2017年8月29日 更新

エンジェル投資家は、リターンよりロマンを求める

「人生の時間を倍に増やしたくて」起業し、現在は「エンジェル投資家」として、起業への最初の一歩を踏み出す人への支援をしている西川さんに、夢とロマンがいっぱいの「エンジェル投資家」としての生き方について、聞きました。

2015.3.28
1999年に起業活性化を目的とする「渋谷ビットバレー構想」を提唱し、その後さまざまなインターネットビジネスを次々にリリース、現在は「エンジェル投資家」として、起業への最初の一歩を踏み出す人への支援をしている西川さんに、起業する人への想いや、次世代起業家の育成、投資に対する考え方などについてお聞きしました。

会社勤め、起業家、そしてエンジェル投資家に

神原
西川さんは、会社勤めと起業の両方を経験して、今はエンジェル投資家(創業間もない企業に対し資金を供給する投資家)です。このサラリーマンと起業家の働き方の違いについてお聞かせ下さい。

西川
まず、サラリーマンは、人生を二元論的に生きていて、起業家は一元論的な世界で生きていると考えています。誰でも1日24時間あるわけですが、会社勤めの人は平日の勤務時間と休日の自由時間、いわゆるオンタイム・オフタイムと言う二元論の世界。起業家になれば、24時間365日、全部自分のものになる。時間は同じなのに、後者の方が、二倍生きているような、「得した感」がある(笑)。その意味合いで、起業家になれば、実質時間の長さを増やせるのではないかという気持ちがありました。実際に起業家になっても、考えていた通りでした。

神原
現在はエンジェル投資家としてもご活躍ですが、起業家からエンジェル投資家になったきっかけは?

西川
成功した起業家にとって、エンジェル投資家になることは、アメリカでは「アフター起業家」として、典型的なパターンになっています。起業家として財を成したら、その一部を後輩に還流しようという、ある種の資金リサイクルですね。自分だけが使うのではなく、後輩にチャンスを与える、そのような感覚があります。私の場合、人生の中で仕事以外の楽しみも多少は味わいたいので、起業家より多少時間的余裕ができるかもしれないということで、エンジェル投資家になったのですが(笑)。

神原
西川さんは、VC(ベンチャーキャピタル、将来性ある未公開企業への投資を行う組織)とのお付き合いも長いですね。VCとエンジェル投資家は、どのように違うのでしょうか?

西川
VCのお金とエンジェル投資家のお金は、かなり性格が違います。VCは、大きなところでは年金基金などがありますが、しっかりリターンを求める存在が背後にあり、きちんと資産を増やすという目標のもとに投資して、最終的にエグジット(売却して資金を回収)して利益をあげるスタイルです。VCは、アーリー・ステージ(起業の初期段階)はリスクが高いのであまり関わってきません。一方、エンジェル投資家は、そこまで厳格にリターンを求めず、どちらかというとロマンを求める。すってしまってもしようがないお金、というところがあります。エンジェル投資家は、アーリー・ステージから投資しますので、最も不確実性の高いフェーズでの資金投入となります。リターンも、絶対金額としてはVCより大きくありません。なぜそれでもやるのかというと、個人にきっかけを与えて、その人が後々成長していくのを自分のことのように喜びたいという想いからです。

神原
純粋なお金のリターンだけではなく、自分の興味、関心や、応援したい気持ちも含めて投資判断をするのが、エンジェル投資家ということですね。

西川
はい。単に寄付ということではないので、当然リターンの期待もありますし、上場となれば、それなりの収益にもなります。しかしやはりVCに比べると、そこまで結果にはこだわりません。例えばVCの場合、失敗した場合に「1円でも回収しよう」と物凄くサルベージ(資金回収)の努力をしますが、エンジェル投資家の場合、「パーになってもしようがない」と回収努力をほとんどしないケースが多いのではないでしょうか。

新しい嗅覚を持った学生たちが集まってきた“磁石のような存在”

神原
1990年代にネットエイジでアルバイトをしていた人達の中には、mixiの笠原社長や、グリーの山岸副社長など、現在大変なご活躍をされている方々が大勢いらっしゃいます。どうして、そのような優秀な人達を発掘できたのでしょうか?

西川
秘策はありません(笑)。あえていうなら、私は磁石のような存在だったと言われる事があります。若者が集まる場所を作って、普通の大人が「ちょっと無謀だな」ということをやったので、そこに新しい嗅覚を持った学生達が「何かあるんじゃないか?」と磁石のように引き寄せられて来て、「とにかく入れてくれ」という感じで潜り込んで来たようです。最初から彼らにすごい才能があると感じていたわけではありません。アルバイトも、厳しい選別というよりも、むしろ「来る者は拒まず」という感じでした(笑)。

神原
みなさん西川さんのことを兄貴分といった言い方をしていますね。

西川
今育てているのは20代前半、僕は55歳ですから、年齢的には、お父さんです(笑)。うちの子供と同じ世代ですから。今、若い人達は起業術を学んで、どんどん進化していますね。同じ若手起業家といっても10年前とは様変わりしています。最初から英語のサービスを作って、外国の人を対象にサービス展開している人もいます。

神原
西川さんはビットバレーを1999年に提唱して、10年以上かけて、何回かのバブルとその崩壊を越えながら畑を耕して、ベンチャー起業家が育つインフラを整備してきました。

西川
日本の起業環境は劣悪だと言われてきましたが、よく見ると意外とそうでもなく、基本的なインフラは全部整っていて、あとはやる気次第と思っています。起業は、株式市場の山谷に引っ張られる面はあります。市場が冷えていると起業も冷える。ただ、沈んだままということはありません。大きく分けて見てみると不思議なことに、4年サイクルで山谷が形成されています。最近では2008年がボトムで、4年後の2012年が今年が山、その象徴がフェイスブック上場です。昨年あたりからスタートアップ、特にリーン・スタートアップという、節約型のお金をかけない起業が増えています。プログラミングさえ出来れば、非常にローコストで創業出来る。僕が今やっているのは、そのようなりリーン・スタートアップ的なベンチャーへの投資です。今までに11社手がけました。

神原
ネットエイジで投資をしていたときの支援やアドバイスと、今のリーン・スタートアップとでは、違いはありますか?

