ウェルネスブームが世界中で止まらない!4兆ドルの経済効果と背景

経済

マインドフルネスをはじめとした、ウェルネス(健康を維持、増進させようとする生活活動)に興味を持つ人が増えつつあります。ウェルネスツーリズム、アプリなど新たな商品が出回り、今やウェルネス産業の市場規模は4.2兆ドル以上。このブームの実態や背景、昨今のトレンドについて解説します。

2019.10.1

ウェルネスブームの実態

優しい響きをもつ、ウェルネスと言う言葉は
「総体的に健康な状態でいられるような行動、選択、そしてライフスタイルの積極的な追求(The Global Wellness Institute )」という概念をもちます。    
「総体的」と言われることから、色々な分野、考え方がウェルネスに繋がり、商品化され、ウェルネス産業が世界中で最も成長している産業の1つとして注目されるようになりました。
The Global Wellness Institute (GWI) が2018年10月にウェルネス産業の経済効果についてまとめた報告書によると、その世界市場規模は4.2兆ドル(約450兆円)になり、2015年から2017年まで2年間の成長率は12.8%、年平均6.4%、同期間の世界経済成長率年平均3.6%の約2倍近くの速さで成長し、世界経済生産高の5.3%を占めているということです。
「総体的な健康状態」に携わるウェルネス産業としてこの報告書に含まれているのは下記の10セクターです。
1.パーソナルケア、美容、アンチエイジング
2.健康食関連、減量
3.フィットネス、マインドフルネス
4.予防医学、公衆衛生
5.伝統医学(東洋医学など)、代替医療
6.ウェルネス不動産
7.スパ関連
8.温泉開発
9.ウェルネスツーリズム
10.職場ウェルネス活動、プログラム

ウェルネス産業が成長するわけ

これだけウェルネス産業が成長を遂げている背景には、スティーブ・ジョブズなどの著名人が瞑想やマインドフルネスを実践しているという影響もあり、ウェルネスを意識することがある意味で、知的、経済的ステイタスシンボルのようになっているのではないでしょうか。
GWIの2017年度の報告書では、成長の主な理由は、「加齢、現代的な慢性病やストレス、環境汚染による健康への危害、従来の病気治療モデルでは生活の質を改良出来ないなどを理由とした健康維持や改善への消費者の関心が高まった」、そして「可処分所得が増え、現在や将来の生活の質を高める為の支出を増やす中間層世帯が世界中で増えているというトレンドにのって、様々な分野のビジネスがウェルネス産業へ乗り出した」と挙げています。
その他に「知識と経済的余裕を持ち合わせる一部の特にミレニアル世代の消費者の間で、彼らの選択は意義や目的、個人的な満足感を超える刺激を伝えることだ、という意識が高まってる」、また主にミレニアル世代の消費者が「本物と自然を尊重し、自分と他人の幸せや地球の平和をつなげられる経験を求めている」、といったミレニアル世代の存在が成長に影響を与えているという分析もしています。

具体的なウェルネスのトレンドは?

報告書に挙げられた、10セクターの中でも特に成長が著しいのは、スパ、ウェルネス不動産、ウェルネスツーリズム。高収入層ほどウェルネスへの関心が高く、そのための出費は惜しまないということから、ウェルネスの高級化がトレンドとして注目されています。
ウェルネスツーリズムとはGWIの説明によると、個人の健康や幸福感への追求、維持、増進をゴールとした旅行のことで、例えば、本場での瞑想、ヨガなどのマインドフルネスやリラクゼーションを体験したり学んだりするような旅です。
ウェルネスツーリズムの2017年消費額は6,390億ドル(約68兆円)。今や観光消費額全体の17%を占めています。旅行先として人気を集めているのは、自然やスピリチュアルな体験のできるインドや中国。
森林浴を目的としたウォーキングツアー、酸素バーでのセラピー、ストレスコントロールを学ぶブレインパワーディナー付きの講義、マンドフルマッサージ、ヨガ、瞑想など、高価だけどストレスを解放し、とことんリラックスできるサービスを提供するスパ施設やホテルの需要も増えています。
ウェルネス不動産とは、心身ともに健康的でいられる建物の設計、建設や地域開発などを手掛けるビジネスです。具体的には有機の素材、清浄した水や空気、体に優しい照明など体に悪影響を与えない工夫を凝らしたり、地域にジムやスパを設けたり、自然と融合させたりなど、心身の健康のための贅沢が行き届いた環境を提供することを特徴とします。
また、フィットネス、マインドフルネス人気の波及効果として、瞑想やフィットネスなどのアプリやグッズが開発され、人気を集めているようです。
「心身ともに健やかでいたい」という誰もがもつ単純な願望が様々な形で商品化され、ステイタスシンボルとなったり、インフルエンサーになったり、ウェルネス産業は今後もますます成長していくことでしょう。
参考記事:
K. ブリーン

K. ブリーン

アメリカの某大学経済学部卒業。主に社会経済や映画の事などを書いてます。ピラティスにはまり、指導員資格を取りました。
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