ちなみに、2017年11月に就任が内定して以降の数ヶ月、市場を取り巻くコンセンサスは、
・世界経済の成長には力強さが見られるため2018年以降も当面株式市場は安泰
・この好景気の中でもインフレ率は依然低くく金融政策は引き続き緩和的
・この好景気の中でもインフレ率は依然低くく金融政策は引き続き緩和的
として、一部ではインフレを問題視する向きがあるなかで「ゴルディロックス(適温相場)」を大満喫していました。「三匹の熊」になぞらえて、株式市場とおかゆは適温が良いといったところでしょうか。
さて、このような環境下で起こった株価の急変。市場関係者は改めて新議長の舵取り手腕に注目し就任を迎えました。そして、議長の本当のスタンスが明確になる、初めての米議会下院の金融サービス委員会における議会証言が2月27日に開催されました。誰もが彼の発言に注目していましたが、結果は予想よりあきらかにタカ派(景気への配慮よりインフレに対して戦うインフレファイター)でした。この日を堺にパウエル議長はややタカ派であると市場は認識をするようになりました。
この議会証言内におけるパウエル議長のタカ派的な主な発言は以下の通り。
・このところのボラティリティーは懸念していない
・短期的な株式相場の動向はFRBがとりわけ集中するものではない
・2%のインフレ目標は市場が予想するよりも早く達成できる見通しだ
・短期的な株式相場の動向はFRBがとりわけ集中するものではない
・2%のインフレ目標は市場が予想するよりも早く達成できる見通しだ
この発言で、
・バーナンキやイエレン元議長のように株式市場の動向に注視するとは限らない
・市場がまだ織り込んでいない利上げに対する意識が強い
・バーナンキやイエレン元議長のように株式市場の動向に注視するとは限らない
・市場がまだ織り込んでいない利上げに対する意識が強い
と市場は判断し株式市場には軽いショックが走りました。その結界、3月から4月上旬の約1ヶ月で10%近い株安を招くことになりました。
2019年もパウエル議長はタカ派なのか
このようにパウエル議長が株式市場に登場して約1年。タカ派としての地位を着々と歩んでいますが、2019年の同じ様にこの方針を維持するのでしょうか。
私は、パウエル議長の心の内を図るには、米国の11月CPIの発表とその数日後のFOMCに注目しています。最近の米国のCPI、つまり消費者物価指数は、2%〜3%のレンジにおさまっており物価の上昇は緩やかに継続しています。もともとインフレに対して強い関心を持つパウエル議長ですが、米中貿易戦争が加熱化しているここ数ヶ月は神経質に物価上昇を確認しているはずです。その結果を受けてどのように政策判断を行うのか、すごく興味があります。
12月中旬に発表予定の11月CPIの結果が3%近辺になれば、12月18日・19日開催予定のFOMCでは大方の予定通り利上げがおこなわれるのではないかと思われています。この判断により、パウエル議長の2019年の方針がタカ派であるかどうかという判断は残念ながら出来ませんが、一方で、トランプ大統領には屈しないセントラルバンカーとして決意が確認できるはずです。つまり、2019年も政府の要望よりも中央銀行としての正しい判断を優先し貫くこというメッセージを市場に発信することになります。
一方、CPIの結果が3%近辺であったにもかかわらず利上げを見送った場合、市場はかなり驚きの反応をするのはないかと思います。それは、利上げの見送り理由が、1)トランプ政権への忖度、2)インフレより株価動向への配慮、と思われるからです。つまり、2019年はタカ派ではなく中道穏健派として政策運営を行うと市場に対してメッセージを発信することになります。
このように12月のCPIとFOMCにて2019年のパウエル議長のメッセージ、つまり「どんな顔」で運営するかを知ることができます。投資家にとっては少し早めのクリスマスプレゼントになるかもしれません。2019年の大きな方向性を示す可能性がある大きなイベント、注目です。