2017年12月20日 更新

「必要なときと、欲しいときに人はお金を使う」第11章[第22話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

2017.12.1
「すごい! ぴったり目標通りだよ!」
一日の営業を終え、心地よい疲労感が全身に広がりました。内訳は、定番のおにぎりよりもクリームおにぎり単体の売り上げがやや上回っていました。
「今日はくたくたですね。厨房でおにぎりを作るタイミングも、どのおにぎりを追加で作るかというのも、まだ手探りですからね」
「でも、クリームおにぎりは、なかなか評判がいいみたいだ」
「まだ、わかりませんよ。今日のお客さんの反応が、明日以降に出ますからね。明日も頑張りましょう」
翌日の売り上げ個数は一五〇個。
 三日目の売り上げ個数は一八〇個。
 この日、お店に立っていると、初日に来てくれた黒髪のOLさんがもう一度お店に寄ってくれました。そして、クリームおにぎりを二個注文していきました。おしゃベりをしない感じの方でしたが、彼女には思わず聞いてしまいました。
「あ、あの、クリームおにぎりのお味はいかがでしたか?」
「すごい美味しかったですよ。あのクリームの中身は何なんですか?」
「ペーストした旬の魚と、細かく砕いた季節野菜を、特製の出汁で長時間煮詰めて味付けしたものです」
「そうですか、ここのクリームおにぎり、友達に話をしたら、食べてみたいって。だから、一個は友達の分なんです」
 この話を後で葉山にしたら、転げ回るほど嬉しがっていました。普段は職人気質で頑固で無口な葉山でしたが、こういう部分は根っからの料理人なんでしょうね。美味しいと言われて喜ぶ様子は、今まで見たことないような子どもみたいな反応でした。
 初週の売り上げは、予想よりも少し上回りました。日によって上下動はありましたが、上々の反応に僕らは満足しました。なかでも、日曜日の売り上げ個数は一八〇個。用意している分は、なんと完売しました!
 夕方には売り切れてしまったので、僕らは翌週からの仕入れについて、食材の卸問屋にあわてて電話をして、以前よりも少し増やした数を発注しました。
「大丈夫かい? オープン時だから売り上げがあるのは、当たり前だよ。当日の追加発注でも、うちは問題ないけど」
「いえ、いいんです。きっと売れますから。あはは」
「こりゃ、すごい自信だね~。これからもその調子で頼むよ」
 半分冗談のようなつもりで言った言葉ですが、その言葉は現実のものとなりました。翌週は、第一週をしのぐ売り上げを記録しました。
 まだまだ最初の段階でしたが、僕らはこの商売がきっとうまくいくと思いました。それは、準備段階に感じていたあやふやなものではなく、実際にお客さんとやりとりする中で、肌感覚が伴った現実として僕らは感じていました。
 ただひとつ、事前の予想と違っていたのは、クリームおにぎりばかりが売れるということでした。定番おにぎりが三だとしたら、クリームおにぎりの売り上げが七という割合です。正直、原価がきつかったので、僕らはこっそり、クリームおにぎりの値段だけ五〇円値上げしました。もちろん単純な値上げではなく、「クリームおにぎり、オープン特価二五〇円は今月まで!」とPOPをつけることも忘れませんでした。
 でも、値上げ後も売り上げ個数の右肩上がりの上昇カーブは止まりませんでしたね。値段を上げても、お客さんは気にせず買っていくのをみると、本当に不思議な気がしました。まだ、僕らの店にブランドカがあるとは思えなかったので、これは純粋にクリームおにぎりの商品としての訴求力が勝っていたのでしょう。
 人がモノを買うには、色々理由があると思いますが、大きくわけてふたつあると思います。
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泉正人 | ファイナンシャルアカデミー 泉正人 | ファイナンシャルアカデミー
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