自らの経験から「保育園隣接型オフィス」開業。仕事と子育てを両立し夢を叶えていくためには?〈小村佳子〉

インタビュー

子育てをしながら仕事をするという難しさを痛感したという小村佳子さん。そこで、ママが働くそばで子どもを預けて安心して働ける場所「子育てママの働くオフィス【ピーカブー】」を創業。その中で感じた事や仕事へのスタンス、子育てと仕事を両立していく事について紐解きます。

働きたいママのための場所「子育てママの働くオフィス【ピーカブー】」を創業

―起業のきっかけは?
創業の想い・エピソードを教えてください

創業しようと思ったのは、長男が生後5か月のときに職場復帰をして、それから1~2カ月経った夜中の授乳中のことです。

当時私は広告媒体を扱う会社で、チームリーダーをしながら営業をしていました。中耳炎になりやすかった長男は保育園に1週間まともに通えた記憶はなく、クライアントとのアポイントを調整して看病したり、旦那さん、義母、神戸に住む母に頼んだりと家族総出で何とか仕事をさせてもらっている状況でした。

原稿を作る仕事とクライアントへの営業を同時進行で進めなければならい業務だったため、メンバーからの質問や相談にも対応してあげたいという思いで夜も対応し、さらに夜間授乳もあったりで、ボロボロ状態でした。

そんな中ふと「世の中のお母さんたちってどうやって働いているんだろう?」と思い、その疑問を友達へ問いかけると「働いてない人がほとんどよ!」と言われたことで、働くことが当たり前だと思っていた私には衝撃が走りました。

私自身、意外と思われるかもしれませんが、専業主婦の経験もあります。
実際、専業主婦をしていた1年間は自分の中の黒歴史と感じるほど、自己肯定感のない日々だったと思います。だからこそ、働きたいのに働けないような想いをしている人が沢山いるという現実からはとても目を背けられるものではありませんでした。

じゃあ、保育園が横にあるオフィスがあって、子育てママばかり働く職場があれば働ける人も増えるかもしれない!
それが「子育てママの働くオフィス【ピーカブー】」の原点です。

「保育園隣接型オフィス」ならではの気付きや悩み

―「保育園隣接型オフィス」の取り組みについて
「保育園隣接型オフィス」の取り組みによる気付き、改善点、問題点など

今まで多くのチームで働くことを経験してきましたが、管理者の多くが費やす時間は部下のモチベーション管理だと思っていました。

ここでは、子育てが理由で働きたいけど働けなかった方がようやく働くことができているので、モチベーション管理は必要ありません。
オフィスでの会話がシンプルにコアな部分の会話のみなのは、私にとってとても居心地のいい空間ですね。

問題をあげるとすると、とても優秀で会社からすると責任ある立場を任せたい方でも子育てが理由になり、なかなか快諾してもらえないことでしょうか(苦笑)
うちの会社はほとんどの方がパートさんなので、責任ある立場をパートさん担っていることもザラにあります。

会社からすると「もっとお給料あげてあげたい!」でもそんな願いは叶わず、“扶養内”という選択をする方が圧倒的に多いことでしょうか。
もしかしたら他の経営者の方には羨ましがられることかもしれませんが、私からすると悩みです。
あと、少子化と言われるこのご時世に産休に入る方が毎月2~3名いることも悩みですかね。

正確に数えたことはありませんが、事業が始まってからとても沢山の子どもが産まれています。これもきっと今の日本社会情勢を考えると幸せな悩みですね(笑)

仕事と子育ての両立をしながら夢を叶えていくには?

―仕事と子育ての両立していく上で大切にしていることは?
経営者・母としての仕事のスタンスについて教えてください

明確に決めていることは1つです。

それは、「家族以上に大切なものはない」ということ。

私のように多くの従業員を抱えていると、働くワーママは家庭を顧みずに働いていることを想像される方も多いと思いますが、私自身3歳の長男、11カ月の次男(2018年7月時点)を育てており、家族が大好きなので、このスタンスを公言しています。

実際は週6日働いていたり、朝9時~19時ごろまで働いているので圧倒的に他のお母さんよりも子どもと一緒にいる時間が少ないことは事実です。

でも、出張は日帰りで行くこと、平日家に帰った後は、子どもが寝るまでは仕事はせずに子ども主体で過ごすこと、日曜日の休みは子ども中心で家族で過ごすこと、たまに取る連休や旅行に行くときなど、仕事以外の時間は子ども中心とルールを決めています。

旦那さんとの連携も不可欠で、お互い経営者なので忙しいのは同じだと、子どものこと、家庭のことも完全に折半しているのも仕事を円滑にするための秘訣でしょうか。
子どもへの愛情は時間じゃなくて深さだと信じているので、他の子と比べて愛情が不足しているかな?など悩んだことは1度もありません。そもそも私にはこれ以上の子育てはできないので後悔しようもありませんが…。(苦笑)

仕事をすることで、自分自身の成長をし続けたいと思っているので、働くことは自分の人生で絶対に必要だと言い切れます。その働く時間は子どもや家族から“与えてもらっている時間”だと思っています。だからこそ中途半端なことはできませんね。
私は経営者になりたいと考えて経営者になったわけではありませんが、今この立場で仕事させてもらっているからこそ多くの学びを得られていることに心から感謝しています。

「仕事を通じて成長し続けたい」と思える仲間のいる会社であり続けるために

―今後のビジョンについて教えてください

広島のこの地で会社を成長させることが一番のミッションだと思い挑戦しています。
沢山の経営者の方や自治体の方に「全国展開しないの?」や「○○にも拠点増やしませんか?」など仰っていただきましたが広島にこだわり、全てお断りしてきました。理由は、今いる従業員を大切にしたいから。より良い条件や待遇にしてあげたいという想いがあるので「狭く深く」というやり方を会社として選びました。

大手で働いていた時は転勤=出世の階段を上ることでしたが、私は家族といることを選んだけど、自分のキャリアを閉ざさない贅沢な選択をしたので、一緒に働くみんなにも同じように家族を大事にしながら仕事面でチャンスを与えてあげたいと思っています。

単に働いてお金を稼ぐことが目的になっている方は、おのずと履歴書に表れています。peekabooで一緒に働く人は「仕事を通じて成長し続けたい」と思って働いてくれている人ばかりだと信じているので、そのみんなが満足できる会社でありたいと思っています。そのためには会社も私自身も成長し続けないといけませんね。

どの事業部でも沢山やりたいことがあり、取締役たちにいきなり「○○しようと思う!」と提案し、大変な想いをさせたりもしますが、「それいいですね!」と2つ返事してくれる仲間が周りに居てくれるのも私の大きな強みです。
そんな大変な時期も一緒に乗り越えてくれる大切な仲間をずっと大切にできる会社でありたいと思っています。

小村佳子

株式会社peekaboo代表取締役 2児の母。兵庫県芦屋市出身。広島市中区在住。 アパレル販売員として5年勤める。 その後、株式会社リクルートライフスタイルへ入社。 Hotpepper美容ページの提案・企画営業として、広島2年→京都1年→神戸1年→広島1年と異動する。 その間、通期ベスト5を3度受賞。 リーダーとしては着任後、すべての組織で垂直立ち上げを行い組織賞を受賞。 株式会社クリエイティブラボへ入社後、2016年6月peekabooの発起人として代表に就任。 現在2児の母として、育児と仕事に奔走する日々を過ごす。

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