2018年1月18日 更新

「こだわった自己資金という縛りを解いて、銀行から借り入れをしよう」第13章[第26話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

thinkstock (6214)

    *
 僕は外で仕事をして、お金を稼いで、妻は家の中を切り盛りする。それが一番いいと思っていたのです。僕がそばにいたからといって、何かできたわけではありません。
「本当にそう思うのかい?」
 僕は老人にそう言われて、言葉に詰まった。今から振り返ってみると、僕は娘のことをほっといて、自分の事業の面白さに夢中になっていただけなんじゃないだろうか。
「実際、成功した経営者の中には、家庭を犠牲にする人も大勢いる。それをもって君を責めるつもりはまったくない。事業というのは、それくらいのめり込まないと、成功しないということもあるだろう。だが、君がそもそもなぜ、事業を始めようか、と考えたところに立ち返ることも必要だったろう。扱うお金のレベルがあがったことで、君はそんな心の余裕をだんだんと失ってしまったようだ」
 老人は僕から目線を外すと、何かを思い出したように遠くを見つめた。
「その頃、M駅前店とK駅構内店のマネージメントは誰がやっていたんだい?」
「任せられるところは人に任せていましたが、帳簿はずっと僕が見ていました」
「じゃあ、新しく開業する二店舗のマネージメントは誰がやる予定だったんだい?」
「それは、葉山のツテで大手飲食チェーンのマネージャーをヘッドハンティングすることにしたのです。名前はなんと言ったか忘れてしまいました。なんせ、すぐ辞めさせてしまったので」
「ほう、それはまたなぜ?」
「彼にはとても悪いことをしたと思っています。
 新規オープンは、色々とやらなければいけないことも山積みで、本当に大変でした。目まぐるしく働くことで、不安を忘れてしまいたかった。ここさえ乗り越えれば、すべてうまくいくはずという思いだけで動いていたんです」
 老人は、一言つぶやいた。
「傲慢だな」
(毎週金曜、7時更新)
26 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

「私の遺言だと思って聞いて欲しい」第17章[第38話]最終回

「私の遺言だと思って聞いて欲しい」第17章[第38話]最終回

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。
「お金に支配されて周りが見えなくなっていたという意味を初めて理解した」第17章[第37話]

「お金に支配されて周りが見えなくなっていたという意味を初めて理解した」第17章[第37話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。
「私たちがそれぞれわがままだった」第17章[第36話]

「私たちがそれぞれわがままだった」第17章[第36話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。
「貧乏人も金持ちも関係ない。だから今すぐ走るんだ!」第17章[第35話]

「貧乏人も金持ちも関係ない。だから今すぐ走るんだ!」第17章[第35話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。
「君は本当のバカになるつもりかね」第16章[第34話]

「君は本当のバカになるつもりかね」第16章[第34話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

泉 正人 泉 正人
お金の教養講座