2017年9月12日 更新

クリスマスパーティーのワインから経済がみえる

大人のパーティーにはもはや欠かせないワイン。ワインを楽しむことは、人生を楽しむことと似ています。

2015.12.14
すっかり街はクリスマスモード。定番のクリスマスソング、クリスマスツリーで街は賑わい、サンタさんからのプレゼントで子供たちは笑顔、クリスマスは年齢問わず関わりの深いイベントです。

さて、40歳代の私にとってのクリスマスは、子どもたちのパーティーに便乗参加したり、またはクリスマスというネーミングでごまかされた忘年会に参加したりと、それなりに楽しんでいます。
ところでみなさん、パーティーで飲むワインを買い出しに行ったときや、お店でワインを注文するときに、最近よく見かけるワインの生産国はありませんか。フランス産、イタリア産と同じぐらい、ここ数年チリ産ワインを多く見かけるようになったのではないかと思います。チリ産ワインは、2013年にイタリア産ワインを超えて輸入量2位に躍進し、現在の輸入量は、フランス、チリ、イタリアの順番になっています。

では、チリ産ワインが、2005年からたった10年で5倍も輸入されるようになった背景を考えてみましょう。ワインの品質が向上したからでしょうか。いいえ、もともとチリ産ワインは、味に定評があり世界で広く愛されていましたので、この10年で劇的に美味しくなったことが理由ではありません。
答えは、2つあります。

1つ目は、チリのワイン生産は他国に比べ比較優位性を持つということです。「比較優位性を持つ」とは、マクロ経済の用語です。簡単に説明してみましょう。「各国が相対的に得意なものを生産すると失うものが少なく」、そのルールの下で世界各国が「得意なものを分担して別々のものを生産すること」で「国際分業」が進み、その結果、世界でより多くの消費が増えチリ産のワインが多く飲まれるようになったということです。

2つ目は、税金、つまり関税が安くなったということです。2007年に日本とチリの間でワインの関税を引き下げる合意(EPA)が締結されました。その結果、ワインに掛かる関税は15%から4.6%まで段階的に引き下げられ、販売価格がどんどん下がり、飲食店やワインショップでより手頃に楽しめるようになりました。

このように、国際貿易においては、「比較優位性」と「関税(貿易政策)」により、これだけ大きく勢力図が変わることを理解していただけたと思います。
さて、ついこの前、2015年11月にTPPという「モノ」の輸出入に関わる税金の取り決めが加盟国12か国間で合意になりました。日本では輸入する約9000品目のうち95%の関税が撤廃されました。その中には、ワインの関税引き下げの約束も含まれています。現在は、ワインの輸入価格に対して15%かかっている税金が、TPP加盟国間で8年後には完全撤廃、つまり0%になる予定です。これにより、チリワインと同じように、ニュージーランド産、アメリカ産のワインが安くなることが期待されています。
クリスマスの話に戻りましょう。ホームパーティをイメージしてください。そこには、ワイン、コーラ、ソーセージ、ローストビーフ、ペンネ、パスタ、オレンジ、りんご、ポテトチップス、ヨーグルトなど子供から大人まで楽しめるメニューがテーブルを賑わせています。実はこの全てのメニュー、関税撤廃により値段が大きく下がると言われている商品です。近い将来、パーティーメニューのコストが緩やかに下がり財布が助かりそうです。ただし、そんな美味しい話ばかりではありません。その分、他の貿易分野で経済負担が増えるのがTPPの仕組みです。このクリスマスシーズンに、テーブルを囲みながら皆でTPPについて考えるのも素敵な聖夜の過ごし方かもしれません。

渋谷 豊 ファイナンシャルアカデミーグループ総合研究所(FAG総研) 代表

シティバンク、ソシエテ・ジェネラルのプライベートバンク部門で約13年に渡り富裕層向けサービスを経験し、独立系の資産運用会社で約2年間、資産運用業務に携わる。現在は、ファイナンシャルアカデミーで執行役員を務める傍ら、富裕層向けサービスと海外勤務の経験などを活かし、グルーバル経済に関する分析・情報の発信や様々なコンサルティング・アドバイスを行っている。慶応義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。 FAG総研 http://fagri.jp/
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