大学や自治体が力を入れる「生涯学習」で自己投資 20代でも!

社会人が「自己投資」の勉強をしたい、資格を取りたいニーズは強く、特に英語と簿記は不動の人気があり、ワード・エクセルがそれに次ぎます。民間の教室の受講料負担の重さに二の足を踏んでいる人には、自治体や大学の「生涯学習センター」「公開講座」という選択肢もあります。

2019.2.12

自己投資として、こんなことを勉強したい

社会人になると、上司や先輩は「若いうちは自分に投資しろ」と言い、会社は「資格を取りなさい」「勉強しなさい」と奨励策を用意しています。業務知識を吸収して仕事に慣れるのと並行して、自己投資の勉強が求められていることを意識させられます。
『ケイコとマナブ.net』(リクルートマーケティングパートナーズ)の「学び事・習い事調査2017」によると、20~34歳の男性の「この1年に実施した学び事、習い事」のトップ10は英語、簿記、ワード・エクセル、フィットネスクラブ、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、ゴルフ、中国語、SE・プログラマ、フランス語の順でした。「今後やってみたい学び事、習い事」のトップ10は英語、ワード・エクセル、ファイナンシャルプランナー、簿記、中国語、ゴルフ、SE・プログラマ、WEBクリエイティブ、宅地建物取引士、社会保険労務士でした。
英語と簿記は不動の人気があり、語学では中国語も常に上位です。ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、社会保険労務士の資格を取りたい人も多いようです。IT系ではワード・エクセルは基本技能として、SE・プログラマ、WEBクリエイティブは取りたい資格として重視されています。

自己投資のための費用はこんなにかかる

20~34歳の男性に仕事や資格取得の目的でかけられる金額を聞くと、「気軽に始められる金額」は1万8222円、「始めるかどうか、しっかり考えてから決める金額」は3万633円という結果でした。「総額2万円以下なら始めやすいが、3万円、4万円ではちょっと考える」というところでしょうか。
社内で夜間講座を開講して格安の費用で利用できる企業、申し出れば社外の教室に支払う費用を最初から補助する企業もありますが、多くの企業は「資格が取れたら報奨金を出す」ような成功報酬型です。
その場合、当初の費用は自分でまかなわなければなりません。「できれば良い教室に通いたいが、費用が高すぎても困る」のではないでしょうか。
しかし現実は、人気の「英語」「簿記」の社会人向けの民間の教室(夜間通学制)の代表例では、受講料は次のようになっています。
●英語(英会話)
 ECC外語学院 8万3,200円
 ※少人数クラス・週1回6カ月(26回)
●簿記(日商簿記2級)
 大原学園グループ 8万4,400円
 ※3級から学ぶ2級合格コース(49回)
厚生労働大臣指定の教育訓練を終了すると支払った経費の20%がハローワークから支給される「教育訓練給付制度」がありますが、8掛けになっても「しっかり考えてから決める金額」の3万633円を2倍以上オーバーします。通信制やオンラインなら多少は安くなりますが、それでも負担は軽くありません。

大学や自治体の「生涯学習センター」では?

学びたい意欲があっても費用負担で二の足を踏んでいる人は、全国の大学や自治体が運営する社会人のための「生涯学習センター」「公開講座」も検討してはいかがでしょうか?
夜間に開講する一例を挙げます。
●英語(英会話)
 慶應義塾大学公開講座 3万円
 ※中級:単科B (12回)
●簿記(日商簿記2級)
 学習院大学生涯学習センター 4万6,440円
 ※初学者向け日商簿記2級ストレート講座(38回)
たとえば大阪府八尾市の生涯学習センター「かがやき」で夜間に開講する「ネイティブ講師と楽しく英会話」(初級~中級)の受講料は、15回で1万9,500円となっています。同センターは「ワード・エクセル」の講座も開講しています。ただし自治体の生涯学習センターの受講は原則、在住者または通勤・通学者に限られますので、地元の市区町村にお問い合わせください。
「生涯学習センターは高齢者ばかりではないのか?」と思うかもしれませんが、若い社会人も多く通っています。
「生涯学習センター」や「公開講座」は募集時期、開講時期が限られたり、講座のバリエーションが乏しい、人気講座はすぐ満員になる、設備で見劣りするといったデメリットもあります。「選択肢が多い」「小回りがきく」「日を変えられる、先生を変えられるなど自由がきく」は、民間の教室に分があります。
2018年6月、安倍内閣は「人づくり革命基本構想」をまとめ、その中に「リカレント教育(学びなおし/生涯学習)」を推進するとあります。国策の追い風が吹いていますから、リーズナブルな受講費用で自己投資の勉強ができる機会は、これから拡大しそうです。
寺尾淳(Jun Terao)

寺尾淳(Jun Terao)
本名同じ。経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、現在は「ビジネス+IT」(SBクリエイティブ)などネットメディアを中心に経済・経営、株式投資等に関する執筆活動を続けている。

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