2018.9.3
生い立ちと父の影響
リリアンヌ・ベタンクールはロレアルの創始者ユージェンヌ・シュラーとルイーズ・ドンシューの一人娘として1922年パリに生まれます。裕福な環境ながら5歳の時母親を病いで亡くし、企業を引っ張る父親は朝から夜中まで仕事に追われる毎日で、小さなリリアンヌに構っている余裕はありませんでした。
リリアンヌの思春期には、父親が複数の女性と付き合うのを目の当たりにしても、反感や嫌悪を抱くことなく、忠誠的なまでに父親を敬愛していました。父親は男尊女卑の傾向が強く、「女は家を守るもの」という父権主義にこだわり、リリアンヌを大学に行かせず、自社でも彼女に責任ある地位を与えることはありませんでした。
この男性至上主義の父親の影響が、後に彼女の企業への取り組みに反映し、プライベートでのスキャンダルをも招いていくことになるのです。
企業のグローバリゼーションとマルチナショナル経営の理由
世界で初めて髪の染色技術を開発・販売して成功したロレアル社で、15歳から見習いとして働いたリリアンヌは、1950年、ロレアルの幹部で政治家として活躍していたアンドレ・ベタンクール氏と結婚します。夫は第2次世界大戦中、反ユダヤ主義としてナチの協力者でありながら、戦局がフランスに傾くとレジスタンスに鞍替えしたため、夫の「風見鶏」の悪評は結婚後のリリアンヌにも付きまといました。
1957年に父親が亡くなると一人娘のリリアンヌがロレアル株など全財産を相続し、夫が外務大臣になると一躍社交界へと躍り出ます。米女優のエヴァ・ガードナー似と評判の美しく知的なリリアンヌは、ロレアルのアンバサダーとして「女性」を武器に宣伝塔の一躍を担っていきます。
戦後、ランコム、クレージュなど国内資本のみを買収してきたロレアル社ですが、1974年、同社が国有化の危機に立たされた時、外国株であるスイスのネスレ株4%を保有することで国有化を免れることができました。フランスでは100%フランス社でなければ国有化できないからです。
この時は左派の社会主義政権に自社資本を利用されることを嫌うリリアンヌが、友人のポンピドー元大統領など右派の幅広い交友関係から協力を得ることとなったのです。1986年にロレアルが世界一の化粧品会社に成長した背景には、こうした彼女の政財界のコネを巧みに駆使する社交術が躍動しているのです。
同社は2004年にネスレ社と合併し、国有化の脅威から免れるため、2009年以降マルチナショナル経営を選択していきます。
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