『未来の年表』で実感!少子高齢化は新たな国難であると…

カルチャー
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』と題して2017年に出版されると半年経たずに24万部を売り上げているベストセラーは、様々な統計をもとに日本の未来がいかに危ういのかを年表にして説明しています。
2017.11.16
2020年 「女性の2人に1人が50歳以上に」
2021年 「介護離職が大量発生する」
2027年 「輸血用血液が不足する」
2033年 「全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる」
2050年 「世界的な食糧争奪戦に巻き込まれる」
具体的な年号とともに、かなり衝撃的な言葉が並んでいますが、これらは少子高齢化が進んだ日本で「実際に、これから起きること」だと言います。発表したのは内閣官房参与有識者会議委員、厚労省検討会委員、農水省第三者委員会委員などを歴任し、産経新聞で論説委員を務める河合雅司氏。人口政策のエキスパートです。
河合氏はこの状況を「静かなる有事」と命名していますが、実際に読んだ感想としては、もはや「国難」ともいえる緊急事態なのでは?と思えるものでした。
「少子化を食い止める!」と声を上げている政治家ですら正確には把握できていないという少子高齢化の本当の危険性。若い世代にとって特に重要なテーマに迫ってみたいと思います。

もはや少子化は止まらない!「人口減少カレンダー」に学ぶ!

「ストップ少子化」。政党・政治家が政策に掲げて当たり前の常識ともいえますが、河合氏からすると「少子化は止まらない」というのがほぼ決定事項。救いがないようにも感じますが、残念ながらこれには裏付けがあるそうです。じつは日本の少子化はすでに深刻なレベルにあり「将来、母親になる女児の数が少なすぎる」状態。ベビーブームが数年続いたぐらいでは少子化は止まることはなく、もしあっても遠い未来のことになるのだといいます。
河合氏があらゆるデータを駆使して作成した「人口減少カレンダー」によると「2020年、女性の2人に1人は50歳以上になる」とのこと。2016年には初めて出生数が100万人の大台を割ったことが報じられましたが、近い将来、出産可能な世代の女性減少が大問題になる日が到来しそうです。

続々と押し寄せる問題!

「人口減少カレンダー」には、他にも様々な未来が書かれています。例えば、

2022年、独り暮らし社会が本格化する。

人口が減少に転じた日本ですが、実は世帯数だけは増えているのだそうです。その理由は「独居世帯」の増加。団塊世代が75歳となり、夫や妻と死別するなどした人々が本格的に増えるのが2022年。そしてその約10年後には彼らも寿命を迎えはじめ、日本の住宅の3戸に1戸が空き家に。治安や維持費など様々な問題を引き起こすようになるそうです。

2027年、輸血用血液が不足する。

日本赤十字社や東京都の調査によると、輸血の必要量がピークを迎えるのは2027年頃。およそ545万人の献血者が必要になると試算されています。対して、実際に献血する人の割合や人数は減り続けており、およそ86万人分の血液が不足すると見込まれています。輸血の多くはガン治療などの病気治療に使われるので、いくらお金があっても当たり前の治療が受けられなくなる時代がやってくる危険もあるのです。
この他にも「IT人材が不足して社会基盤に混乱が生じる」「現在の居住地域の20%が、誰も住まない地域になる」「火葬場が本格的に不足する」などなど、恐ろしい未来がデータとともに示されています。
しかし、私たちにできることはないのかというと、もちろん皆無ではありません。河合氏が「日本を救う10の処方箋」として紹介している対策の中から、個人的に興味を惹かれたものを紹介したいと思います。

今からでもできる「少子化対策」!

先に紹介したように、河合氏の試算では少子化はほぼ確実に進行していきます。そこで彼が考えたのが、少しでも少子化を遅らせながら「社会を対応させる」方法でした。紹介されるアイデアにはユニークなものが多く、例えば「都道府県の飛び地合併」というものがあります。
これは例えば、高齢夫婦の世帯が多く介護施設が不足する東京が、介護病床に空きが出ている地方、例えば島根県と合併してミスマッチを解消する。代わりに東京は財政や人材確保に協力するというもの。一見無茶にも思えますが、東京の世田谷区と静岡県南伊豆町などの小規模では先行事例もあるのだそうです。
さらに「セカンド市民制度の創設」というアイデアも。これは都会の人々に、お気に入りの旅行先などを「第二の居住地」として“住民登録”してもらうというもの。彼らは第二の居住地を訪れてお金を落とす代わりに、地域の行政サービスを受けられ、空き家や古民家を利用したゲストハウスに安く宿泊できるような特典も受けられる。こうした中で都会と地域の交流が生まれつつ、空き家の利用などにも役立つというもの。
「東京と島根県が合併する」「第二の故郷を住民登録する」などのアイデアは予想外で突飛にも思えるかもしれません。ただ、人口減少と少子高齢化が着実に進行する中でこれらに対抗するには、それぐらいの振り切ったアイデア、そしてそれを支援してくれる行政の力が必要だと強く感じました。
自分はこれまで「働き方改革」など労働生産性を向上させることが少子化対策にもつながっている(だから大丈夫かも!)と思っていましたが、この本を読んで考えを改めることになりました。
河合氏も本書の中で述べているように「経済が成長し続けたとしても少子化に歯止めがかかったり、高齢者の激増スピードが緩んだりするわけでは断じてない」のです。
これまで、なんとなく「少子高齢化問題」を見て見ぬふりしていた人が読むには読みやすく、かつ分かりやすい一冊だと感じました。ぜひ一読してリアルな未来を感じてほしいと思います。