西川
事業のアドバイスもしますが、事業自体はむしろ若い人達の方が感覚は良いので、あまり口出しするところはないですね。むしろ支援は増資の方です。リーン・スタートアップは、最初は300万円位でできますが、その状態のまま黒字化するのは難しい。どうしても、次の増資が半年から1年以内に必要になるので、そこを何とか成功させる必要があるというのが、一番大きな違いです。次の増資につながっていけるように、例えば、プレゼン大会を企画し、そこに投資家を呼ぶイベントを開催したりしています。

神原
起業では資本政策のスタートを間違えると、命取りになります。プログラミングやイノベーションは得意だけれども、資金繰りは不得意という起業家は多いのではないでしょうか。

西川
本来は、起業家と優秀なCFO(最高財務責任者)がペアになっているのが望ましいのですが、なかなかそのような人が見つからない。今「レンタルCFO」という、増資のときだけ手伝ってくれる財務責任者、といった人がいます。そのような人がいると、非常に心強いですよね。

骨太な起業も増えて欲しい。 経験のある人と若い勢いの組み合わせに期待

西川
僕が今、気になっているのは、ソーシャルゲームとかアイコンアプリとか、そのようなリーン・スタートアップ的な起業ばかりに皆が向かって、骨太な起業を目指す人が減っているのではないかという点です。例えばライフネット生命保険のように、きちんとしたビジネスプランが書けて、経験があるところには、現実にお金が集まるのです 。このケースでは、あすかアセットの谷家さんという人がマッチメーカーの役割を果たしていますが、今、60代の定年間近の人はものすごく経験豊富で良いものを持っている人がいるのですが、その人1人で起業するのは難しい。そこで30代の勢いのある人と組み合わせをするマッチメーカー、仲人のような存在が重要です。僕もマッチメーキングは楽しみの一つですね。

神原
そうですね、やはり年齢と共に、この人とこの人が合うのではないかといった、人を見る目が養われていくところがありますね。今後さらにそのようなフィールドで活躍する人が出てくると、面白いですね。

西川
日本は閉塞状況が20年以上続いているわけですが、新規雇用の8割は新設企業で、大企業が新しく雇用を増やすということがなくなっています。大企業は逆に減らしている側に立っています。ですから今は、スタートアップが何社か出てきて、そのうち何社かがどんどん大きくなっていって、多くの人を雇用している。わずかこの10年くらいで会社を立ち上げた、グリーやDeNAは、今何千人もの雇用をしています。

西川
種はある程度たくさん蒔かないと、1粒だけで大木になるのは難しい。その意味ではやる気のある人には皆にチャンスを与えて、まずはスタートさせることが大事です。一番の理想は、大きく成功した起業家のお金が一部還流してくるという、エンジェル投資家的なものの厚みが、日本でももっと出てくることです。そのような観点で僕がスタートさせたのが、「Tokyo Angel List」です。シリコンバレーに似た先例があるのですが、それを参考に、エンジェル活動をやっている人をリストにして起業家と引き合わせるという活動をはじめました。

収入減を覚悟した起業時。現在は、 信頼できるアドバイザーも活用

神原
話は少し変わりますが、 ライフステージによって起業のリスクは変わってくると思います。西川さんは39歳の起業ということで、その頃既に結婚していらっしゃったと思うのですが、ご家族の理解や協力はどのようにして取り付けたのですか?

西川
私自身は当時、既に子供が3人いましたし、AOL(アメリカン・オンライン)のディレクターをやっていましたから、起業する事で収入も一気に何分の一かに落ちました。よく妻もアクセプトしてくれたと思います。
当時、幸いにも家のローンがなく、「これだけあれば生活できる。子供を学校に出せる」という水準から逆算して社長の報酬を決めました。社長とはいえ、報酬委員会があったので、エグジットができるまでは、報酬キャップ(上限)をはめていますので、勝手に年収を増やすことはできません。

神原
今でも家族がいる人はチャレンジしにくいですね。

西川
確かに家族を持っているよりは、独身の方が身軽ですからね。だから若い人は、早いうちにやってしまおうという気持ちになります。でも最近は、奥さんに食べさせてもらって起業する人もいますよ(笑)。

神原
金銭資産に対するお考えについて伺いたいのですが、会社として投資するためのお金と、個人のお金をどのように分けているか、その基準、考え方や使い方、意識して変えているところなどありましたら、お聞かせ下さい。

西川
全体の2割程度を、リスクを取って運用する部分と決めています。その半分を会社の資本金に入れて、会社として出資。これはスタートアップ専門です。
残りの1割を個人としての資金とし、スタートアップに限らず、少し時間の経過した企業、場合によってはレイター・ステージ(株式上場に近い段階) に投資しています。過去5年で20件くらいやりました。
その他の細かい資産運用に関しては、情報を的確に判断して運用するというのは僕にはちょっと難しいので、ファイナンシャル・アドバイザーにお任せしています。

神原
個人のお金についても自分が信用できるパートナーを見つけると安心ですね。西川さん自身はご自分の得意なところに特化して、そうでないところは専門家に頼む。その方が日本社会全体に貢献していることになると思います。
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