ファンタスティックビーストも好調 JKローリングの逞しい商魂

経済

「ハリー・ポッター」シリーズに続き、新シリーズ2作目の映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』も大当たりのJKローリング。今回は彼女の人生を大逆転させた「ハリー・ポッター」の成功、そしてJKローリングの逞しい商魂について迫ります。

2018.12.27

「ハリー・ポッター」というビジネス

「ハリー・ポッター」シリーズの全7作は2007年に完結しました。しかし、JKローリングが展開する「ハリー・ポッター」ビジネスはますます繁栄しております。
今公開中の「ファンタスティック・ビースト」シリーズやミュージカル『ハリーポッターと呪いの子』では「ハリー・ポッター」と共に成長してきたファンの年齢層に合わせ、大人向けに趣向を凝らし、人気を集めているようです。
「魔法ワールド」がいつまでも人気なのは、このように、時の流れに沿って、ファンのニーズを満たす工夫が施されているからではないでしょうか。
ドイツに本社を置くマーケティング会社Statista GmbHが2018年11月に掲載した記事によると、
「ハリー・ポッター」ビジネスの世界売上は下記の通りでした。
Infographic: You're a Wizard at Making Money, Harry | Statista You will find more infographics at Statista
書籍売上部数     約5億部 突破
書籍売上金額     約77億ドル(約8,475億円)
映画シリーズ興行収入 約85億ドル(約9,355億円)*「ファンタビ」シリーズも含む
関連商品売上     約73億ドル(約8,034億円) (日本円表記は2018年12月25日時点) 
さらに、JKローリングのこだわりが込められた「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の導入がユニバーサル・スタジオ全体の来場数を36%も向上させるほどの大人気だという情報も付け加えています。
当然、これだけのビジネスとなればさすがに彼女の力だけではありません。出版社、エージェント、そしてワーナー・ブラザースなどビジネスパートナーの影響も大きいです。 しかし、発言権が優位なのはJKローリングです。

誰にも邪魔させない「ハリー・ポッター」の世界

JKローリングが優位な立場でいられるのは、もちろん、大作家であるということもありますが、それだけではありません。
JKローリングは商才に長けているという話題は海外メディアでよく取り上げられています。
JKローリングは1999年にワーナー・ブラザースと最初の作品の映画化権とその商品化権の契約を100万ドル (約1億円)で結びました。今考えればかなりの廉価です。
しかし、彼女の賢いところは、ワーナー・ブラザーズを相手に、作品イメージを守りたいと、原作を改変させない権利と、商品化に対する発言権を契約条件として付けていたのです (Colleen A. Sexton- J.K. Rowling Biography) 。
それによって、役者探しから脚本など、映画制作全てのステップに関わり、また、商品化についても過剰な宣伝はブランドを安っぽくすると厳しく制限をしているのだそうです。アメリカのビジネスメディア、Fast CompanyはJKローリングはワーナー・ブラザーズを完全にコントロールしているようだと指摘しています。
しかし、「ハリー・ポッター」の世界がどうあるべきか、ファンが何を望んでいるのかを一番よく知っているのはJKローリングです。
ワーナー・ブラザーズにとってはやや厄介なようですが、彼女のこだわりがここまで「ハリー・ポッター」ビジネスを成功させてきたことを考えれば仕方ないのかもしれません。

JKローリングの人生哲学が凝縮されたスピーチと名言

2008年のハーバード大学卒業式でJKローリングは「失敗がもたらす恩恵」と「想像力の重要性」という2つのテーマについて話しました。
どちらもとても感動的な内容です。特に興味深いのは「想像力の重要性」についてです。彼女は「想像力とは自分が経験していない他人の経験に共感する力でもあるのだ」と言いました。
彼女は国際人権擁護NGO、アムネスティ・インターナショナルのロンドン本部に勤務していた若い時、独裁政権の下で残虐行為を受け傷ついた人々に関わる経験をしました。
その経験を通し、自分が恵まれた環境にいることに気づき、感謝すると共に、不公平な立場にいる人々の辛い経験に同情し、助けるべく行動を起こすことの重要性を考えたと話しました。
そして、「世界を変えるのに魔法は必要ない、必要なのは我々が既に持っているこの想像力を使うことだ」とJKローリングの名言と言える一言を残しました。
彼女の尽きることのないアイデアは彼女の言うこの「想像力」が原点なのかもしれません。
シングルマザー、貧困というJKローリングの波乱な人生が彼女の想像力を豊かにし、商魂を逞しくしたのはではないでしょうか。彼女の成功は魔法の力によるものではありません。自力で築き上げた本物の成功です。
参考書籍: 「J.K.Rowling Biography」(2007) by Colleen A. Sexton
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
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