この問題に対し孫社長は11月5日のソフトバンクグループの決算説明会で、サウジアラビアからの資金は、サウジアラビアが石油だけではない多様化した経済を作るために預かったサウジアラビア国民からの資金であると、純粋な一般国民に対する責務があるという事に焦点をあて、今後もサウジアラビアとビジネスを続けていく意向を述べました。
上手い方向へ問題点をそらし、一時的には落ち着かせた様子です。しかし、今後もこのような政治的な問題に巻き込まれる可能性を見込めば、ギンズバーグ氏の存在は心強いでしょう。
アメリカで5Gネットワーク競争を勝ち抜く
孫社長が今とても手こずっているのが、2013年に買収した米携帯電話会社、スプリントとそのライバル会社、T-Mobileを合併させることです。
それは5Gネットワーク競争に勝ち抜くという目標を達成するためです。このためにも、ワシントンに強いつながりをもつギンズバーグ氏の力が必要となるのです。
実は、2013年にもT-Mobileの買収を試みたのですが、米政府側から却下された経緯があります。
再度挑もうと孫社長は2017年にT-Mobileの合併交渉に乗り出しました。一時、経営権で折り合いがつかず難航しておりましたが、2018年5月にソフトバンクグループが持ち株率27%と、経営権を放棄する形で合意しました。
現在は米政府の承認待ちで、ギンズバーグ氏の根回しに期待するというところでしょうか。
アメリカでどうしても5Gネットワークに関わりその競争に勝ち抜くという目標を優先させるのならば、とにかく2社で力を合わせる必要があり、また、T-Mobileのジョン・レガー社長の経営手腕に委ねることは、戦略的に有利だと考え、経営権を譲る形でも合意をしたのではないでしょうか。
なにしろ、T-Mobileのジョン・レガー社長の経営手腕は世界的にも評価が高く、孫社長自身も今回の合併交渉で身をもって実感したことでしょう。
また、スプリントが抱えていた純有利子負債の約3.4兆円(2017年末)をT-Mobileに渡すこととなり、財務面でもメリットがあるようです。
ソフトバンクグループは手を広げ過ぎで投資家にとっては先が読みづらい、などと言う声もあります。しかし、あの手この手で「群戦略」をモットーに情報革命の可能性を限りなく広げていく孫社長のヴィジョンにはブレはありません。
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