人間関係のストレスが改善される感情コントロール術

30代から、部下や上司との関わり合いが増え、悩みが増えてきます。人間はより困難な状況で複雑な感情を抱く時ほど、内面に隠す傾向があると精神科医は語ります。悩みを解決するための方法を紹介します。
2019.4.22

複雑な感情ほど隠してしまうことを自覚する

家族や職場の部下・上司、友人との関係は、生きていくうえでなくてはならない大切なものです。
同時に、そうした関係はいわゆる「しがらみ」を生み出し、年齢を重ねるごとに私たちの内面に人間関係によるストレスが蓄積していくことがあります。
精神科医フランチェスコ・コメッリ博士は、人間はなぜか、より困難な状況の中でより複雑な感情を抱く時ほど、それを内面に隠したがる傾向があるのだそうです。
30代とは、いわゆる人間が成熟していく段階に突入する世代。否応なしに、あらゆる関係に取り囲まれてにっちもさっちもいかない、という人も増えてきます。
そんな人たちのために、コメッリ博士は「エモーショナル・クリーニング」と名づけたいくつかのアドバイスをしています。その中から5つご紹介します。

感情コントロール術1:メディアやSNSから一線を引く

メディアの波に押し流され、あらゆる情報にさらされている私たちは感情の面で非常に不安定になりがちだそうです。それは、毎日垂れ流されるさまざまな情報に右往左往してしまい、依って立つ支柱を持つことができないためです。
波の上を漂流しているような寄る辺なさが、感情にも影響を与えるのです。SNSの世界は砂上の楼閣のようなもの。別物として考え、普段の生活の中で人間の感情は育まれなければならないと博士は強調します。
精神が成熟し始める30代にこそ、メディアやSNSから一歩身を引いて、古典や良質な小説を読み、上質なものに触れる機会を増やすことが、感情を安定させることの一助となるのです。時間がないから読むことができない、ではなく、自分自身に上質なものを強要する強さも、時には必要なのです。

感情コントロール術2:過去のトラウマと向き合う

過去に傷ついた経験がある。これは、人生では避けて通れないものです。
こうしたトラウマを、人間は一生をかけて克服するために向き合わないようにしてしまうものです。この行動を、コメッリ博士は非生産的と断言しています。さまざまな経験を肥やしにできる30代からこそ、こうしたトラウマと向き合い冷静な状態で克服することが可能であるためです。
つらい傷を心の奥深くに埋めようとすればするほど、心の平安はより遠のくというのが博士の主張なのです。

感情コントロール術3:辛いことを口に出しすぎない 

悩み事があったり、つらいことが起きたりすると、私たちは他人に頼る傾向があります。家族やパートナーや友人に、つらい思いをぶつけるのは悪いことではありません。しかし、彼らと話しているうちにその内容がより否定的になることが多いのも事実です。
つまり、つらい思いをさせられた上司の悪口で盛り上がったり、責任を他人に転嫁することで自身が楽になろうとしたりします。でも実際には、こうした行為はつらい思いから立ち直る自分をあきらめていることにほかなりません。
このような状況に必要なのは、まったく別のポジティブなものを見つけること。
もつれた感情の糸をすっぱりと切るには、明快で肯定的な次元に目を向けることが必要なのです。
そして、パートナーや家族や友人がそのような状況にあるときは、あなたがポジティブなものに目を向ける役割をしてみてください。

感情コントロール術4:失恋で自分を否定しない

不幸な終わり方をした恋は、私たちの心に大きな傷を残します。それを誰かに打ち明けるときには、まるで一本の糸のような物語になっているはず。しかし、その下には語り尽くせない辛い思いが込められているのは当然のことです。
コメッリ博士は、失恋は失敗ではないと明言しています。私たちが成熟していく上での、1つの分岐点に過ぎないのです。ひとつの恋が終わったことで、賢明な人間ならば同じようなつらい思いをしないために、恋の相手となりうる人とはより密にコミュケーションを取るようになります。これは、非常に建設的な事象であり、人間としての進歩なのです。

感情コントロール術5:誠実であることを心掛ける

失望や悲しみなどネガティヴな感情とは無縁でいたい、それは人間として当然の思いです。しかし同時に、こうした感情がない人生などありえないのです。それならば、とことんその感情と向き合うほうが得るものが多いのではないでしょうか。
コメッリ博士は、「失望」を味わった後にはギリシア哲学でいうところの「善」が完結したのだと主張します。哲学者アリストテレスは「善」について、「究極的な卓越性に即しての魂の活動」と定義しています。
うわべだけの満足や誠実を表現することはやめて、あらゆる人や物事に対してより誠実である努力をしましょう。30代以降ならば、卓越性を手に入れるための生活のスタイルを構築していくことが可能なのです。

最後に

年齢を重ねるというのは、若さを失うことではありません。物事に対する視点が、より深く、成熟しく過程でもあるのです。30代は、若さと成熟のはざまで、もがくことを余儀なくされる世代かもしれません。しかし、それを克服した先には真の大人の世界が広がっているのです。

井澤 佐知子

イタリア在住十数年、美術と食をこよなく愛す。眼下にローマを見下ろす山の町で、イタリアのニュースを発信中。

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