プチプラの次は?フォーエバー21の破綻に見るファッション業界の行方

経済

断捨離した後の服の行方を考えたことがありますか。経済的な成長の裏にはほとんど犠牲が伴い、堅調な成長を見せるファストファッション市場もその一例です。しかし今、利益追求を優先しすぎたファストファッション業者のモラルと、消費者の良識が問われる時期がきたようです。

2019.10.25

ファストファッションが招いた犠牲

ファストファッションという、手頃で流行り廃りの早い服を量産することが素材の収集から古着の処分に至るまでの段階において、環境破壊に拍車をかけています。また、業界の発展途上国での労働搾取が社会問題となっています。
サステナビリティ(持続可能性)を研究するQuantis研究所の2018の報告書では、世界の温室効果ガス排出量の8%をアパレルと靴産業が占めるまでに増えているとのこと。このままでは、2030年までにこれらの産業は更に49%も排出量を増やすと予測されています。
また、2013年バングラデシュで、縫製工場などを収容する「ラナ・プラザ」が崩落し死者1,127人、負傷者2,500人以上という大惨事が起こり、劣悪な労働環境と低賃金での労働搾取で利益を出すファストファッション業界の闇が明るみとなり、ファッション業界は非難されるようになりました。
このような背景もあり、国連のスピーチで世界中から注目を集めるスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん16歳のように、環境問題に関心をもつミレニアルやジェネレーションZ世代が増え、ファストファッションは今まで支持をうけていた世代から遠ざかれつつあるようです。

ファッション業界ではサステナビリティが明暗を分ける

環境問題への責任を問われるファション業界はサステイナブル(持続可能な)ファッションの開発、取組みを迫られています。
「サステイナブル」、「エシカル(倫理的)」という言葉を今やあちこちで見聞しますが、ファッションに関しては、製作、流通、廃棄などの全ての段階において、環境や野生動物にダメージを与えず、関わる労働者全てを安全な労働環境と公平な賃金で雇い、消費者の健康にも害を与えないということを意味します。
サステイナブルファッションの一環として、石油ではなく植物ベースの化学繊維や、毒性のない染料、布地やプラスティックのリサイクルなどの開発が世界中の素材メーカーで進められています。
例えば、有名ブランド、プラダの特徴素材と言えば、ナイロン地。そこで、プラダは早速「リナイロン・プロジェクト」を立ち上げました。
「2021年末までにプラダのすべてのバージンナイロンを再生ナイロン繊維ECONYL®に転換することを最終目標」としたプロジェクトです。ECONYL®とは「完全にリサイクル可能な繊維で、限りなく再生することができる素材」です。イタリアのナイロンメーカー、アクアフィル社が開発しました。
最近、フォーエバー21が日本から完全撤退し、米破産法適用申請することになった理由の1つとしてサステイナブルに真剣に取組んでいなかったから、という意見も多いです。

注目されるレンタル洋服や古着、スローファッション

しかし、サステイナブルファッションの問題点は値段が高いということです。それならば、衣類を買わなければいいのですが、そういうわけにもいかないと、注目されつつあるのが洋服レンタルサブスクリプションと古着です。
ファストファッションが環境に良くないのは分かるけど、サステイナブルファッションは気軽に流行に乗れるという値段ではない。いくら質がよくても、「同じ服」、「時代遅れの服」を着ていたら、社会的イメージがあまり良くないというのが現実です。
そのような社会的プレッシャーを考慮し、また環境保護にも貢献できると言う点で、「airCloset」などのレンタル衣類サブスクリプションが最近、特に働く女性に注目されるようになりました。 また、「メルカリ」などで古着を売買し、不用品を捨てずに回転させるという方法も有名ですね。
欧米にはサルベーション・アーミーやGoodwillなどのように、気軽に古着や不用品を寄付できる所がありますが、日本ではまだ少ないです。寄付されたモノを売り、売上の一部を社会に還元するという店舗が増えれば、誰もが簡単に社会奉仕と環境保護に貢献できます。
昨年アメリカで、中学の女性教師が始めた「同じ服を100日着よう!」というプロジェクトが話題となりました。サステイナブル貢献への取り組みとして、流行のスピードを落し、デザイン、質、共に服の寿命を延ばすスローファッションや、流行に感化されない自分なりのスタイルをもつという観念を広めることも大切なのでしょう。
プチプラの使い捨ては消費者の経済活動を活発にします。しかしその裏にある犠牲を減らすよう、企業は努力を迫られています。消費者も社会的な責任意識をもってファッションと向き合う時期がきたのかもしれません。
参考記事:
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
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