2017年12月20日 更新

「必要なときと、欲しいときに人はお金を使う」第11章[第22話]

元銀行員の男が起業をして、一時は成功の夢をつかみかけたが失敗する。男はなぜ自分が失敗したのか、その理由を、ジョーカーと名乗る怪しげな老人から教わっていく。"ファイナンシャルアカデミー代表"泉正人が贈る、お金と人間の再生の物語。

必要なときと、欲しいときに人はお金を使う。

 このふたつのうち、クリームおにぎりは、どちらかといったら、“欲しい”という気持ちをくすぐったのだと思います。『駅の近くに新しくできたおにぎり屋さん』、『そこで売られている今まで食べたことのないおにぎり』、どうやら口コミで広がりやすい要素を兼ね備えていたようです。
 オープン一カ月後、順調に売り上げはどんどん伸びていきました。“死の谷”も経験せずにです。広告も出さなかったので、とても幸運だったと思います。どんな業態のお店であっても、最初はお客さんがゼロの状態から始まるので数カ月~一年までは赤字を覚悟しなくてはいけないという死の谷も想定したのに、蓋をあけてみたら、思ってた以上に利益があがりました。今思えばラッキーだったのですが、当時は、起業コンサルである大谷と元銀行員である僕と才能ある料理人の葉山の力が合わさった結果であり、これが僕らの実力だと、ある意味、当然と受け止めるようになっていました。そして、僕らの次なるステップは、これをどこまでの成功にするのか? その点に移っていきました。
 オープン二カ月後には、一日一〇〇個台で推移していた売り上げ個数は、二〇〇個台に達しました。お客さんのリピート率も上がっているのも明らかでした。この頃、僕は毎日お店に立っていたので、笑顔で挨拶してくれるお客さんも増えていって楽しくて仕方ありませんでした。
 いつも来てくれるお客さんから見たら、僕は気のいいおにぎり屋の店長だったんでしょうね。まさか、銀行をやめて、一世一代の勝負に出てる男だなんて誰も思いもしなかったでしょう。でも、よく考えたら、そこらへんにあるお店や企業のすべてに誰かの人生がかかっているとしたら、すごいですよね。
 僕と葉山は毎日お店に出て営業していました。仕入れと仕込みは前日の晩に葉山がやってくれていました。おにぎりの製造は葉山が考案してくれたおにぎり製造器(米と具材を型に詰めてぎゅっと押せばおにぎりができ上がる)を使っていたので、朝は、僕とアルバイトのふたりで回るようになっていました。
 ただ大谷だけは、自分の本業をまだ辞めていませんでした。「コンサルの肩書きを持っているからできることもあるんだ。だから、しばらくの間はすまんな」そう言って、店のマネージメントは僕と葉山に任せて、週に三回程度、お店をのぞきに来るくらいでした。もちろん、忙しい中、時間を割いて無理して来てくれているのはわかっていましたが、それは少し不満でした。
 ただ、うまくいっている間は、大谷の言う通りかな? と思って特に大谷を責めるようなことは言いませんでした。それは、大谷がその間の給料を辞退していたからかもしれません。
 第23話へ続く
(毎週金曜、7時更新)
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泉正人 | ファイナンシャルアカデミー 泉正人 | ファイナンシャルアカデミー
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