「投資ファンド」という言葉を聞くと、日本ではハゲタカもしくは詐欺のようなイメージを持つ人が多い。しかし実は私たちの周りには投資ファンドが数多く、極めて身近に存在している。
私たちに最も身近な投資ファンドがある。運用資産は約150兆円で日本の国家予算の約1.5倍もの資金を運用する世界最大の投資ファンドだ。2016年9月から12月の、たった3ヵ月間での収益は10兆5千億円、金利で計算すると3ヵ月で7.98%にも上る。この巨大投資ファンド、英語では「Government Pension Investment Fund」であり、通称GPIFと呼ばれる。そう、これは日本語でいうと私たちがよく知る「年金積立金管理運用独立行政法人」、私たちの厚生年金や国民年金を集めて運用している団体だ。私たちは厚生年金や国民年金を通じてこの世界最大の投資ファンドに、文字通りの「年金積立投資」をしている。そしてこの投資ファンドは量・質共に世界最大と言ってもよい規模を誇っている。「投資ファンド」というと自分たちとは遠い物の話だと思いがちだが、実は私たちは厚生年金や国民年金として日々投資ファンドに投資をしている。
私たちにさらに身近な所では「保険」もファンドで運用されている。私たちが加入している生命保険や損害保険、これも実態としては投資ファンドだ。実は、純粋な「保険」の部分、どの様な保険金を出す際にいくらの保険料が必要かについては、統計に基づいて厚生労働省が作成し公表しており、純粋な保険部分では保険会社は利益を出せない仕組みになっている。では保険会社は何で利益を出しているのか。実は保険会社、特に生命保険会社は保険商品を利用して資金を集めて投資をするビジネスモデル、つまり投資ファンドだ。例えば日本生命は信託口を除けば、三菱UFJフィナンシャルグループの筆頭株主だ。約60兆円を運用し、2015年3月期においては1兆7700億円近い運用収益を上げている民間最大の機関投資家だ。第一生命も同様のビジネスモデルで同時期に1兆2400億円近い運用収益を上げている。
「投資ファンド」というと私たちは遠い世界のように感じるが、年金や生命保険等、実は私たちの近くに存在しており、私たちも恩恵を受けている。私たちは日常において、さまざまな金融技術に囲まれている。次回についてはより身近な金融技術について述べたい。