2019年9月17日 更新

20~30代で早期リタイアする“FIRE”族の暮らし方・人生観とは

アメリカでは、20代、30代の若さで職業生活を早期リタイアし、働くことに縛られずに生きる「FIRE」のムーブメントが起きています。貯金があり支出を抑えれば「4%ルール」で生活していけるといいますが、彼らはどんな暮らし方をしているのでしょうか?

2019.8.22

20代、30代で早期リタイアする「FIRE」族

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定年前の「早期リタイア」というと、日本でもそれを選択すれば退職金が増額になるような特典をつける企業が増えていますが、それを選ぶ人のほとんどは50代です。それも、子どもがみんな大学を卒業して独立した、住宅ローンを返済し終わった、故郷の実家にUターンできるなど、条件に恵まれた人が多いようです。現実の多くの50代は教育費、住宅費の負担が重く、ましてや金融庁が「老後資金に2,000万円貯める必要がある」などと言い出すものですから、「早期リタイアなど夢のまた夢」だと思っているでしょうか。
ところがアメリカでは、まだ若手の20代、30代のいわゆる「ミレニアム世代」が勤め先を早期リタイアする「FIRE(ファイア)」がいま、一つのムーブメントとして巻き起こっています。すでに実践している人がフェイスブックやツイッターやブログのようなSNSで情報を発信しています。そのやり方を紹介するポッドキャスト「FIRE Drill」は、人気ランキングの上位です。
FIREはFinancial Independence, Retire Early(ファイナンス的に独立した早期リタイア)の略です。英語の「fire」には「火」の他に「解雇する」という意味があり、トランプ大統領がテレビ番組で「You're fired!(おまえはクビだ!)」と連発していたことはよく知られています。それを逆手にとって、20代、30代の人が「クビではなく自分からやめる。お金の心配はない」と主張しているのが、この「FIRE」という言葉です。そこにはトランプ政権に対する皮肉も込められています。
日本人は「現役バリバリの年齢でやめるなんてもったいない」「子どもがまだ小さいのにこれからどうするのだ」と思いそうですが、彼ら「FIRE族」は、将来の生活設計もしたたかに計算した上で、リタイアしています。

FIRE族はIT起業家の株式上場や遺産相続で大金が転がり込んだわけではありません。親がかりでも、独り身でもありません。リタイアする前は共稼ぎの妻と子どもがいるような、ごくふつうの会社員でした。

FIREの生活設計の根底にある「4%ルール」

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貯蓄がないと、早期リタイアはできません。アメリカでは、早期リタイアには年間支出の25倍(25年分)の貯金が必要と言われています。早期リタイアした年から貯金を毎年4%ずつ引き出しても、25年後、100%に達して底をつくわけではありません。その間に得られる金融収入(預金や債券の利子、株式の配当、投資信託の分配金などのインカムゲイン)で補われて、95%以上の人は生涯を終えるまでに貯金が底をつくことはないという理論があります。それを「4%ルール(Safe Withdrawal Rate)」と言い、1998年にテキサス州にあるトリニティ大学の先生方が編み出した、レッキとした金融理論です。

4%分の年間支出が6万ドル(654万円)なら150万ドル(1億6,350万円)の貯金が必要になりますが、2.4万ドルなら60万ドル(6,540万円)の貯金があればいいことになります(※1米ドル=109円で計算)。

さて、一家が年間2.4万ドル(262万円)で暮らせるのでしょうか? 家賃も物価も安くて暮らしやすい場所を選んで住み、節約に努めれば、それで暮らせるのがアメリカです。そう紹介すると「そんなカツカツの暮らしはイヤだ」と思う人もいるでしょうが、それはその人の価値観の問題です。FIRE族は口を揃えて「欲しいのは、カネのために働かなくてもいい自由。ぜいたくをするつもりなど全くない」と言います。

もちろん生活の「断捨離」をやり尽くすのはつらい、クルマは持ちたいなどそれぞれの事情に合わせて、準備する貯蓄額を増やす、リタイア後の収入の道を探るなどの軌道修正を加えています。みんながみんなメディアで紹介されるモデルケース通りではありません。

高収入で、早期リタイアに十分な貯金はできても、激しい競争社会でいつリストラされるかわからないウォール街出身のFIRE族は少なくないようで、ニューヨークから離れた田舎に転居し住居費を下げることを「アービトラージ(arbitrage)」と言ったりします。これは金融市場でデリバティブ商品の価格差によって利益を出す「さや取り」を指す金融用語で、ちょっとした遊び心が感じられます。

西部開拓時代の「大草原の小さな家」の精神

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FIRE族はリタイア後、毎日釣りなどをして遊び暮らしているわけではありません。それでは子どもの教育上、良くありません。
「生活のためにどこかに勤めて収入を得る必要がある」という縛りから解放されながら、たとえば無農薬野菜をつくったり、伝統工芸品をつくったり、近所の子どもに勉強を教えたり、あるいはSNSの広告収入などで収入を得ていることがあります。地元のカフェなどでアルバイトする人もいます。教会や福祉施設や地域でボランティア活動をする人もいます。それは、自分でも納得がゆくより良き人生を送るために、やっていることです。
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