」「怒り」が渦巻く環境だったのではと思いますが、これをコントロールする術を稲盛氏が知っていたからこそ的確なアドバイスができ、ピンチを潜り抜けられたのかもしれない。そんな想像が膨らむ話でした。

「利他に徹すれば、物事を見る視野も広がる」

利を求める心は事業や人間活動の原動力となるので「欲」はあっても良い。しかしその欲を自分のためだけにとどまらせるのではなく、人にもよかれという「大欲」をもって公益を図ることで、結果的に自分にも利益がめぐってくるのだと稲盛氏は指摘。
ただし、ここで気をつけなければならないのは利己と利他は裏腹の関係にあるということ。例えば、小さな範囲(自分の会社)における利益が、より大きな単位(取引先、ひいては業界全体)から見るとエゴになっている場合があるというのです。
そこで、自分の利益だけでなく家族、家族より地域、地域より社会、さらには国へと利他の心を広げてみると、おのずと広い視野を持つことができる。そうすることでいつの間にか客観的な正しい判断ができるようになり失敗も回避できるようになってくるのだといいます。
これは目からウロコの考え方。まさに器とスケールの大きな経営者らしいアドバイスだと実感しました。
自身の働き方、仕事のやりがいに悩んでいる人にとって指針となるようなアドバイスが2~3ページに1個出てくる印象。本書が今の時代にうけている理由がよく分かりました。