2020.1.11
使い捨てから卒業するサーキュラーエコノミーとSDGs
石油を原料にプラスティック製品を作り、使って廃棄した後、また別の石油を原料として製品を作るという例に見られる従来型の経済は、「一方通行型経済」と呼ばれています。対して、2010年代に推奨され始めたのが、使ったあとに何らかの形で再利用するという「循環型経済(サーキュラー・エコノミー)」です。
サーキュラー・エコノミーは、以下のようなSDGsの目標達成にも貢献します。
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
使えるものだけ再利用しようという現在の状況から一歩進み、なるべく一次資源の消費を抑えて現在の製品を再利用するなどの方法で徹底的に使い倒すモデルです。
サーキュラー・エコノミーの著者が示した5つのビジネスモデル
サーキュラー・エコノミーの具体的モデルを示した本に『Waste to Wealth The Circular Economy Advantage』があります。その5つのビジネスモデルを見てみましょう。
1.サーキュラー型サプライチェーンモデル
再生可能エネルギーや再生可能素材を開発し、製造業者に販売したり自社のオペレーションに使用したりするモデル
2.回収・リサイクル型ビジネスモデル
廃棄された製品から材料を取り出し、リサイクルやアップサイクルを通じて再加工するモデル
3.製品寿命延長モデル
5年以上の寿命をもつ製品の耐久性、品質、機能などを向上させ、製品寿命を延ばす、中古品を新品のような状態に復元する、リコマースを行う、容器に入っている中身を補充する、修理する等の方法で製品を徹底的に使ってもらうモデル
4.シェアリング・プラットフォーム型ビジネスモデル
シェアリング・エコノミーに関連し、インターネットをベースに製品の賃借・共有・交換・貸出・贈与・取引のマッチングを行って手数料を徴収するモデル
5.サービスとしての製品(PaaS)モデル
企業が製品を所有し、販売するのではなく顧客に製品を利用してもらうモデル。継続して利用してもらうために、メンテナンスや再利用、再生産などの附帯サービスも提供する
サーキュラー・エコノミーを実践するには、IoTやビッグデータ利用の重要性も強調されています。
日本企業は世界から取り残されている?
サーキュラー・エコノミーの事例は欧米諸国を中心に見られます。ウーバーやエアビーアンドビーは代表的なシェアリング・プラットフォーム型ですし、イケアは店舗屋上に設置したソーラーパネルで発電するサーキュラー型サプライチェーンモデルを実施。P&Gも回収・リサイクル型で製造を行っています。中国でも取り組みが始まっているとか。一方、日本企業ではこうした取り組みに遅れが見られます。
確かに、プラ代替素材として知られるLIMEX(ライメックス)を開発するTBMは、神奈川県と協力しLIMEXの普及と再利用の実証実験を行う一方、2019年9月に三菱鉛筆と提携してLIMEXシートを再利用したボールペン「uni LIMEX」を発売しました。王子製紙も、プラ代替素材としてマルチバリア紙を開発しています。
しかし、いずれもまだリサイクル可能製品としての普及も回収ルートも小規模で、循環しないまま廃棄される可能性が高い状況です。
サーキュラーエコノミー・ジャパンの活動
こうした状況を懸念し、一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパンが発足しました。サーキュラー・エコノミーに関する知見やアイデア、行動を結びつけ、日本経済を循環型へ円滑に移行させるためのプラットフォームです。
9月12日に開催された設立記念カンファレンスは満員。代表によるサーキュラー・エコノミーの解説の他、環境省大臣官房による「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」の解説も行われました。
これからは循環型が企業を成長させる
資源の枯渇が現実的となり、経済モデルの大きな転換が必要となったこの時代。環境負荷を減らしながら経済を衰退させないためには、「使って捨てる」「使えるものだけ再利用」という姿勢からさらに一歩、二歩と踏み出さなければなりません。
【参考】
サーキュラーエコノミー・ジャパン 公式サイト、http://www.circulareconomy-japan.com/
ピーター・レイシー&ヤコブ・ルトクヴィスト(2019)『新装版 サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』、アクセンチュア・ストラテジー訳、日本経済新聞出版社
LIMEX 公式サイト、https://tb-m.com/limex/
王子ホールディングス「環境対応素材開発の取り組み」、https://www.ojiholdings.co.jp/environment/business_r_d/