日本株のトレンドは海外投資家が左右している

中原さんの経済の視点/賢者の投資
「日経平均株価は2019年8月の安値20,110円から、なぜ11月には高値2万3,608円を付けるまで上昇することができたのでしょうか?」
この質問に対する答えとしては、「米中貿易交渉がまとまることで、世界景気や企業業績が回復するという期待が高まっている」といった解釈がよく聞かれます。

確かに、この解釈が間違っているとは言えません。

しかしながら、もっと厳密な答え方をしようとすれば、「海外投資家(外国人投資家)が日本株を買い越すようになったから」と言ったほうが良いでしょう。

海外投資家とは?日本株に対する影響力は?

海外投資家とは、米欧の投資信託や年金基金、中東のオイルマネーなどのことを指しています。海外投資家が少し本腰を入れて日本株を買い始めれば、日本株を大きく上昇させるのは簡単なことなのです。

日本株の売買代金シェアは海外投資家が6割~7割を占めているため、日本株のトレンドは海外投資家が左右しているといっても過言ではありません。

海外投資家の2019年の売買と株価トレンドの相関性

上の表「投資部門別売買代金差額」を見てください。この表は、3市場(東京・大阪・名古屋)における投資主体別(個人・法人・海外投資家など)の買い越し額・売り越し額を月別に表しています。

この表からわかることは、簡単にまとまると次のようになります。
・海外投資家は2019年5月から9月まで5か月連続で売り越し、売り越し額の累計は2兆1,993億円にもなった。その一方で、この間に法人が2兆6,840億円を買い越したが、それは企業の自社株買いが多かったためだ。
・海外投資家は2019年10月から11月の2か月間で買い越しに転じ(正確には9月の中旬から買い越しに転じていた)、買い越し額の累計は2兆1,875億円にもなった。その一方で、法人は8,686億円、個人は1兆4,999億円、それぞれ売り越した。

次に下の日経平均株価の2019年の週足チャートを見てみると、次のようなトレンドがわかります。

・2019年1月から9月までボックス圏で推移していた。
・8月の上旬に底(安値20,110円)を打ち、9月から10月にかけて上昇に転じ、11月から12月(10日時点)は高値圏で推移している(足元の高値は11月下旬の23,608円)。

要するに、海外投資家が買い越し基調になれば、上昇相場になるという経験則が見事に重なっていると言えます。

投資家主体別売買代金差額を参考にする

以上のことから、「日本株は海外投資家が買えば上がる」ことが証明できると思います。海外投資家が買い越し基調になれば、日本株は上昇トレンドになるというのは、2000年代初めから顕著になり、今でも続いている傾向です。

投資主体別の売買代金差額については、東証が前の週の売買代金の買い越し額と売り越し額の集計結果を毎週木曜日に公表しています。また、月間の売買代金差額についても、東証が毎月最初の木曜日に前月分を公表しています。

週間・月間ともに投資主体別売買代金差額は、海外投資家の動向を知るうえでたいへん役立ちます。みなさんも参考になさってください。

最後に、拙書『定年消滅時代をどう生きるか』が12月11日に上梓されました。ぜひご覧いただければ幸いです。

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中原圭介

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『ビジネスで使える 経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)、『日本の国難』『お金の神様』(講談社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点で日本の将来を考える』を好評連載中。

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