批判は人格否定ではない。否定的フィードバックで絶望しないために

あなたの常識を、アップデートしよう。
仕事で批判を受けると自分が否定されたような気持ちになり、必要以上に重く考えてしまいがち。しかし、批判は決して人格の否定ではありません。有益なフィードバックのためには、批判する側もされる側も、事柄への批判と人格否定を区別する必要があります。
2019.9.17

爆発しそうな感情を抑え込んでいる日本人

「ディアグラム診断」という性格診断プログラムがあります。これは大手企業の活動にも用いられており、心理学の見地と数万人規模のアンケート調査、マーケティングデータを組み合わせたもの。この診断を作った木原誠太郎氏によれば、近年の平均的な日本人の性格は「色んな気持ちをセーブして気持ちは爆発寸前だけど、冷静を装って劇を傍観してる人」なのだそうです。
これは、自分で意思決定することを放棄し、他者や信憑性の分からない一部の情報への依存性が高く、周囲に流され本当は嫌なのに「参加しなきゃ」と考えて、ストレスを抱えている姿です。ディアグラム診断では、「コンロトール不能なトラブルメーカー 突拍子もない激情人間」に分類され、論理性が低いと診断されます。

あなたの批判は「適切な批判」になっているか?

仕事で意思決定を行う場合、仲間や上司への相談や会議が発生します。近年の平均的な日本人は、周りが言うことに合わせて本当は嫌だと感じている提案や方法を受け入れ、やがてそのストレスで感情が爆発することになるでしょう。しかし、これは悲惨なことです。いやいや従った結果、感情的に爆発して不適切な言動で周囲の信頼を損ない、その人の意見が会社で軽んじられるようになるという悪循環が発生するからです。

悪循環を避けるためには、たとえ自分の希望通りにはいかないとしても、周囲の人と納得できる合意を形成する技術、すなわち、議論の技術を習得する必要があります。

「議論の技術=ディベートの技術」と考える人もいるかもしれませんが、ディベートと実践的な現場の議論には、大きく異なる点があります。ディベートは「議論ゲーム」であり目的は「技術的に議論に勝つこと」である一方、現場の議論は勝敗を決めるものではなく「会社やプロジェクトの目標達成に必要な決定を行うこと」が目的だという点です。さまざまな意見を出し合い、「どの案がいいか」というより「最終的にどういう案をつくるか」が会議の到達点なのです。

そして、議論の中で「ああでもない、こうでもない」と皆で考える際に発生するのが批判です。仕事における批判とは、ある提案や方法に関わる論理的整合性、メリット・デメリット、実現可能性、根拠となるデータの吟味をすること。多角的視点と提案のための批判です。

批判する側の視点:その人の価値は全て仕事で決まるわけではない

なるべく感情的反応を抑えて論理的に議論するには、批判する側も批判される側も共有しておかなければならない前提があります。

まず批判する側では、

・相手の仕事や提案に対する批判において、相手の人格や人生を否定しない
・批判の目的は、プロジェクトの成功や問題解決のための具体的アイデアや方法論を導くことである
・あなたの経験や専門性からの見解は全体から見て一部の視点である
・「俺の勘がそう言っている」「俺はこれで成功した」は論理的根拠ではない

という4点が重要。特に自分の経験を元に批判を行う場合は、どのような特徴や方法が何に対して有効だったのかを分析して提示する必要があることを忘れないようにしましょう。

批判される側の視点:否定的フィードバックを受け止める方法

批判する側が適切な批判を行っても、それを感情的に受け取ってしまえば議論が成立しなくなります。社会科学者のジョゼフ・グレニーは、フィードバックが受け入れられる要因は伝え方ではなく受ける側の姿勢であると指摘しました。

批判される側には、次のような視点や態度が求められます。

・あなたには複数の側面がある。仕事のフィードバックは、あなたの人格や人生の否定ではない
・批判を受けて感情が暴走しそうになったら、自分の感情を分析することで冷静さを取り戻す
・批判を受けたら、反発や迎合ではなく、相手の批判の妥当性と有益な点を検討する
・議論が進まなくなったら、「少し考えてみます」と言って一度議論を抜けて時間をおく

批判はする側・される側で前提の共有を

批判を受けてショックを受けたり落ち込んだりすることは誰しもあるもの。そして、批判する側とされる側は議論の中で頻繁に入れ替わります。だからこそ、双方が「批判は人格の否定ではない」ことを意識しなければなりません。

議論が苦手だと感じている人も、批判の前提を共有していれば議論の場にふさわしいメンバーです。建設的な議論に求められる批判とは、口先で相手を打ち負かすことではなく、提案を論理的に吟味しフィードバックすることなのです。

【参考】

・砂流恵介「「日本人は感情のコントロールができなくなった」 ディグラム診断が突きつける現実」、Forbes JAPAN、2019年2月22日、https://forbesjapan.com/articles/detail/25595
・ティモシー・オブライエン「あなたの価値は仕事への評価で決まるわけではない」、Harvard Business Review、2019年7月4日、https://www.dhbr.net/articles/-/6004
・ジョセフ・グレニー「批判的なフィードバックあら立ち直る方法」、Harvard Business Review、2019年7月3日、https://www.dhbr.net/articles/-/5988

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